CES2019に見る「スマート化からAI化」の変化 ―IoTNEWS主催セミナー 吉田健太郎講演

5Gの最新動向と「AI化」の大潮流

次に吉田は、AIと並んで重要なキーワードだった5Gに言及。5GのベンダーであるVerizonのキーノートの内容について解説した。

「『5Gはすべて変えていく』、その本質は『人間の能力の向上=Humanability』にあるとVerizonは主張している。たとえば、アメリカではハリケーンで被害にあった電線の復旧工事をドローンが5G通信で行うという取り組みをすでに行っている。これはまさに人間の能力を拡張していくことだ。30年間、セオリーが変わっていない外科手術の分野においても、AR手術やリモート手術は外科医の能力拡張だと言える」(吉田)

CES2019に見る「スマート化からAI化」の変化 ―IoTNEWS主催セミナー 吉田健太郎氏講演
「大容量」「低遅延」「大量接続」の3つのメリットが知られる5Gだが、Verizonは今回8つの特徴を示した。

また、吉田によるとアメリカで5Gの活用が最も期待されている分野は、FTTH(光ファイバーによる有線通信)からFWA(固定無線アクセス)への置き換えだという。「欧米ではブロードバンド難民が非常に多い。たとえば、石畳の多いヨーロッパなどでは、有線ケーブルをはわせることが現実的ではない場合も多い。それが5Gで解消されるメリットは大きい。アメリカでは、既にFWAで690 Mbpsのスループットを実現している」と説明した。

また、2019年中にアメリカで約30機種が発売されるという5G対応スマートフォンについては、「モバイル向けの5Gの焦点はミリ波アンテナだ。高帯域で直進性の強い周波数の電波が本当に使えるのかどうかだ。2025くらいになると、800 MHzといった現状のLTEの帯域で5Gが増えてくるだろう。しかし、それまでの間は、実用的に何ができるのかは注視していく必要がある」とポイントを述べた。

CES2019に見る「スマート化からAI化」の変化 ―IoTNEWS主催セミナー 吉田健太郎氏講演
「勝手に快適」時代が到来

吉田はCES2019を総括して、「生活の中にテクノロジーがどんどん入ってきている。その中で、クラフトビール製造機や自分で調合するハンドクリームといった、こだわりを持った生活者が自ら『クラフト』できるプロダクトが増えてきている。一方で、大衆向けにはモノがすべてを勝手にやってくれることがポイントになってくる。今はそうしたオートメーションのテクノロジーの端境期にある。これを『停滞感』とも呼べるのかもしれない」と述べた。

そこで、カギとなるのがAIの考え方だという。「これまでの生活者向けのAIは2種類あった。1つは、Amazon Alexaなど『認識するタイプ』のAI。これは、物理的な操作から音声でのコントロールという手段の変化に過ぎなかった。もう1つは、自身の健康状態などについて、最適解を出すために分析・診断する『考えるタイプ』のAIだ。今後は、別々に展開されていたこれらの機能を両方満たすプロダクトが期待される。わかりやすい例は最新のエアコンだ。センサーで室内環境を把握し、勝手に温度を変えてくれる。これは、インプットとアウトプットを両方兼ね備えた製品例だと言える」(吉田)

CES2019に見る「スマート化からAI化」の変化 ―IoTNEWS主催セミナー 吉田健太郎氏講演
「認識するAI」と「考えるAI」のインタラクションが重要に

しかし、「モノが勝手に何かをしてくれる」とはどのような世界観だろうか。吉田は、「たとえば、来年発売を目指すアイシンのパーソナルモビリティには3D-LiDARが搭載され、地表の状態を把握し、転倒を防止する機能が付く。もし、こうした機能があたりまえになると、ヒトは自転車に乗っていると、『なんでこの自転車は段差を見つけてくれないんだ』と違和感を感じるようになるだろう」と説明した。

こうした「機械が勝手にやってくれる」機能は、停滞気味のスマートホームで特に期待されるという。

例として、初出展の積水ハウスが提案していた、居住者の異常を検知し、救急連絡等を自動で行う「PLATFORM HOUSE」を紹介。また、この「PLATFORM HOUSE」で重要な点として、「この際に救急隊員が家に入る時には、スマートキーと連携している必要がある。これまでスマートキーは利便性の観点のみから議論されていたが、こうしたセキュリティのスマートホームを考えていく視点が必要かもしれない」と述べ、スマートホームにおいて新しい視点から考えていく必要性を指摘した。

最後に吉田は、「私は、今回のCESから『AI化』の潮流を見た。『AI化』とはデータとファンクション(機能)をAIが繋ぐことで、生活者に新体験をもたらすことだ。こうしたAI時代を勝ち抜くために、製品やサービスを提供する側は、技術よりも価値を先に考えないといけない。同時に、カギとなるのはプラットフォーム化(標準化)だ。クアルコムが提供するスマートフォンのチップのようなリファレンスモデルは、家電やコンシューマ製品の領域ではほとんど存在していない。『どんどん真似してください』という標準化のアプローチが大事だ。そうでなければ、一つの技術を深掘りしている間に他のさまざまな技術が進化していって、乗り遅れることになりかねない。どの分野のどの企業がそうしたリファレンスモデルを提示してくるのか、今後に期待したい」と述べ、講演を締めくくった。