IoTのデバイス処理をリッチにするエッジコンピューティング

IoTの普及で大量のデータが取得出来るようになり、これらのデータを利用する事で、事象の予測や類似するパターンの検知など、いわゆる機械学習やディープラーニング、統計解析のアルゴリズムを用いたデータ解析が広まっている。

このようなデータ分析では、演算、つまりはコンピューティングの負荷が重く、高性能なサーバーにデータを送り、サーバー上でコンピューティングが行われていた。

また、高性能なサーバーをデータの近くに分散させることは、コスト面ならびに運用面から難しいため、特定の場所にサーバーを集約し、インターネットを経由してサーバーに各データを送る、といったクラウドサーバーが主流となっていた。

これは、クラウド上でコンピューティングを行うため、クラウドコンピューティングと呼ばれている。

しかし、IoTやAIの加速度的な普及により、例えば動画や画像などの容量の大きなデータや大量のセンサーから同時多発的に発生するデータなど、インターネットを経由して送られるデータ量は非常に大きくまた多くなり、通信コストは増加している。

通信コスト以外にも課題はあり、インターネット回線にトラブルが生じた場合は、サーバーとデータのやり取りが出来ない、また、リアルタイム(即時性)性が求められるようなアプリケーションでは、インターネットの通信状況により、その担保が難しい。

こういった課題に対して、データがインターネットを経由せず、データの近くでコンピューティングをリアルタイムに行う、エッジコンピューティングが解決策として考えられている。最近のハードウェア、特にマルチメニーコアやGPUならびにFPGA、およびアルゴリズムの進歩に伴い、IoT市場でも利用されはじめている。

エッジコンピューティングの一例をご紹介

エコモット、NVIDIA製GPU搭載エッジAIカメラ「MRM-900」を発売

エコモットが開発したMRM-900は、画像解析やフルハイビジョン動画のリアルタイムエンコードが可能なエッジAIカメラである。

特徴としては、1.動画データのリアルタイムエンコード、2.カメラ上で動画データのデータ解析(アノテーションや、特徴量検出といった、いわゆる前処理まで)を実施できる事である。

つまり、カメラ側で高度にエンコードを行う事で、サーバーに送信するデータ量を軽減し、通信コストの低減が可能になる。また、カメラ側でデータの前処理を実施する事で、サーバー側は解析結果の判断(決定過程)を行うだけでよい。

この他にも、耐環境性も考慮されており、また、後述するNVIDIA製のチップを採用する事で、高性能ながら低消費電力が実現され、環境の厳しい屋外でも利用可能である。

これらの特徴から、従来のクラウドコンピューティング型と比べて、ボトルネックである解析にかかるクラウド利用コスト、通信コストが削減され、監視・検品業務等の省人化・省コスト化につながり、幅広い分野での利用拡大が期待される。

NVIDIA、AIコンピューター「Jetson Nano」を発表

Jetsonシリーズは、GPU最大手であるNVIDIAが提供する、CPU、GPU、のほかDRAMやストレージを備えたSystem-on-Module(以下、SoM)である。

Jetson Nanoは、当該シリーズではエントリーレベルとなるが、472 GFLOPSの演算性能を持ちつつ、消費電力は5ワットとなり、電力効率は非常に高い。価格もJetson Nano開発者キットは99ドルで提供開始しており、Jetson Nanoモジュールは129ドルと安価となる。

また、ソフトウェア面では、Jetpack SDK でサポートされBSPならびにLinuxがポーティングされている。その他にもディープラーニングなどのライブラリや深度推定、経路計画などのタスクをGPUで最適に実行するためのIP開発も行っている。

開発者向けのコミニティやサポートも用意されており、開発者は足回りを気にせずアプリケーションの開発に専念できる。

コネクシオ、AI連携を想定したエッジコンピューティング・ゲートウェイ

コネクシオ株式会社は、海外でも利用可能なAI連携を想定した「エッジコンピューティング・ゲートウェイ CONEXIOBlackBear」を開発した。

1.0GHzのARM系CPUを4コア搭載し、さらにGPUを搭載する事で、画像認識や予知保全などを当該ゲートウェイ内でリアルタイムに演算できる。これにより、画像処理やデータ分析をクラウドにデータを渡す事なく、当該デートウェイ上でリアルタイムに演算することができる。

この他にも、エッジコンピューティング・ゲートウェイの開発は活発になっており、沖電気工業やマクニカなども提供を開始している。

エッジコンピューティングの今後

これらのように、IoTの世界でもエッジコンピューティングが可能なデバイスは市場に出てきている。また足元を見たときに、Jetsonのような、開発者視点においてユーザーフレンドリーかつ安価な環境も用意されており、エッジコンピューティング可能なデバイス開発は今後も活発になっていくだろう。

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