国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)とシャープ株式会社は、映像データ処理用AIデバイス向けの「高位合成ツール」を開発し、オープンソースソフトウェア(OSS)として公開したと発表した。
このツールは、エッジコンピューティングにおけるAI映像データ処理の普及拡大を目的に、映像データ処理用AIアルゴリズムが記述されたPythonコードから、集積回路であるFPGAなど、ハードウェアの回路図となるRTLコードを、短時間で自動生成するソフトウェアだ。
入力ファイルであるPythonコードに関して、AI開発において利用頻度の高いPython向け機械学習ライブラリ「PyTorch」や、機械学習のフォーマット「ONNX」に対応できるようフレームワークを拡張し、多様なAI映像処理アルゴリズムからのRTLコード生成が可能だ。
このRTLコードには、今回開発された回路技術を多数組み込まれており、AI映像処理回路の消費電力削減を実現する。
生成されたRTLコードをFPGAに実装することで、AI専用処理デバイスとして利用可能になるほか、設計回路ツールとして、映像データ処理向けAI専用LSIの開発にも利用することができる。
これにより、画像認識や映像内の物体検出に加え、超解像などAI映像処理を利用した端末やアプリケーション開発での利用が期待されている。

また、複数の演算処理を一つの処理に統合するレイヤ統合機能も搭載し、演算処理の効率化や高速化を実現する。
さらに、ハードウェア開発の効率化のため、代表的なプログラミング言語の一つであるC言語で、RTLコードの機能検証が行えるCモデル生成機能も搭載している。
加えて、専用デバイスでAI処理を行う際に必要となる学習済みパラメータを得るための、量子化対応したAIモデルもPythonコードで生成することが可能だ。
これにより、専門技術者でなくても映像データ処理用AIデバイスの設計が可能となり、開発期間を短縮する。
なお、このツールで生成されたRTLコードを実装したFPGAで実証したところ、GPUを搭載したエッジ端末に比べ、40倍以上の高い電力効率が得られることが確認された。

また、生成期間も、専門技術者による開発では6週間かかるのに対し、同ツールでは約5分で完了したとのことだ。
今後NEDOは、エッジ領域で活用可能となる、高度なデータ処理を高速かつ効率的に実現するAI半導体およびシステムの開発を進めると共に、性能を最大限に発揮することができるチップ設計を短期間に実現する設計技術の開発を実施する計画だ。
また、シャープは、今回一般公開した「高位合成ツール」の認知拡大に向けた情報発信を行うとしている。
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