医療現場において、医師や看護師などの深刻な人手不足や過酷な勤務環境が大きな社会問題となっている。
特に、カルテへの記入やサマリーの作成といった膨大な文書作成業務は医療従事者の深刻な業務負担となっており、定型的な事務作業の効率化と、患者に向き合う時間の確保をいかに両立させるかが、病院運営やDX推進における重要な課題であった。
こうした課題を受け、学校法人関西医科大学と日本アイ・ビー・エム株式会社は2026年7月8日、「医療AI共通ICTプラットフォーム」を共同開発したと発表した。
このプラットフォームは、大規模言語モデル(LLM)をはじめとするAIサービスをクラウド上で利用し、電子カルテシステムと連動して各種サマリーを自動生成するなど、AIアプリケーションを病院間で横展開できる診療支援AI基盤だ。

具体的には、第一弾の診療支援サービスとして、医師・看護師向けの「生成AIサマリー作成支援アプリケーション」の実運用を開始した。
同アプリケーションは、関西医科大学の3つの附属病院で統合運用されている電子カルテシステムとクラウド上の「医療AI共通ICTプラットフォーム」を連動させ、電子カルテ内の情報を生成AIが安全に取り込んで「看護サマリー」「退院サマリー」「外来サマリー」の作成を支援する。
これにより、例えば従来は30分程度かかっていた看護サマリーの作成時間を5分に短縮するなど、定型的な事務作業の大幅な削減を実現している。
なお、AIが自動生成した文章はそのまま記録されるのではなく、医療従事者が専門的知見から最終的な確認と修正を行うプロセスを経ることで、医療データとしての正確性と信頼性を担保する仕組みとなっている。
また、同プラットフォームは、将来の地域医療連携や臨床研究への発展を見据え、医療情報交換の国際標準規格である「FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)」に対応したデータ連携基盤を構築している。
これにより、異なる電子カルテシステム同士でもスムーズに接続してデータ連携を推進することが可能だ。
さらに、高度なサイバーセキュリティ環境を実現するため、強固な認証・認可を備えたゼロトラストネットワークシステムを採用しており、場所を問わず安全に機微な医療データやAIアプリケーションを利用できる環境を整えている。
今後関西医科大学は、ゼロトラスト環境下で院外から安全に電子カルテにアクセスできる業務用スマートフォン(教職員向け)の配布や、動画を用いた手術の患者説明システムの導入も予定している。
そして、今回開発された「医療AI共通ICTプラットフォーム」を「AI・医療データ中核基盤」と位置づけ、今後はAIアプリケーションのラインアップをさらに統合・拡充していく方針だ。

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