凸版印刷とNICT、耐量子計算機暗号に対応したプライベート認証局を構築、有効性を確認

インターネットを介したサービスでは、信頼された第三者機関である認証局によって、安全にデータ通信を行うことができている。

認証局とは、電子証明書を発行したり、電子証明書の有効期限を確認・検証したりする安全性が担保された独立機関だ。また認証局は、電子署名の正当性を公に対して示すパブリック認証局と、社内などの閉じられた領域内に示すプライベート認証局の二つに分類でき、どちらもインターネット上で通信相手を信頼するために利用者から求められる機能は同じだ。

現在、認証局は、情報の暗号化と復号において、異なる2つのペアとなる鍵を用いる暗号方式である「公開鍵暗号方式」に基づいて、電子署名や認証をすることで、通信相手のなりすましやデータの改ざんなどのリスクを防ぎ、安全なデータ通信を可能としている。

しかし、2030年頃に実用化が期待されている量子コンピュータにより、現在の公開鍵暗号は破られる恐れがあり、量子コンピュータを用いても破ることが困難とされる耐量子計算機暗号(Post-Quantum Cryptography:以下、PQC)を用いたセキュリティの強化が課題となっている。

また、PQCを用いてデータ通信を行ったとしても、通信相手が正しく保証されていなければ、安全なデータ通信は行えない。そのため、今後はPQCの実用化に向けて、認証局の早期実現が求められている。

そうした中、凸版印刷株式会社と国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)は、NICTが運用するテストベッド「保健医療用の長期セキュアデータ保管・交換システムH-LINCOS(Healthcare Long-Term Integrity and Confidentiality Protection System)」において、PQC対応のプライベート認証局を構築し、電子署名・電子証明書発行機能の追加と凸版印刷とNICTが開発した「PQC CARD」との連携を通した改ざん検知機能を実装。その有効性の検証に成功したことを発表した。

これにより、H-LINCOSでのより実際の運用場面に即した安全なICカード認証と電子カルテデータへのアクセス制御が可能となった。

凸版印刷とNICTは今後、プライベート認証局をはじめ関連する技術を活用し、2025年に「量子セキュアクラウド技術」の限定的な実用化を、2030年に本格的な提供を開始する予定だ。

また、この技術を活用し、高秘匿情報の流通、保管、利活用できる量子セキュアクラウド技術の社会実装および、サイバーセキュリティを担保する基盤技術の構築を目指すとしている。

なお、研究の一部は、内閣府SIPプログラム「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」(研究推進法人:国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構)によって実施された。

PQC対応プライベート認証局の特長

PQC電子証明書の発行

H-LINCOSにおいて、「PQC CARD」を用いた電子カルテデータへのアクセス制御をする際、「PQC CARD」に格納された電子証明書を検証することで、正しい権限を持った本人であるかを確認している。今回、その電子証明書を、PQC対応のプライベート認証局が、CRYSTALS-Dilithium(クリスタルダイリチアム)と呼ばれるPQCの電子署名アルゴリズムを用いて発行するという機能を構築した。

H-LINCOSのアップデート

PQC対応のプライベート認証局で電子証明書を発行し、その電子証明書を「PQC CARD」に格納するという一連の機能を構築することで、H-LINCOSをより実際の運用場面に即したテストベッドへとアップデートした。また、この「PQC CARD」を用いて、H-LINCOSにおけるICカード認証と電子カルテデータへのアクセス制御を検証し、問題なく動作することが確認された。

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