近年、少量多品種生産を柔軟で低コストに実現する次世代インダストリーに向けて、工場のFA機器にも生産自動化とクラウド連携への対応が求められている。これらの実現には、FA(Factory Automation)機器が送受信する信号の伝送を無線化することで、有線で接続しているFA機器とユーザ端末の分離、全工程のリモートセンシング、FA機器とIT機器やクラウドのリアルタイム連携などを行う必要がある。
しかし、オフィスや一般消費者向けの無線通信は工場の劣悪な無線環境では高信頼・低遅延の通信が困難という課題があった。
そこで、日本電気株式会社(以下、NEC)は、工場の工作機械やロボットなどのFA機器やIT機器の信号を高信頼・低遅延に伝送する「ExpEther」(エクスプレスイーサ)(※1)の無線IPコアのライセンスの提供を開始した。
ExpEther無線IPコアは、工場の劣悪な無線環境でも従来の無線通信より高信頼・低遅延の通信を提供する新技術を採用し、FA機器による電波の反射や減衰が起こりやすい環境でも安定した無線通信を実現する。主な特長は以下の通り。
- 独自符号化方式を用いてEnd-to-Endの低遅延なロスレス通信を実現
- 複数の無線規格を組み合わせて無線通信を提供
- 既存の有線イーサネットや信号線と接続して無線化を実現
NECが開発した独自符号化方式(非再送冗長符号通信(※2))により、データを再送することなくEnd-to-Endでロスレスの低遅延通信を実現する。これにより、通信のロスが発生しやすい無線ネットワーク環境でも通信が可能である。
様々な特性を持つ複数の無線規格を組み合わせることで個々の特性における補完を行い、無線通信を提供する。例えば、高速で不安定な無線規格と低速で安定な無線規格を同時に利用し、安定した無線通信を実現する。
無線IPコアがハードウェアで符号化等を行うことにより、既存システムのイーサネットや信号線(GPIO)と接続することで無線通信が即時に利用可能となる。
活用イメージは以下の通り。
- ユーザエクスペリエンス(UX)改善
- 自動化
- 高性能化
FA機器のユーザインターフェース(UI)を無線化し作業性向上
自律無人搬送車(AGV)を活用した工作機器とロボット組立ラインの連携により、工場全体を自動化し生産性向上
センサー接続を無線化し、配線が困難な箇所のセンシングによる情報を活用し、加工制御性能向上
これにより、次世代工場における生産の自動化とクラウド連携などによる全体最適化に貢献する。NECは、今後3年間でFA機器メーカーを中心に国内外で30社へ販売することを見込んでいる。
※1 LAN標準のイーサネット上に業界標準バス規格であるPCI ExpressやGPIOを拡張する技術として2006年にNECが開発。イーサネットを利用してコンピュータと産業機器等のデバイスを遠隔に設置することができる。
※2 通信のロスが頻発する工場内の無線ネットワーク環境において、再送せずに正しい情報の到達を保証し、安定的な無線接続を実現する通信方式。
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