製造業において、熟練技術者の減少や設備の老朽化、生産拠点のグローバル化に伴う人材不足が深刻化する中、現場の保全業務をいかに効率化し、技術を継承していくかが喫緊の課題となっている。
こうした中、株式会社日立製作所は、工場の設備故障診断を支援するAIエージェント「現場サポートAIナビ(Field Support AI Navi)」の提供を、2026年2月3日より開始した。
「現場サポートAIナビ」は、現場の保全員がタブレット端末などを通じて対話形式で設備の不具合状況を入力すると、AIがその原因と対策を提示するソリューションだ。
最大の特徴は、単なるマニュアル検索や過去事例の提示にとどまらず、熟練者が行う「原因特定のための思考プロセス」をAIが再現する点にある。
具体的には、顧客が保有する設備図面を「ナレッジグラフ」として生成AIが解釈可能な構造に変換。これに加え、過去の保全記録などの「OTデータ」と、日立が持つ設備故障原因分析手法(STAMPなど)に基づく「OTスキル」を掛け合わせて学習させている。
一般的なチャットボットでは、過去のデータにない新規の事象には対応できないケースが多いが、同ソリューションは独自の分析ロジックにより、未知のトラブルであっても「次に確認すべき箇所」や「取るべき行動」を明確にガイドすることが可能である。
これにより、経験の浅い作業員でも熟練者と同等レベルの診断が可能となり、属人化の解消とダウンタイムの短縮に寄与する。
対象設備は、動力設備、制御装置、ポンプ、バルブなど多岐にわたり、ディスクリート産業からプロセス産業まで幅広い製造現場に対応する。
同ソリューションの提供にあたっては、すでに大手製造業との実証が進められている。2025年4月からはダイキン工業と試験運用を開始し、同年12月からは三菱ケミカルと化学プラントにおけるトラブルシューティング支援の共同検証を行ってきた。これらの現場で培われた知見が、今回の製品化に反映されているのだという。
提供形態は、既存システムに機能を組み込む「API as a Service(APIaaS)」と、早期導入が可能な「パッケージシステム」の双方が用意されており、企業のニーズに合わせて選択が可能だ。
なお、「現場サポートAIナビ」は、同社の産業分野向けソリューション群「HMAX Industry」のラインアップの一つとして提供される。
日立は将来的に、現場データをリアルタイムで収集・分析する「フィジカルAI」への発展も視野に入れており、製造現場の自動化・自律化をさらに加速させるとしている。
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