昨今、国内労働人口の減少とその加速が予測され、国先導の下、各企業による労働力確保や生産性向上など働き方改革への取り組みが喫緊の課題となっている。また、地球温暖化の急速な進行が顕在化し、脱炭素化は今まで以上に社会全体での課題となる。
そうした中、個人の状況(業務や体調)に応じて働く場所を能動的に選択する働き方(ABW:Activity Based Working)が注目されている。個人の高集中化、コミュニケーションを適正化することで、生産性や健康の向上が期待できるとともに、固定席が排除されることでオフィス効率が向上するため、省エネ、脱炭素化も同時に図ることができる。
一方、従来の空調・照明・防犯・防災・日射遮蔽・映像音響などの建築設備では、各システムが独自にセンサーを設置しており、相互無関係に制御されてきた。これに対し、より快適に、より効率的に建築空間を運用して生産性向上や脱炭素化を促進するためには、空間の全体最適化を可能とするシステム開発が必要となる。
そうした中、株式会社日建設計、株式会社協和エクシオ、株式会社WHERE、オムロン株式会社、神田通信機株式会社は、ワークプレイスの有効利用と室内環境の最適化を目指すクラウドプラットフォームを活用したセンサー・設備制御ネットワークシステムの開発・改善・普及に向けた取り組みを共同で実施することに合意した。
同協創は、デジタルツイン(※1)とオープンスタンダードのAPI(※2)をシステムコンセプトとしており、建物内にセンシング専用のネットワークを構築、複数センサーのデータをクラウドプラットフォームにアップロード、マッシュアップし、全体最適解を探索するため総体的に解析、設備制御にフィードバック可能な設備制御ネットワークシステムの構築を目指す。
既に、都内某オフィス(対象エリア1000㎡)を利用して、センサー/ネットワークおよびクラウドプラットフォーム・照明制御の実証実験を開始している。同実証実験の結果を基に、設備制御連携の拡張やセンサー種別の最適配置を検討し、改善・普及を目指した研究開発を実施する。
さらに、センサーや設備のマルチベンダー化が促進され、拡張・更新が容易で陳腐化しないシステムの構築を図る。同時に、建物オーナーやユーザー自身が、アップロード・マッシュアップされたデータを利用し、ワークスペースの改善やワーカーの活動支援に活用が可能となる。
同システムを導入することで、人が滞在し設備制御されている空間であれば、人や物の位置情報や利用状況、室内環境を定量化し、これらに応じた制御が可能となるため、オフィスや学校、病院、工場など多様な建物用途に貢献できる。特にワークプレイスにおける利用が有効であると考え、働き方改革や脱炭素社会の実現に貢献する。
今後は、設備制御やAIとの連携の拡大を図り、実フィールドにおける省エネルギー効果の検証や働き方改革への応用を試行していく。
なお、同取り組みにおける各社の役割は以下の通り。
※1 デジタルツイン:サイバー空間にリアルの物体や事象をリアルタイムな連動性をもって再現するもの。センサーが収集した現実世界の情報をサイバー空間で解析し、現実世界の制御へのフィードバックを可能とする。
※2 API:Application Programing Interfaceの略。ソフトウェアやアプリケーションなどの一部を外部に向けて公開することにより、第三者が開発したソフトウェアと機能を共有できる。これにより、相互接続性・相互運用性を可能とする。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。