IDC Japan株式会社は、2022年3月末時点の新型コロナウイルス感染症および、ロシア・ウクライナ戦争による影響を考慮した、国内IT市場予測を発表した。
これによると国内のIT市場は、前回発行されたレポート「国内IT市場 産業分野別/従業員規模別/年商規模別予測アップデート、2021年~2025年」から、2021年は0.8ポイント改善し、前年比5.0%増の19兆2,363億円の実績、2022年は2.2ポイント改善となり、前年比4.5%増の20兆962億円と予測している。
飲食・宿泊・運輸などのサービス業を中心とした産業は、未だ新型コロナウイルス感染症の影響を受け厳しい状況が継続している他、2022年2月に始まったロシア・ウクライナ戦争により、多くの原材料の品不足による価格高騰や、調達先変更に伴うサプライチェーンへの影響が出始めている。
国内においては、円安による輸入物価の上昇が製品のコストや価格上昇につながり、企業業績や国内消費への悪影響が広がる可能性がある一方、国内IT市場は、企業システムのクラウド化やサブスクリプションモデルの浸透、リモートワークやリモート学習の定着が進むなど、マクロ経済の変動に対して影響を受けづらいビジネス構造に変化している。
製品別では、国内通信事業者の携帯電話通信料金値下げによるスマートフォンの買い替え需要、通信インフラの増強、オンプレミス環境で運用してきた従来のITインフラの刷新を含む、クラウド環境への移行、サブスクリプションビジネスの広がりによるソフトウェアおよびサービスの成長によって、IT市場が回復しているという。
産業分野別では、IDCは全ての産業分野でプラス成長に回復するとしている。
また、携帯電話料金値下げに起因するスマートフォンの買い替え需要が拡大する消費者、通信分野では通信インフラ拡充、および5G投資、各種ITソリューションの基盤となるテクノロジーを提供する情報サービスが、2022年のIT市場成長を牽引するという。
従業員規模別では、大企業、中堅企業といった経営体力のある企業は、ITによる事業拡大に向けた取り組みを継続しており、プラス成長を予測。
一方、経営体力に乏しい小規模企業以下、特に小企業では、業績の低迷が長期化し、事業継続が難しい状況に追い込まれる企業も増えており、2022年のIT支出はマイナス成長を予測している。
年商規模別では、業務効率化や非対面チャネル強化、既存システムのクラウドシフトを推進するIT支出は継続している。2022年においては、各年商規模の企業でプラス成長を予測しているが、年商規模100億円未満の企業ではプラス成長ながらほぼ横ばいを見込んでいる。
これらの予測は、新型コロナウイルス感染症と共存しながら経済活動の再開に向かうことで、国内における2022年の経済成長率は2.4%のプラス成長に転じ、海外経済の復調と政府の景気刺激策によって下支えされることを前提に作成されているという。
ただし、感染再拡大の懸念も残っていることから、経済活動が感染拡大前の水準に回復するのは、2023年以降になるとしている。
また、2021年~2026年の年間平均成長率は4.1%、2026年の国内IT市場規模は23兆5,551億円と予測されているが、感染拡大や抑制、ロシア・ウクライナ戦争の影響に関する見通しは不透明な部分が多く、今後の状況によっては予測を大きく見直す可能性があると発表している。
IDC Japan株式会社 ITスペンディングのシニアマーケットアナリストである阿部 勢氏は、ITサプライヤーに対して「予測不能な危機や環境変化が今後も発生することを前提に、デジタルを活用した、より柔軟なエコシステムやサービスを顧客に提案し、企業によるデータの共有、利用、管理、価値向上によるレジリエンシー(回復力)強化を支援することが重要である」と述べている。
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