昨今、野生鳥獣による農作物被害が全国で問題となっており、その被害額は年間約164億円にも上っている。その要因の一つとして、シカやイノシシの生息固体数の増加があり、政府では2023年度までにこれらの個体数を半減するという目標を掲げている。
長野県伊那市においても、シカやイノシシなどによる農作物の被害が問題となっており、猟友会が捕獲を担っているものの、狩猟者の高齢化が進んでいる上、鳥獣の数に対して狩猟者が少ないため、設置した罠の見回り業務が負担になっている。
そこで、ソフトバンク株式会社と狩猟関連機器やサービスの企画・開発・販売を行う株式会社huntechは、IoT機器向けのLTE通信規格であるNB-IoTを活用した鳥獣罠(わな)センサー「スマートトラップ NB-IoT」を開発し、国立大学法人信州大学および伊那市有線放送農業協同組合などと共に、伊那市において鳥獣被害の軽減に向けた実証事業を2019年10月~2020年3月まで実施することを発表した。
スマートトラップ NB-IoTは、くくり罠やはこ罠などの既存の罠に設置することで、鳥獣を捕獲した際にリアルタイムで管理者に通知することができる機器である。機器には、磁気センサーやGPS機能、ソフトバンクのNB-IoTに対応した通信モジュールなどを搭載しており、鳥獣が罠にかかったことを磁気センサーが検知すると、事前に登録した管理者のメールアドレスにメールが届く仕組みになっている。
また、罠の設置場所や日時(設置・作動・捕獲完了時)の情報が管理サーバーに自動で記録されるので、リアルタイムで罠の状態を確認できる他、ウェブの管理画面から捕獲した鳥獣の種類や性別、見回り実施者などの詳細な情報を入力することで、「いつ・どこで・誰が・何を」などの捕獲活動ログをいつでも閲覧することができる。
さらに、蓄積された情報を鳥獣の行動解析や、トレーサビリティーによるジビエの流通管理(huntechのトレーサビリティーシステム「ジビエクラウド」と連携)、報告書の電子化や自動作成などに利用することが可能だ。これにより、罠の見回り業務の省力化や鳥獣の捕獲精度の向上を図ることで、伊那市における鳥獣被害の軽減に貢献する。
今回の実証事業の実施内容は以下の通り。
- スマートトラップ NB-IoTの機能の検証
- 罠の状態の確認機能
- 罠の設置場所情報の取得・記録機能
- 外部環境情報(温度や天候など)の取得・記録機能
- センサー検知時の通知機能
- 捕獲活動ログ機能
- 防水性など耐環境性の検証
- 電池の連続動作期間の検証




今後、ソフトバンクとhuntechは、実証事業の結果を踏まえてスマートトラップ NB-IoTの量産化に向けた改良を行い、2020年春をめどにhuntechの新製品として発売するとともに、他の自治体への展開も進めていく予定だ。
なお、この実証事業は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)から受託した「信州伊那谷におけるLPWA(LoRaWAN等)鳥獣罠センサーの高度活用」に関する実証型研究開発の一環として行ったものである。
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