都内の複合開発である「HARUMI FLAG」は、住宅棟23棟5,632戸と商業施設からなる街であり、多くのエネルギー需要が見込まれている。また、新エネルギーとなる水素や太陽光、蓄電池などを活用した多重なインフラを活用するため、複雑なエネルギー管理が求められる。
そして今回、HARUMI FLAGの特定建築者11社(※1)と株式会社日立製作所(以下、日立)は、AIによる電力需要予測機能を搭載したAEMS(※2)「HARUMI AI-AEMS」を導入する。
HARUMI FLAGのAEMSは、街区単位でエネルギー管理を行うMEMS、各住戸のエネルギー管理を行うHEMS、商業施設のエネルギー管理を行うBEMSというエリア内のエネルギーマネジメントシステムと連携し、データを統合管理する。
これにより、従来では街区ごとにしか把握できなかったエネルギー情報を、街全体で詳細に把握できるようになり、データ統合による街全体の取り組み成果の見える化に加え、街区毎の使用傾向の分析などを行う。さらに、AEMSによって収集・演算されたエネルギー使用量や予測値などのデータは、タウンポータルやデジタルサイネージなどを通じて住民に情報提供することで、環境負荷低減への意識づけも促進する。
今回導入するHARUMI AI-AEMSは、HARUMI FLAGの街区全体を繋ぐエリアネットワークによって、各街区における大容量のエネルギー情報データを一元管理し、効率的なエネルギー運用に繋げる。AIには、日立のIoTプラットフォーム「Lumada」のデータモデリング技術およびディープラーニング技術を用いることで、電力需要予測を実現する。また、エネルギー運用・管理・制御基盤は、統合エネルギー・設備マネジメントサービス「EMilia」をベースに構築している。
HARUMI AI-AEMSの詳しい特長は以下の通り。
- 電力需要予測
- 水素利用を含む効率的なエネルギー消費計画の立案
- ピーク抑制を目的とするエネルギー利用計画の立案
- 災害時の供給電源確保
気象情報や地域のイベント情報、過去のエネルギー使用実績や傾向などの情報をもとに、それぞれの因果関係を学習し、電力需要の予測を行う。AIは、関係性が薄いデータを自らの判断で除外し、予測を導き出す自己学習型となっており、運用実績データを蓄積するほど成長し、街の発展とともに予測精度が向上する。
HARUMI FLAGでは、近隣に整備される水素ステーションからパイプラインを介して水素が供給され、敷地内に設置された純水素型燃料電池により電力を供給する。HARUMI AI-AEMSは、各街区の電力消費傾向を予測し、年間の水素利用計画を立案・運用する。
電力需要予測に基づいてその使用量のピーク時間帯を街区単位で判定し、太陽光パネルと連動する蓄電池の充放電計画や純水素型燃料電池の運転計画を立案する。その運転計画に合わせて、空調や照明など共用設備の制御運転を自動で実施する。電力ピークを予測しエネルギーマネジメントを行うことで、予め電力ピークの発生自体を抑制する運用を目指す。
HARUMI FLAGでは、災害時に蓄電池や非常用発電機、純水素型燃料電池が共用部特定設備に電源を供給してライフラインを守る。AEMSは、蓄電池に一定の電力を残しておくなど、普段のエネルギー管理から万が一の事態に備えた運転を行う。また、災害時の運転実績から電力の使用傾向を分析して電力供給持続可能時間を予測することで災害時の運用をサポートする。
※1 特定建築者とは、市街地再開発事業において整備する建築物を、施行者(東京都)に成り代わり民間事業者が建築できる制度で参画した事業者のことで、今回特定建築社に該当する11社は三井不動産レジデンシャル株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・野村不動産株式会社・住友不動産株式会社・住友商事株式会社・東急不動産株式会社・東京建物株式会社・NTT都市開発株式会社・日鉄興和不動産株式会社・大和ハウス工業株式会社・三井不動産株式会社である。
※2 Area Energy Management System(エリアエネルギーマネジメントシステム)の略称。ITを活用して複数の建物群(エリア)の省エネ改善や維持管理を行うシステム。
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