株式会社日立製作所(以下、日立)は、株式会社日立ハイテクソリューションズ(以下、日立ハイテク)と共同で、製造途中で得られる計測データを用いて、高精度な性能予測を可能とし、製造ライン立ち上げと歩留まり向上を支援するプロセスインフォマティクス技術を開発した。
この技術は、中間工程品のSEM(走査電子顕微鏡)画像データから抽出した構造特徴量を用いて性能を予測し、その結果を製造情報へフィードバックするものだ。
日立ハイテクが開発した高真空を必要としないSEMを用いることで、電極シート表面の観察像を数分で取得し、画像解析により、電極中の凝集および空隙構造や構成要素の分布を反映した重要な構造特徴量を抽出する。
この技術により、電池性能を測定する前の段階で、中間工程品である電極シートの良否判別が可能となり、製造工程における品質異常リスクを早期に検知することができる。

同社はこの技術を、リチウムイオン電池製造途中の中間工程品である電極シートの試作ラインで活用した。その結果、電極シートの構造特徴量を抽出し、機械学習モデルに適用することで、限られたデータでも高精度な電池性能予測が可能であることが確認された。
従来は、電極製造時に設定した製造情報を説明変数として入力していたが、今回、中間工程品の構造特徴量を活用することで、予測誤差が低減した。

さらに、説明変数(※)の寄与度を評価した結果、構造特徴量と目的変数である電池性能の相関性が明確となった。
これにより、現場で根拠をもって予測結果を活用できるようになり、製造ライン立ち上げ時の試行錯誤や作業者負担の削減に寄与することが期待されている。
※説明変数:機械学習モデルの入力として使用され、目的変数(予測したい変数)に影響を与える変数のこと。
今後は、顧客との協創により、同技術による製造ライン高効率化の実証を進めるとのことだ。
また、多様な製造業への適用も視野に研究開発を進め、製造時のロス削減や環境負荷低減を目指すとしている。
なお、同成果の一部は、2025年6月25日~26日にドイツで開催される「AABC Europe 2025, Global Battery Manufacturing Production」で発表予定だ。
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