NTTグループなど、準天頂衛星みちびき対応ドローンとAI技術を活用したスマート営農ソリューションの実証実験を開始

近年、就農人口の減少や地球温暖化に伴う気候変動により、農作物生産の被害が発生している。特に年々進む地球温暖化は、熟練農業従事者が有する施肥タイミングなどの経験則が通用しないケースや、従来その土地ではあまり目立たなかった病害虫の増加など、今までとは異なった課題を引き起こすことが想定されている。

NTTグループ(※1)、ふくしま未来農業協同組合、株式会社エンルート、日本農薬株式会社は、準天頂衛星みちびきに対応したドローン(以下、みちびき対応ドローン)やNTTグループのAI技術を活用したデータドリブンなスマート営農ソリューションの実証実験を2019年4月~2021年3月まで行う。

同実証実験は、福島県南相馬市原町区鶴谷地区にて、福島第一原発事故に伴う避難指示の解除後初めての稲作を2018年に再開した株式会社アグリ鶴谷の農場で、福島県の水稲オリジナル品種「天のつぶ」を対象に、収量最大30%増と品質向上を目標に実施される。

また、同実証実験において得られるデータを、営農支援プラットフォーム「あい作(※2)」に蓄積することで、農業従事者と農業共同組合の営農指導員などが離れた場所でもタイムリーに共有・相談できるようになる。

同実証実験の内容は、以下の通りである。

  • スマート生育診断・追肥
    従来の方法では、生育ステージを診断する際は稲の茎を切断して観察するなどの専門知識と人手が必要とされ、さらに地球温暖化の影響などから各生育ステージの推定を経験則だけで行うことが難しくなっている。同実証実験では、みちびき対応ドローンなどで撮影した稲の画像を用い、生育ステージをAI技術で正確に診断し、最も効果的な追肥タイミングを特定する。
  • スマート病害虫診断・対処
    みちびき対応ドローンなどで撮影した広範囲に及ぶ稲の画像をAIで分析し、病害虫・雑草種類の診断や対処に必要な熟練の農業従事者等と同じ判断を可能とする技術の確立を目指す。同AI技術は、NTTグループと日本農薬が共同で、スマートフォン撮影画像の分析で既に実績のある技術を応用して活用する。
  • スマート病害虫予測・対処
    NTT研究所のAI技術「corevo」の「多次元複合データ分析技術(※3)」や「時空間変数オンライン予測技術(※4)」を活用し、みちびき対応ドローンなどで収集した画像・位置情報や水温・地温(サーモグラフィカメラ活用)などと、NTTグループが保有する気象データや地図データなどを組み合わせて分析することによる病害虫発生予測技術を検証する。これにより、病害虫の被害を予測し、農薬散布準備にかかる時間を踏まえて早期に対処する。

また、みちびき対応ドローンに準天頂衛星みちびきの測位を活用することで、電波が山や建物などに反射・回折することで生じるマルチパスなどによる測位誤差の軽減を図る。これにより、撮影における位置情報の精度向上や的確な農薬散布による農薬使用量の削減を目指す。あわせて、ドローン運行管制システム「airpalette UTM」を用い、複数機のみちびき対応ドローンの同時自動運行を行うことで、短時間での追肥や農薬散布を行う手法の確立にも取り組む。

今後は、天のつぶ以外の水稲品種や稲以外の農作物への活用も視野に入れて日本全国に普及させ、準天頂衛星みちびきの活用が可能な東南アジア地域など海外への展開を目指す。

なお、同実証実験の一部は、農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」における実証課題として採択されている。

※1 NTTグループ(五十音順):NTT空間情報株式会社、株式会社NTTデータ、株式会社NTTデータCCS、株式会社NTTドコモ、株式会社クニエ、株式会社ハレックス、日本電信電話株式会社、東日本電信電話株式会社
※2 NTTデータが提供する営農向けプラットフォームサービス。農業従事者が従来紙面で実施していた農業生産における計画・実績管理などの所属組合への提出についてスマートフォンやタブレットへの簡単な入力により省力化する機能や、時間や場所を気にせずに農業従事者と農業協同組合の営農指導員などが連絡・相談ができる機能、生育診断・雑草・病害虫診断などのAIを使った農業従事者支援機能を提供
※3 任意の事象に関連する多次元データを入力として、事象の発生条件の組み合せが類似する条件をクラスタリングする技術。多次元データのスパース性を考慮した効率的なアルゴリズムが特徴
※4 時間と空間に広がる人・モノ・情報に関するデータを対象に、過去における一定期間のデータから時間と空間による影響パターンを学習し、直近の事象の発生時期と場所を予測する技術

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