原価管理の実例
「mcframe PLM」シリーズのコンセプト・狙いが解説された後、今度は実際に「mcframe PLM」シリーズを活用した原価管理の実例について紹介があった。
まず1つは「原価のデジタル化でアイディア創出」した会社の例だ。
この会社は自社の技術情報システム、そして2D-CAD・3D-CADも持っていた。そして生産・販売管理には既存の「mcframe」シリーズを利用しており、それ以外の見積り情報などはエクセルで管理していたという。
「それらを「mcframe PLM」シリーズのなかに全て入れ、その中で原価計算できるような仕組みを実現し、設計部門・製造部門・営業部門・購買部門と、いずれの部門も同じ数字を見て議論をする」というのが今回の取り組みだそうだ。
それ以前は各部門が都合の良い数字を使って議論をしており、実際その数字を会社全体でまとめてみると「なんだかおかしい」と気づくことが良くあったという。
しかし複数の人が同じ数字を見て議論できるコミュニケーション基盤が出来たことで、原価見積りの効率化・高速化を図ることが出来たそうだ。
この会社の取り組みについて、もう少し細かいポイント説明があった。
まず複数部門が1つのデータを見て検討するメリットについては「例えば購買部門が製品を横断してアイディアを出してくれる」など、部門間を越えてアイディアが創出されることが挙げられた。
また、コストシュミレーションが容易になったことについては「もともとエクセルで行っていたが、標準化といった取り組みなども進めていくと複雑化し、どれくらいで利益が良くなるのか、といったことが分かるのが数日後になる、という状態だった。それが「mcframe PLM」シリーズを導入することで直ぐわかるようになった」という。
そして一番大きな効果として、設計者の新しい技術や、高性能部材の研究などに時間が取れるようになったことが強調された。
今回の事例について「コミュニケーションの基盤を作ったこと、原価見積りの高速化・効率化、その結果として多数のアイディアが出せるようになったこと、十分な施策検討のサイクルが出来たこと。これがどんどん企業を強くする源泉になる。効率化して削減してばかりでは、企業はどんどんやせ細っていく。効率化で生まれた能力を高度化に使ってもらいたい」と伊与田氏はまとめた。
2つ目に挙げられた事例は「自動化で設計における原価検討促進」の例である。

この企業はCADデータからコストパラメータを自動で抽出し、原価見積りを行うことに取り組んでいるという。具体的には「CADに書かれている材質、板厚、寸法といった設計諸元をシステム上から抜き出して、そのパラメータを基にコストテーブルの中から費用を出す」という取り組みだそうだ。
この事例について、2つの重要なポイントの説明があった。
まず1つはCADからデータを抜き出すということ。CADを使っていると「設計部門は意外とデジタル化が進んでいるのでは」と思うが、「実は一番デジタル化から取り残されているのは設計部門ではないのか」と見受けられる部分もあるそうだ。
つまりCADを使って絵をかいても、計算書・仕様書にきちんと数字が入っていても、それをちゃんとデジタルデータとして活かすことが出来ているのか、という事が焦点になる。現在でも「人が目で見て、転記をする。さらにそこから品目情報・原価情報を抜き出して計算する。さらに別のシートに入力している」と設計部門のデジタル化が進んでいない企業は未だ多い。
「設計は利益を生み出す源泉として、会社の一番重要なところ。その担当者に手間のかかることをさせるのか、という話になる。設計者にはより良い製品を考えて生み出す時間を持ってもらいたい」と設計に余計な手間をかけさせない事の重要性が講演では強調されていた。
その上で伊与田氏は「一度設計上で挙がってきたデータをシステムで抜き出せれば良い。そうするとデータが溜まってくる。溜まると過去の実績があるのか無いのか、何を検証しなければいけないのかくらいまでは、すぐシステム上で組むことが出来る。もっとデータが溜まってくれば、AIなどでコストテーブルといった過去のデータからAIで価格推定といったことも出来るようになる。このように最低限のチェックが機械で出来てしまう」とデジタル化により省力化のメリットを説明し、「何か計算上しっくり来ないな、こうすれば市場に受けそうだよね、といった製品の検討に設計者が注力して上げられるようすれば良い」と見解を述べた。
2つ目のポイントとして挙げられたのが「計算の精度よりスピードが重要である」ということだ。
製造の基本的な流れは、以下の図のように「要求仕様があって、設計があって、図面を書いて、発注書を書いて、部品表を書いて、最終的に製造工程に持っていく」と風になっている。

そして工程が下に行けば行くほど(上記図参照)、より詳細な原価情報が分かるようになるので、原価精度が上がる。しかし設計の自由度は下がる。逆に上に行けば行くほど設計の自由度は高いが、それでは精確な原価を出すことは出来ない。
「コストテーブルを作りましょう、という話になると、精度が上がらなきゃだめだ、という方もいるが、本当に精度が必要なのか。あることをしたら原価が上がる方向に行きそうなのか、あまり変わらないのか。これくらいが分かって設計部門にフィードバックしてあげれば、設計者はだんだんコスト感覚を持って、より良い設計というものをやってもらえるようになる。上流をどのように上手く設計者にフィードバックできるようになるのかが重要であり、これが企業の競争力を高める」と、精度よりスピードを取ることが結果的に企業の競争力につながることを伊与田氏は解説した。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。
