花王株式会社は2026年8月17日、自社開発の需要予測モデルとAI技術を融合させ、根拠を伴う需要計画案を自律的に提示して立案業務を支援するAIエージェント「Kao-MIKOMIL(カオウ ミコミル)」を開発したと発表した。
同システムは、販売実績に基づく客観的な予測値に、価格や販売チャネル、販促キャンペーンといった詳細なマーケティング施策の情報をAIが有機的に組み合わせ、推奨する需要計画案とその客観的な算出根拠を提示するものだ。
従来の業務プロセスでは、デジタル部門のデータサイエンティストと事業部門の計画担当者が、類似する過去商品の売れ行きや直近の販促計画などを突き合わせながら、時間をかけて計画値を議論・調整していた。
これに対し「Kao-MIKOMIL」は、花王が長年培ってきた統計予測アルゴリズムと、今後の実行予定の価格設定、流通チャネル、広告出稿といった複雑な施策情報を自動で重ね合わせて処理を行う。
AIエージェントが「どのような根拠に基づいてこの計画案が算出されたか」という意思決定のプロセスを明確に可視化するため、人間の担当者は提示された複数の計画案を精査し、最終的なビジネス判断を下すだけで業務を完了させることが可能だ。

技術的な強みとしては、同システムが全社的な統合データプラットフォームや高度な操業サイクル(S&OP)と緊密に連携して稼働する点が挙げられている。
同社では、原材料の調達から製品製造、物流、販売にいたる一連のデータをリアルタイムに収集・蓄積するデータ基盤「Kao i-Lake(カオウ アイ レイク)」を構築している。
「Kao-MIKOMIL」はこのクリーンに整備されたデータ資源に直接アクセスし、一部の限定品を除くすべての通常製品について、最大18カ月先までの月次予測と、直近6カ月先までのより精緻な日次予測を高い解像度で継続的に実行する。
このタイムリーな予測値は、そのまま工場の生産計画や倉庫への配分計画へとダイレクトに反映される。
データが一気通貫で循環するプラットフォームが担保されているからこそ、データの不整合によるAIのハルシネーション(もっともらしい誤情報の出力)が最小限に抑えられ、現場の実務で即座に活用できる高精度な判定出力を実現しているとのことだ。
また、同システムの構築にあたっては、システム開発における大きな障壁となりがちな「技術と現場の乖離」を防ぐための取り組みが採用されている。
具体的には、同社のデジタル戦略部門に所属するデータサイエンティスト自らが、化粧品ビジネスを行う実際の事業部門の現場へ深く入り込んで常駐し、実務における細かな判断フローや運用上の課題、本当に必要なユーザインターフェースを観察した。
これにより、一度開発して終わりではなく、中長期的な仕様変更や変種変量生産のニーズに対しても現場主導で自律的に使い続け、学習を重ねるごとに予測精度が磨かれていく高い拡張性を持つシステム設計を達成しているのだという。
花王は、2026年7月より自社の主力化粧品ブランドである「KATE(ケイト)」を対象に同エージェントの本格運用を開始しており、今後は検証を重ねながら他の化粧品ブランドや別カテゴリーの事業領域へと順次対象を広げていく計画だ。
一連のデータ駆動による需給計画の高度化や商品構成の徹底した見直しなどを組み合わせることで、化粧品事業における製品在庫を2027年までに2024年比で約25%削減することを目指している。

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