ドイツに習う製造のパラダイムシフトへの対応 ーIoT World Conferenceレポート①

2019年9月17日〜18日IoT World Conferenceが都内にて開催された。

今回はロボット革命イニシアティブ協議会インダストリアルIoT推進統括 水上 潔氏による「IoT・AI・ロボット革命パラダイムシフトの行方とビジネス変革」と題した基調講演の内容を紹介する。

ロボット革命イニシアティブ協議会(以下 RRI)は、2015年2月10日に日本経済再生本部による「ロボット新戦略」に基づき民間主導で設立された組織的プラットフォームだ。

本公演では、RRIの活動の一環として情報交換をしているドイツとの比較を中心に、日本の課題について語られた。

人のスピードを超えて加速するパラダイムシフト

水上氏はまずこれまでの技術の歴史について「現在に至るまでも文化革命、科学革命、産業革命と、様々な革命が起きてきた。」と述べ、

「そこからコンピューターやインターネットという電子化が進み、現在のIoTやシェアエコノミーといった集合知や情報技術の革新というものは以前の革命とは別物である。なぜなら人がついていけるスピードを超え、指数関数的に技術が革新していくからだ。」と、現在起きている「変化」と従来の「変化」との質の違いについて語った。

そして、「これがパラダイムシフトであり、企業は従来の経営とアジャイルな新しい経営のバランスをとっていく必要がある」と述べた。

日本が得意とする品質改善、コスト管理、在庫削減といったことだけでは現在の変化に対しては事足りず、経営者自身が規模範囲の優位性以上のものを探していかなければならない時代だと啓蒙した。

そして企業だけでなく、国目線でこのパラダイムシフトに対応していくことがRRIの命題だという。

全体像を捉えるドイツの考え方

そこで参考にしたのがドイツのインダストリー4.0だと水上氏は言う。現在のパラダイムシフトに対応するためには製造現場を大きな枠組みで全体をとらえる必要があるのだと言う。

ドイツに習うパラダイムシフトへの対応 ーIoT World Conferenceレポート①
RAMI4.0: インダストリー4.0のリファレンスアーキテクチャに登場する立体図

この図はインダストリー4.0を解説したRAMI4.0(Reference Architecture Model Industrie 4.0)というものだ。設計から製造までのプロセス、工場フィールドのレイヤー、コミュニケーションなどのITレイヤーという3軸で表現されており、議論する際どこの部分の話題なのかについて、明示しながら進めるのに使われる。

ここで、日本でのこのリファレンスアーキテクチャにおいて「赤で囲っている部分だけが語られている」と水上氏は語る。

本来、製造のライフサイクルが大事なのだが、日本では「生産のフェーズだけ」しか語られていない現状だという。「製品設計、設備設計から変えていき、製品を顧客に流通させた後もどうサービスし、そしてフィードバックを得て、また設計に活かす」ということを考えなければならない一方で、その議論にまだ至っていない状況なのだという。

目指すは完全自動化

次にドイツが提唱し、ヨーロッパで実装段階に入り出している「管理シェル」について話された。

管理シェルとは、異なる環境差を吸収してデータ連携を実現するための仕組みだ。

設備や機械だけでなく、生産システムや計画、FA、ITといった様々な技術がこれまでは別々に管理されていたわけだが、これらを統一して管理してく必要がある。オープンな標準をつくり、異なる環境や異なる企業間であっても連携可能な状態をつくらないと、インダストリー4.0は実現されない。管理シェルはここを実現するための仕組みなのだ。

例えば、何かを作りたいと思った時、適切な産業機械を選択し、適切な材料を調達、適切な加工を加える必要があるわけだが、これをスムーズに実現しようと思うと、産業機械の処理能力の詳細なスペックや、材料に対する加工要件などを細かく規定しておく必要がある。

逆にこういった情報が生産工場などのどこかにまとめて置いてあれば、何かを作りたいという生産計画に基づく生産指示が出た時、適切な産業機械で適切な加工を行う組み合わせは自動的に決まる。人の稼働状態も管理シェルとして登録しておけば、誰がその加工をやるかということも自動的に決定することができるだろう。

このように、なるべく人を解さず様々な企業と新しい企画を立て、ものを作り、運用する、というプロセスを完全に自動化していくのだ。

現状、日本では、機械設備を繋ぐために機械設備のプロパティを整理する、という部分だけしか行われていないという。

ドイツに習うパラダイムシフトへの対応 ーIoT World Conferenceレポート①
管理シェルの図

もちろん完全自動化は容易ではないが、ヨーロッパではそういった構想を念頭に起きつつ、製造業が供給するあらゆる分野の製品をスマート化し、そのデータを様々な分野と連携させプラットフォームを作ろうとしているのだという。

また、ドイツでは学問として、これを実現するための論理体系化を始めており、どのように管理シェル同士を活用し、様々なものを連携、対話させるかということを体系だてて考えている。

世界で生き残っていくための戦略

さらにドイツでは大きく「スマートプロダクト」「スマートデータ」「スマートサービス」という三つのレイヤーを考えているという。それぞれスマートプロダクトからデータを取得し、データを流通させる、スマートデータ、それがサービスにつながっていくスマートサービス、という意味だ。そしてスマートプロダクトとスマートデータは全分野共通の概念を整理しようと試みている。

ドイツは世界の中で経済成長させるために、製造業をどのように発展させていくかを考えているのだ。

技術革新を産業として、企業として利用していくには、これまでのやり方ではできないという考えのもと議論を進めているという。

システム思考で日本独自の変革を模索する

もちろん、日本も同様に経済成長をしなけらばならない。年率3%の成長率を目標として経済成長をしなければ、国は衰退の一途を辿る。

日本は資源がなく、ドイツ同様製造業のGDPは20%を超えているため、「製造業で経済成長していくということを真剣に考えた上で、従来のやり方でない道を探し出さなければならない」と水上氏は語る。

しかしドイツと比べ日本では、ITの活用の仕方が全体最適のためではなく、部分的に活用されている。価値観を変革し、その上でイノベーションの変革や次に目指す経済圏をシステム思考で描いていかなければならない。

そのため日本の経済省は2016年よりドイツの経済省と連携協力し、ドイツのヴィジョンを理解するところから、日本の中小企業をどのように支援していくかとったところまでを対象に活動しているということだ。

水上氏は最後に、「活動範囲が広く多岐に渡るため、様々な企業と協業して取り組んでいきたい」と締めくくった。