“大きいプラットフォーム”と“小さいプラットフォーム”の両方が必要
小泉: 「エコシステム」ということが念頭にあれば、多くのステークホルダーが自分たちの利益を確保しながらみんなで一つの価値を生み出すもの、というマインドセットになります。それは必ずしも、ITシステムのことである必要はありません。
八子: 「エコシステム」と「パートナリング」は違うと思っています。デジタルの世界においては、途中からあまり手をかけなくても、自然発生的にビジネスが拡大していくというモデルになっていないとうまくいかないのです。これがエコシステムの意義です。
しかし、(多くのプラットフォームには)そういうベーシックなしくみが想定されていない。たとえば、なぜ私たちウフルが「IoTパートナーコミュニティ」を運営しているかというと、参加した方たちにアプリケーションを勝手につくってもらいたいからなのです。
「勝手につくる」というのは、プラットフォーマー側からすると都合のいい話ではありますが、アプリケーションをつくる側の人にとっても、そのプラットフォームの上でビジネスをした方がおいしい、もしくはユーザーがたくさんいるということが担保されているのです。
ところが、「サイロ型」のプラットフォームということになると、少ないユーザーしかいない。他社がそのプラットフォームを利用する価値があるのか、ということまで考えていないのです。
自己増殖的にアプリケーションが増えていくということまで考えているプラットフォーマーというのは、きわめてわずかだと思いますよ。
小泉: でも、そうすると製造業で1個、スマートシティでも1個というように、大きなプラットフォームだけがあればいいという話にもなってしまう気がします。

八子: 実際には、「オープンプラットフォーム」とクローズドな「データマネジメントプラットフォーム」(DMP)の両方が入り混じることになります。
「オープン」の方に要求されるのは、そこに参画する企業がある程度データを持っていることです。そのためには、それぞれの企業が自社の中にDMPを持っていなければなりません。自社のオペレーションに活用でき、データが一元的に管理されていて、「このデータは出すが、このデータは出さない」というように取捨選別できるようなものです。
業界全体のオープンなプラットフォームがあったとしても、それはDMPとのコネクションである程度成り立つような、“多段構造”にならざるを得ません。
そういう意味では、“大きなプラットフォーム”の下に複数の“小さなプラットフォーム”があり、なおかつそれが部分的には相互接続されるので、一つの業界が一つのプラットフォームで完全統合されるということはないと思います。
小泉: なるほど。
八子: かつてGEの「Predix」が登場した時、すべてあのプラットフォームに席巻されるのではないか、という議論もありました。しかし、やはり向き不向きがあります。また「Predix」の場合はライセンス契約が前提となっているため、契約できる企業も限られます。
そうすると、大企業や資金を持っている会社しか使えないことになります。それでは、エコシステムが途中から広がらないですよね。それが、いまGEの「Predix」があまりうまくいっていないように見える理由ではないかと、個人的には思っています。

技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。
