スズキ、作業分析AI「Ollo Factory」を国内工場に導入し生産技術継承と品質統一を推進

自動車製造の現場において、熟練技術者が持つ「暗黙知」の継承と、作業者の経験差による品質のばらつきは、長年の課題となっている。

特に、グローバル展開を進める製造業にとって、国内のマザー工場で確立された標準作業をいかに正確に海外拠点へ展開するかは、競争力を左右する重要な要素である。

こうした課題に対し、スズキ株式会社は2025年12月22日、東京大学松尾研究室発のスタートアップである株式会社Olloが開発した作業分析AIソフトウェア「Ollo Factory」を国内工場に正式導入したと発表した。

今回の導入は、同社が推進する「スズキスマートファクトリー構想」の一環であり、現場のデジタル化を通じて生産性と品質管理の高度化を目指すものだ。具体的には、2025年7月に相良工場の組み立てラインへ、同年12月にはエンジン工場へと順次導入が進められている。

今回採用された「Ollo Factory」は、スマートフォンやタブレットで撮影した作業動画をAIが解析し、作業工程を自動で要素分解するシステムだ。

これにより、手順書の自動作成やムダの特定や、最適な人員配置の検討に活用することができる。

特筆すべきは、ウェアラブルカメラの映像解析に対応している点だ。自動車の組立工程などでは、固定カメラでは死角になりやすい箇所が存在するが、作業者視点の映像を用いることで詳細な動作分析を実現した。

AIが熟練者と新人の動作を比較し、微細な「つまづきポイント」や動作の差を可視化することで、技術継承と教育効率の向上を支援する。

また、品質保証の観点からは「リアルタイム異常検知」機能が重要な役割を果たす。これは、AIが作業プロセスを常時監視し、ネジの締め忘れや手順の抜けといったミスが発生した瞬間にアラートを発報する仕組みである。作業ミスをその場で検知・是正することで、後工程への不良品流出を未然に防ぐことが期待できる。

スズキにとって日本国内の工場は、技術とノウハウをグループ全体に示す「マザー生産拠点」としての役割を担っている。同社は今後、国内工場での稼働実績を基に、海外拠点への展開も視野に入れているとしており、グローバル規模での品質統一と生産性レベルの底上げを図る方針だ。

IoTNEWS編集部

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