日立、最適経路の構築を実現するモビリティ管制基盤「Digital Road」を開発

輸送インフラでは、モノや人の移動手段が多様化する中で安全かつ効率的な移動経路の提供が求められている。しかし、ドローンなどのエアモビリティは、天候や電波状況の変化に加え、周囲の環境変化から影響を受けやすい。

これらの環境因子の急激な変化を予測できないため、目視による現地の安全確認が必要となっていた。

こうした中、株式会社日立製作所（以下、日立）は、輸送インフラの安全性と運行効率を高めるためのモビリティ管制基盤「Digital Road」を開発した。

「Digital Road」は、デジタルツイン技術を活用し、エアモビリティの離着陸の自動化に注力する管制基盤だ。離着陸場周辺の環境因子をリアルタイムに捉え、その後の時間変化を予測してデジタル空間内に離着陸可能な最適航路を構築する。

具体的には、地上に設置された複数のセンサおよび他システムから得られる環境因子情報を状態モデルによる機械学習と、学習したモデルを用いた最尤推定手法を組み合わせることにより統合する。

環境因子の統合では、未観測エリアを含めた環境データを生成するため、リアルに得られた各センサおよび他システムからの情報を用いて補完しながら、運行経路上のモビリティの位置・天候・電波接続性といった運用に重要な環境因子の変化を計算し、リアルタイムにデータを更新する。

上述で得られた環境因子と3次元都市モデルにより、運行経路全体の障害物・天候・電波状態をデジタル空間内にマッピングし、時刻情報を組み合わせた4次元情報として統合することで、時間変化を予測する。

このデジタル空間を、DADCが公開した4次元時空間情報基盤ガイドラインに基づく、等方ボクセルで区切ることで広域にわたる環境因子の変化を高効率かつ高頻度に更新することを可能にした。

そして、利用頻度の高い経路上に、運行困難な場所やその時刻を地点情報として集約するウェイポイントを複数設け、それらをつなぐグラフネットワークを構築する。

グラフネットワーク上でウェイポイント間のリスクを高速に算出することで、そのリスクの総和が最小となる安全経路を高速に絞り出すことができる。

また、安全領域を確保する占有領域構築技術 運行経路に他の機体の進入を許さない「占有領域」を機体ごとに設けている。

この占有領域は、環境変化に応じて各機体の性能や搭載物が受ける風の影響を考慮した安全運行ができる専用の移動空域だ。

各占有領域を組み合わせることで、各機体に対して効率的な運行プロファイルの提供が可能だ。この運行プロファイルを自動運行や遠隔操縦システムへ提供することでモビリティの安全運用が可能となる。

これにより、離着陸中の機体に対して、各機体専用の「占有領域」や遠隔操作に必要な運行プロファイルを提供し、離着陸経路の安全性と稼働率の向上を実現する。

この技術を活用することで、自動または遠隔操作でのモビリティ運用時に、経路環境の変化をリアルタイムで把握し、予測することが可能となる。

なお、この技術の効果は、屋内の離着陸実験施設で市販のドローンを使用して検証した。その結果、環境変化をリアルタイムで把握し予測することで、最短2分ごとに1機体の間隔でスムーズに自動離着陸が可能となった。

日立は今後、この技術をドローンなどのエアモビリティの利便性向上や、安全な離着陸管制システムへの活用を目指すとしている。

また、「Digital Road」をドローンを始めとするさまざまな自動化したモビリティへ適用するため、国立研究開発法人科学技術振興機構の経済安全保障重要技術育成プログラムにおける研究開発課題に参画し、大規模なエアモビリティの運用に不可欠な群制御に必要な技術を構築する予定だ。

なお、2024年3月12日から14日に開催された「SAE AeroTech 2024」で、成果の一部が発表された。さらに、2024年3月17日から20日に開催される「計測自動制御学会 第11回制御部門マルチシンポジウム」でも発表されるのだという。

IoTNEWS編集部

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