ローカル5Gは、高速かつ低遅延で多数同時接続が可能な5Gを、局所的な範囲で利用する形態の無線ネットワークで、企業や自治体が、自らのサービス提供や業務遂行のために構築することが可能だ。
現在、総務省が制度整備を進めており、年内にもローカル5G無線局免許の申請受付が開始される予定である。免許を取得した企業や自治体は、所有する工場やビルなどの建物内や敷地内において、割り当てられた周波数を専有して通信することができるようになり、かつ未登録の機器が接続できないネットワークを構築できることから、セキュアな無線通信環境を利用できるようになる。
そのような中、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は、多段構成のエッジコンピューティングを組み合わせたローカル5Gの実証実験環境を構築し、2020年2月より検証を開始する。
エッジコンピューティングとは、端末から近い位置のサーバーでデータの処理を行うことにより遅延の抑制や可用性の向上などのメリットを得る技術だ。エッジコンピューティングとローカル5Gは、遅延の低さや可用性の高さなどの共通する特長を備えており、組み合わせることによって大きなメリットが得られる。
NTT Comは昨年より、ネットワーク上でトラフィックが集中する箇所(ネットワークエッジ(※1)、CPE(※2)など)に多段でコンピュートリソースを配置し、通信内容に応じた適切な位置で、トラフィック制御やセキュリティなどの機能を提供するプラットフォーム「VxF基盤(※3)」を開発してきた。同実験では、このプラットフォームをローカル5Gのモバイル環境における多段エッジコンピューティングに応用する。
エッジコンピューティングはエッジの位置によって得られる効果が異なる。ネットワークエッジで利用する場合は、複数拠点からのデータ収集が可能になると同時に、通信量および通信コストの削減やデータ漏洩リスクの軽減が見込まれる。また、CPEで利用する場合は、遅延の極小化とネットワーク障害の影響を受けないことによる可用性の確保などの効果が期待できる。
こうした目的に応じてエッジの位置を選択したり組み合わせたりすることが、多段エッジコンピューティングにより実現できる。
今回の実験では、ラグビートップリーグに所属するNTT Com「シャイニングアークス」のホームグラウンドである「アークス浦安パーク」(千葉県浦安市)に実験環境を構築し、検証を開始する。検証では、ローカル5Gで用いる電波の伝搬・通信特性や、システムの機能検証を行う。また、スポーツ分野や「Smart Factory(※4)」における利用など、さまざまな活用事例を想定しながら、VxF基盤の機能拡充に求められる要件を抽出していく。
さらに2020年度以降は、NTT Comが提供する「Smart Data Platform(※5)」や「Flexible InterConnect(※6)」と組み合わせた実証実験を複数拠点で実施する予定だ。
なお、同実験環境は、ローカル5Gと多段エッジコンピューティングのショーケースとしての利用や、他の企業と連携したオープンイノベーションの場としての活用も行っていく。
※1 建物や敷地などの顧客拠点からネットワーク経由でクラウドなどに接続するポイントで、トラフィックを集約して処理するために設置される機器。
※2 主に建物内や敷地内などの顧客拠点内において、トラフィックを集約して処理するために設置される機器。
※3 トラフィック制御やセキュリティなどの高付加価値機能を、迅速に展開、組み合わせて提供するためのプラットフォーム。
※4 デジタルトランスフォーメーションを通じて社会的課題を解決する「Smart World」のコンセプトにもとづき、製造業など、工場を有する顧客のDXを推進する取り組み。
※5 NTT Comが提供する、データ利活用に必要な機能をワンストップで利用可能なプラットフォーム。
※6 顧客拠点と、顧客が利用するさまざまなクラウドサービス、データセンターなどをオンデマンドでセキュアに接続可能なインターコネクトサービス。
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