KDDI・大林組・NEC、5Gで道路造成工事に関する一連の作業を遠隔操作、自動化へ

近年、建設業では、現場作業員の高齢化、若手就業者の減少による労働力不足や技能の継承が喫緊の課題で、省人化による生産性の向上が急務だ。また、建設工事では、設計データや出来形管理など大容量データを活用して施工を行うが、測量や出来形の確認などは人の手によって行われているため、多くの時間と労力を要しており、施工の効率化が求められている。

そのため、専門的な技能を有するオペレーターが建設機械（以下、建機）に搭乗せずに遠隔で操作できる遠隔操作システムの活用や、工事現場でICTを活用したセンシング技術による作業効率化が期待されている。

このような中、KDDI株式会社、株式会社大林組、日本電気株式会社（以下、NEC）は、これまで複数回にわたり5Gを活用した遠隔施工の実証試験を重ねて、実用化に向けた取り組みを実施してきた。

そして今回、一般的な工事現場での活用を見据えて、2020年2月3日から本日まで、三重県伊賀市で建設中の川上ダムの一部施工フィールドの提供により、5Gを活用して、3台の建機の遠隔操作と自動運転システムを搭載した振動ローラの同時連携と、工事に必要な施工管理データのリアルタイム伝送・解析による一般的な道路造成工事の施工を実施した。実施内容は以下の通り。

5Gを活用した3台の建機の遠隔操作による掘削、運搬、敷き均しの実施
3台の建機（油圧ショベル、クローラキャリア、ブルドーザ）に、前方映像用の2Kカメラを各3台、全方位カメラ各1台設置し、計12台のカメラ映像と遠隔操作の信号データを5Gでリアルタイムに伝送した。加えて、各建機の工事エリアを俯瞰する計8台の2Kカメラと、工事エリア全体を俯瞰する4K3Dカメラも活用し、土砂の掘削、運搬、敷き均しを実施した。各建機には、5G端末と基地局を向き合わせるための仕組みとして正対装置を搭載している。
5Gを通じた、自動運転システム搭載の振動ローラによる転圧作業の施工指示、および施工結果の取得
振動ローラにて敷き均しされた土砂の転圧を実施した。転圧作業では、5Gを活用して自動運転システムを搭載した振動ローラと遠隔施工管理室間で施工指示データと、振動ローラの位置情報、転圧結果、品質をリアルタイムに伝送した。
5Gを活用したGNSSデータ伝送による施工管理
上記(1)、(2)の各建機からの映像やデータ伝送と合わせて、4台の建機（油圧ショベル、クローラキャリア、ブルドーザ、振動ローラ）に設置したGNSSから取得するデータ（建機の位置情報、現場状況（施工状況）と設計値（三次元設計データ）との差異）を5Gで遠隔施工管理室に伝送し、マシンガイダンスにより各建機の遠隔操作をサポートすると共に施工結果をリアルタイムに取得した。
リアルタイム3Dレーザースキャナによる土砂量や造成結果データの5G伝送
建機の工事エリアに3Dレーザースキャナを2台設置し、マシンガイダンスにデータを利用すると共に5Gを用いて施工現場の土砂量や造成結果のデータを伝送し、遠隔地からリアルタイムに出来形を確認した。

同実証試験により、道路造成工事に係る一連の作業を遠隔操作、自動化で実現できることが確認された。同実証試験で用いた技術は、統合施工管理システムとして、将来的には、オフィスなどの遠隔施工管理室から複数の工事現場に連続してアクセスが可能となり、1人の熟練工が複数建機、複数現場で同時に対応できることを目指す。これにより、現場に行く時間の削減や工数の削減に貢献する。

なお、同実証試験は、サムスン電子が提供する端末を含めたアクセスソリューションを用いており、総務省の5G総合実証試験の一環として実施した。