IDC Japan株式会社は、2023年以降の全世界の情報技術(IT)業界に関する予測を発表した。それによると、これから先の数年間、複雑に絡み合った経済、政治、社会の混乱に、世界中の企業が翻弄されることが予測される。事業計画は思い通りに進まず、企業の適応能力と生存能力が問われることになるとIDCは見ている。
その中でも業界リーダー企業は、急速に進化する革新的なテクノロジーに基づいて価値を創出する、回復力に優れた(レジリエントな)デジタルビジネスへの組織変革により、このような混乱の嵐を切り抜けていくと予測した。
IDC Worldwide ResearchのグループバイスプレジデントであるRick Villars氏は「企業を成功に導くには、ITリーダーとビジネスリーダーが単なるDXの実施ではなく、テクノロジーがビジネス成果に直結するデジタルファースト組織の運営へと移行する必要があります。IT業界と通信業界そのものが、最も大きい変革を遂げるでしょう」と述べた。
続けて「これらの業界は、as-a-serviceのデリバリーモデルと業務オペレーションモデルを採用し、エコシステムとバリューチェーンの抜本的な変化に対処し、データの共有、利用、統制を通じてデータの価値を高められるようCIOとその企業を支援することが、自分たちの最大の任務だと認識するからです」と述べている。
IDC FutureScape 2023の調査レポートでは、今後12~24か月の間に世界的なビジネスエコシステムを変化させる外部要因と、デジタルファーストな世界で勝者になるために必要なテクノロジーを定義、構築、統制する際にテクノロジー/IT部門が直面する問題に焦点を合わせている。
IDCによる世界のIT業界十大予測(Top 10 Predictions)を詳しく見ると、以下のような状況が浮かび上がる。
- as-a-Serviceプロセスおよびスマートプロダクトの台頭
- aaSビジネスモデルによるTech-by-Wireの成長促進
- IT投資効果の最大化を阻む重要スキルの不足
- デジタル主権によるスタッフ、予算、業務プロセスへの影響
- aaS支出の急増に伴う評価の厳格化
- サービスプロバイダーの専門知識の提供能力が向上
- テクノロジーサプライチェーンは依然として重要な懸念事項
- 簡単には進まないコントロールプレーンベースシステムへの移行
- 自動化への信頼確立が成功の重要条件
- マシンビジョンによって実現される、物理的なさまざまな場所におけるエクスペリエンスの劇的な改善
IDCの予測によると、FotuneのGlobal 500企業のうちテクノロジー中心型の企業の数は、今後5年間で2倍に拡大するとしている。デジタルで強化された物理/バーチャル製品に、拡張された顧客エクスペリエンスや、インテリジェントなプロセス自動化などのas-a-Service(以下、aaS)要素を追加する作業が重視され、今後のIT予算の主流になると予測される。
今後数年にわたってIT業界で最も顕著な進展の一つは、Tech-by-Wireによるテクノロジーデリバリー(すなわち、self-contained systems、Software-Definedの機能、AI支援によるクラウドベース制御システム、データ駆動型の意思決定)の拡大であると予測される。Tech-by-Wireの採用を促す最大の要因はコストメリットだが、その他にもデジタルレジリエンシーの向上、革新的なテクノロジーの大規模な早期利用、システムの簡素化および技術的負債の減少といったメリットがあるとした。
ほとんどの企業が、適正なスキルを備えた従業員の確保と維持に苦心すると予測されている。そのため、拡大するデジタルビジネスの要件を満たすべく、現職の従業員に重いプレッシャーがかかる。ニーズに適した技術、コラボレーション、そしてクリティカルシンキングのスキル開発に、企業もITプロバイダーも投資する必要がある。
「デジタルビジネスに必要な人材とスキルの確保という現在の難題を解決しやすくするためには、ビジネス戦略や学習戦略とテクノロジー戦略を一体化させる必要があります」と、Villars氏は述べている。
クラウドおよびaaSオファリングが、(国や地域が、海外プラットフォーマーなどに依存せずに自立してデジタル技術やデータ基盤を整え、それらの活用上の主導権を握ることを志向する)デジタル主権をめぐる展開の中心になると予測される。
データ保護の保証や技術基盤やデータの所在地をめぐる主張により、いくらかのIaaS/PaaSワークロードがローカルクラウドプロバイダーに集まる一方、サステナブルな事業運営への要請から、グローバルクラウドプロバイダーの間で(ローカルパートナーとの協業による)デジタル主権を確保するサービスへの関心が喚起されることになる。
ほとんどの企業にとってコストは最大の懸念事項である。しかし、aaSの効果的な利用から生じる、業務負担の大幅かつ持続的な軽減、イノベーションへのアクセスの迅速化といった最も重要なメリットが、コストによって見えにくくなる。支出を抑えるための努力は、業務とイノベーションに期待通りの価値をもたらすのはどのサービスかという評価に焦点を合わせる必要がある。
より標準化されたコントロールプレーンベースのaaSオファリングへの転換が進むと共に、AIと自動化の利用が活発化することで、セキュリティ、データ、重要な業界固有の知識/プロセスを提供するプロバイダーは、非常に価値の高い専門家の知識基盤を、より多くの顧客に対して利用しやすい形で経済的に提供するようになると予測される。
2025年には、世界的または地域的な半導体チップの供給およびソフトウェアのサプライチェーンの問題により、注目度の高い多数のデジタル製品の発売が大きく延期されることになるとIDCでは予測している。このような遅延を回避するため、意思決定者はクラウドプロバイダーに定量化可能な成果を強く求めたり、サプライチェーンインテリジェンスに投資したり、マルチソーシング戦略を採用したりすると予測される。
「テクノロジーサプライチェーンの信頼性確保は、もはやCIOただ1人の問題ではありません。デジタルビジネスの経営幹部全員が、テクノロジーを主要な関心事項とする必要があります」とVillars氏は付言している。
今後数年間、IT部門にとって最も難しい課題の一つは、コントロールプレーンに関する設計の成熟度を高めつつ、基本的な制御システムを少数の標準的なプラットフォームに段階的に統合していくことだと予測される。IDCの予測によると、Tech-by-Wireソリューションの利用を試みる企業の半数以上が、サイロ化した多数の制御システムに苦慮することになるとのことだ。
自動化への信頼を確立するには、自動化が重要な役割を果たす新たな取り組みにおいて、人間/組織行動の力学をさらに重視する必要がある。信頼の低さに起因して重大なリスクが生じる可能性は低いように思えても、企業ブランドへの影響や、信頼の構築をやり直す必要が生じた場合の影響というものは極めて大きいとしている。
デジタルを活用して最適化された仕事/遊び/健康に関わる場所に、コンピューターによって強化されたビジョンシステムを導入することでリーダー的な地位を確立する企業は、データのインテリジェントな利用に基づいて、顧客ロイヤルティの獲得と維持のみならず、ビジネス成果の向上という点でも、長期的な優位性を築くと予測される。
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