株式会社NTTドコモでは、これまで、約200~300km/hでテストコースを走行する自動車を用いた5G通信実験を段階的に行ってきた。これらの実験は高速鉄道を模擬した環境での基本実験で、移動端末の双方が持つ機能(ビームフォーミング機能、ビーム追従機能)を用いて、5G基地局からの28GHz帯の電波の放射方向を自動車に搭載した5G移動端末に向けて維持しながら、高速走行する自動車と基地局の間で5G通信が可能であることを実証した。
しかし、電波を遮へいする物がない自動車のテストコースとは異なり、実際の高速鉄道の走行環境は、沿線の電柱などによって頻繁に電波が遮へいされる可能性があり、さらに自動車のフロントガラスや在来線車両の窓に比べ小さい新幹線車両の窓に電波を通過させるなど、直進性が高く遮へい物などで弱まりやすい28GHz帯の電波の使用は通信速度の低下や不安定につながりやすい環境といえる。
これらの技術的検証のため、NTTドコモと東海旅客鉄道株式会社は、東海道新幹線車内で、5Gによる無線通信実験を8月24日~9月7日の期間で実施した。
同実験では、静岡県富士市の東海道新幹線沿線に28GHz帯の実験用5G基地局3局を400~500mの間隔で仮設置した5G通信実験エリアを構築し、東海道新幹線の上り方向または下り方向を試験走行するN700S確認試験車内の座席に28GHz帯の実験用5G移動端末を搭載し、以下の実験を行った。
- 5G無線データ伝送実験
- 地上基地局、移動端末の双方が持つ機能(ビームフォーミング機能、ビーム追従機能)を駆使した超高速データ伝送
- 移動端末が接続する地上基地局(3箇所)を順次切り替える連続ハンドオーバー
- 5G無線映像伝送実験
- 超高精細の8K映像コンテンツを、地上基地局から移動端末へ5Gを介して高速ダウンロード配信
- N700S確認試験車内に設置した4Kカメラにより撮影中の車窓映像を、移動端末から地上基地局へ5Gを介してライブ中継
同実験では、全ての項目で成功し、最大データ伝送速度は1.0Gbps以上となった。
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