日本ゼオン株式会社(以下、ゼオン)は、全社的なスマート工場化を推進するため、操業の周辺システムを対象としたIoT共通基盤を新たに構築し、運用を開始した。
ゼオンでは、2020年から製品品質を確保しながら生産最適化を目指すスマート工場化に取り組んできた。一方で、安定操業を重視する同社では、プラント制御システムや監視システムなどを社内ネットワークから切り離すことで高い安全性を確保していたため、全社横断でのデータ活用が進みにくいという課題を抱えていた。
今回構築したIoT共通基盤では、この課題を解消するために、各現場の測定機器やセンサなどのデバイスをセルラー通信の閉域ネットワーク経由でクラウド上の共通システムや工場・研究所システムと接続した。
これにより、インターネットから切り離された独自の通信環境を構築でき、外部からの不正アクセスを防ぎつつ、柔軟で迅速なIoT導入を実現した。

また、有線LANの敷設を必要としない構成により、センサや分析装置の追加設置が容易で、現場主導によるスピーディな導入が可能となっている。
なお、同基盤の構築にあたっては、IoTプラットフォームを提供する株式会社ソラコムの支援を受け、通信・クラウド技術とコンサルティングを活用して設計が行われた。
すでに高岡工場では、「設備の動作監視システム」を構築し、PoC(概念実証)を経て2025年5月から本格運用を開始している。
その結果、従来工場内を巡回して行っていた点検作業の大幅な削減に成功し、作業負荷の軽減とリアルタイム監視による異常の早期発見を実現したのだという。
現在、複数の拠点において同基盤を活用したIoTプロジェクトのPoCが進行しており、今後はこれらのPoCの成果をもとに、全国の製造拠点へ順次展開していく予定だ。
さらにゼオンは、遠隔監視やデータ分析、AI連携などの先進技術をさらに導入し、生産体制の高度化と持続可能なものづくりの実現を目指すとしている。
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