自動運転の技術と法規制への取り組み -MOBILITY TRANSFORMATIONレポート2

野辺氏の自動運転技術に関する話をうけて、佐藤氏はより直近で議論が交わされている法的論点について解説した。

自動運転を実現するにあたっては、大きく3つ検討しなければならないと言われている。

自動運転にむけて検討すべき法的論点とは

  • 1点目、自動運転においてどのようにして安全確保をしていくか、自動運転車の満たすべき安全性とは何か
  • 2点目、交通ルールの在り方について。自動運転が現実となった際、誰がどのようにして安全を確保し、そして運転者の義務というのがどう変わっていくのか
  • 3点目、免許制度だ。そもそも免許制度が要らなくなるのではないか、あとタクシー、バスだと二種免許というのがありますけど、そういったカテゴリー自体も不要になるんじゃないか

特に、3点目は責任関係という部分で、ここで指す責任とは「民事責任」、「刑事責任」のことを指す。運転者がいなくなる、また義務の内容が変わっていく中で、どういった責任を負っていくのかというのが大きなポイントになるが、具体的に3つの内容を佐藤氏は説明した。

自動運転における安全性

まず1点目の安全確保という点、日本では国交省が自動車の安全等を所管しており、そのガイドラインを2018年に公表している。その中では、具体的な安全に関する細かい基準はまだ出来ていない。

しかし、一定のODD(Operational Design Domain:運行設計領域)と呼ばれる自動運転車が安全に運行できるとされる運行設計領域の中においては、「自動運転システムが引き起こす人身事故であって合意的に予見される防止可能な事故が生じないこと、そういった安全性を満たす自動運転車を作っていく」という指針を出したのが昨年だ。

その後、道路運送車両法という自動車の安全に関わる法律を改正し、これをもって自動運転車を日本に導入できるという状態となった。

今後の課題は、現在の自動運転の技術はレベル3、4という状態でかつ、基準の細則も決まっていない。今後細則を決めていくうえで、誰がどのようにして、安全性を検証出来ているかなどといった点が課題になっていくのだろうと考えられている。

自動運転における交通ルール

2点目が交通ルールだ。道交法が先般改正されレベル3までの対応済みとなっている。このレベル3というのは、ドライバーは車中で車から呼ばれた時は対応する、ただ呼ばれるまでは車の中で映画などを見ていてもいいという状態だ。そういった状態で運転者における義務が法改正で明示された。

それは、引き続き自動運転車を使って中に乗っている人というのも、道交法上の運転であるとみなされているため、乗っている人=ドライバーであり、道交法上の全ての条件を満たすため、理論上は周りを見ながら安全に運転しなければならないという義務もその人には残った状態になっているということだ。

ではどうやって自動運転を認めるのか、というのがこの法改正のポイントだが、ODDでは一定の条件下では画面の注視といった例外的、限定的な場合において、自動運転の機能の使用可能が示されたのがこの道交法の改正だ。

ただ、今後の課題として、例えば道交法違反が起きてしまった場合、もしくは自動運転中にスピード違反が起きた場合。そういった時に、誰がどうペナルティを負うかという部分は、過失の概念や、注意義務違反になるのだが、あくまで事案毎に考えていくというところしか示されていない。

場合によっては、中に座っているドライバーにも違反切符が切られるということも有り得る余地を残した改正になっている。このあたりがユーザーにとっても、メーカーにとっても、肝心な部分であるにもかかわらず、明示されていない。そのため、メーカーとしてはどこまで作り込めばユーザーの過失なしとなるのかあいまいな状態であるため、引き続き検討されるべきところだ。

現時点ではレベル3までの改正となるため、レベル4、5については継続して対応していく必要性があるというのがこの交通ルールのポイントだ。

運転免許についても、今回の改正では改正されなかった部分だ。将来、思い描いているような複数の自動運転車を使ってサービス、例えば新しいタクシー事業などを展開しようとしたときなど、運転免許は遠隔操作している人が持ち、全責任を負うのか?といった点などは明らかにできていない。

自動運転における責任関係

3点目、責任関係について。まず民事責任については、現行法の下では車の所有者が運行供用者責任という責任を負っている。

会場の皆さんも自賠責保険に入られていると思うが、その保険で発生者責任をカバーしているという法的建付けになっている。が、しかしこの所有者の責任というのは、引き続き自動運転の導入初期においては維持していくということは示されている。

次に、刑事責任についても同様だ。道交法の話と似ているが過失責任は維持していく、ということも示されている。

今後、例えば、所有者が民事責任を負い続けるのが正しいのか、所有者というのは車は持っているが、運転自体に積極的に関与するというのが薄くなっていく未来が見えてきている中で、所有者に責任を負わせ続けるのが妥当なのかという部分は詰めていく必要がある。

現行の法体系の下では、レンタカーを借りた人というのは、所有者と同じ運行供用者責任を負うとされているのだが、タクシーの乗客はあくまでも乗客のため、運行供用者責任は負わないと定められている。

野辺氏が先ほど触れた、未来を思い描いてもらえばと思うのだが、A地点からB地点まで行きたい時に、来たクルマがロボットタクシーか、それともレンタカーなのかという違いがあったとする。

その場合、レンタカーが来た際は、自分は責任を負うがタクシーだったら責任は負わないという違いが発生する。しかし、本当にこれが妥当なのかという指摘もある。そもそも所有者責任という考え方をどう維持していくのかも含め今後の議論ポイントだ。

また刑事責任も先ほどの道交法の話と同様に、ある程度ドライバーというのは運転のタスクから解放されて、そもそも過失の根拠となる注意義務が無くなるはずだが、ドライバーの責任はどうなっていくのか。また、メーカーや車を市場に投入した人たちが直ちに責任を負うのか?そしてその人たちの過失を問うのか?という点も、直ちに問うのは難しい。

過失を立証するのは非常に難しいため、刑事責任を誰も負わない世界がもしかしたら来てしまうかもしれない。そういった点については今後検討していく必要があると個人的には考えている。