STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は、Qualcomm Technologies(以下、クアルコム)と共同開発したWi-Fi 6およびBluetooth Low Energy 5.4対応コンボモジュール「ST67W611M1」の量産を開始したことを発表した。
「ST67W611M1」は、2024年に発表されたSTとクアルコムの協業から生まれた初の製品で、STM32マイクロコントローラ(マイコン)搭載システムへの無線通信機能の実装を簡略化するものだ。
STのSTM32マイコンおよびソフトウェア、開発ツールのエコシステムと、クアルコム製の無線通信用チップと2.4GHz無線機能が組み込まれている。
加えて、パワー/低ノイズ・アンプ、RFスイッチ、バラン、内蔵PCBアンテナを含むすべてのRFフロントエンド回路が組み込まれ、コードおよびデータ格納用の4MB Flashメモリと、40MHz水晶振動子も内蔵している。
Wi-Fi 6とBluetooth 5.4を標準搭載し、規格に準拠した認証を取得済みであるほか、ThreadおよびMatterも、ソフトウェア・アップデートにより近日中にサポートされる予定だ。
さらに、オプションの同軸アンテナ、または外部アンテナ接続用にボードレベルでの接続も搭載されている。
これにより、製品開発者は無線に関する専門知識を必要とせずに、2層基板という低コストかつシンプルな設計でWi-FiとBluetooth機能をデバイスに追加できるようになる。
セキュリティ面も強化されており、暗号化アクセラレータやセキュア・ブート機能により、「PSA Certifiedレベル1」を取得している。これにより、サイバーセキュリティに関する今後の法規制にも対応することが可能だ。
さらに「ST67W611M1」は、4,000種類以上の製品と強力なツール、ソフトウェアからなるSTの「STM32開発エコシステム」を活用することができる。
STのコネクティビティ・ビジネスライン ディレクターであるJerome Vanthournout氏は、「スマートなIoT機器の需要が加速する中、Wi-FiとBluetoothの複雑なプロトコルをデバイスに組み込むことは大きな課題だった。STのモジュールソリューションは、開発者が無線通信の複雑さに悩まされず、アプリケーション開発に集中できるよう設計されている。」とコメントしている。
また、クアルコムのプロダクト管理担当シニア・ディレクターであるShishir Gupta氏は、「ST67Wモジュールは、STM32マイコン(ST製の小型コンピュータ)を搭載した多様なシステムへのWi-FiとBluetoothの統合を簡素化し、柔軟性と拡張性を提供する。これは、IoT分野における両社のイノベーションへのコミットメントを示すものだ。」と述べている。
すでに、IoTテクノロジー企業のSiana Systemsはこのモジュールを導入し、製品性能の向上と開発期間の短縮に成功しているのだという。
Siana Systemsの創業者兼ソリューション・アーキテクトであるSylvain Bernard氏は、「ST67Wモジュールは、柔軟なパワー・マネージメントと高速起動により、エネルギー効率の極めて高い新製品の開発が可能です。追加のエンジニアリング作業も最小限で済むため、次世代設計に対応するためのシンプルで頼りになるソリューションだ。」と、その効果を語っている。
なお、「ST67W611M1」は現在量産中で、参考価格は大量購入時で約6.66ドルとなっている。また、評価・開発を支援する拡張ボードなども提供されているとのことだ。
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