オープンデータを活用したサービス事例

スマートフォン、IoTなどの普及で膨大なビッグデータが集まる時代に突入してきた。

データを効果的に活用できれば、大きな経済効果や社会課題の解決ができると考えられる。一方、どこまでをオープンにし、どのように管理していくのかなど、課題は多い。

こうした中アメリカでは他の国に先駆け、2009年に「オープンガバメント」を推進し、国の様々な情報をオープンに入手できる「Date.gov」を立ち上げた。

国のデータをオープンにすることで、市民に政治活動の透明性を理解してもらうとともに、データを利活用して新しいビジネスへの展開や各地域の課題解決など、様々な二次利用に活用することができる。

アメリカでのオープンガバメントを機に、各国もデータのオープンと利活用に着目するようになり、日本でも東日本大震災をきっかけに、公共データの集約、活用、提供といったことの重要性がより高まった。

そこで今回は総務省が発表している「オープンデータ活用事例集」をもとに、オープンデータを活用した緊急事態時に活用できるアプリケーションを紹介したい。

交通事故予測アプリで見えてきたデータ活用の課題

まずは民間企業と自治体が保有するデータを組み合わせて開発したアプリの紹介をする。

NTT西日本、NEC、高松市が協力し、高松市における人口あたりの交通事故発生件数及び交通事故死傷者数の削減という目標を達成するため、危険箇所に入ったことを運転者に音声で知らせ、注意を促す交通事故予測アプリを開発した。

このアプリで使用しているデータは、NTT西日本香川支店の社用車のドライブレコーダーで記録した、急ブレーキや急ハ ンドルなどの「ヒヤリハット」データ約2万件。香川県警が保存している過去5年分の交通事故データ。高松市の教育・福祉施設の場所やイベント情報などのオープンデータの3つだ。

交通事故予測アプリはこれらのデータをもとにして、高松市内を125メートル四方のエリアに分け、エリアごとに危険度を4段階で予測する。

オープンデータを活用し、緊急事態時に活用できるアプリ事例
NTT西日本 New Releaseより

運転している自動車が危険度の非常に高いエリアに入ると、アプリはピンポーンというチャイムを鳴らした後、男性の声で「平日この時間、周辺に極めて事故が多発しています。特に運転にご注意ください」と警告を発する。

危険度が中程度のエリアでは、同じメッセージが女性の声で伝えられ、運転者は今いる場所の危険度レベルを簡単に知ることができる。危険度があまり高くなく注意した方がよいレベルのエリアでは、「ピピッ」という機械音で知らせてくれる。

行事やイベントが行われている場所に近づいた際にも、アプリは注意を促すようメッセージを運転者に音声で伝える。

このアプリを活用してドライバーへの有用性などの検証を行うため、2019年1月〜3月まで実証事業を行なった。

ドライブレコーダーで記録した動画や、RPAツールによって取り出した静止画像は利用価値が高く、この実証実験以外からの利用要望もあるということだが、実証事業を行なった結果浮かび上がってきた課題は、人物やナンバープレートなどの個人を識別可能な状態でオープンデータ化してしまうと、プライバシー侵害の問題となる可能性があるため、画像の匿名加工が必要であるという点だ。

画像に対して顔やナンバープレートを認識し、匿名加工する技術やツールは存在しているが、そのコストを誰が負担するのかという点で調整がついていないのだという。

また、アプリの広域展開を図るためにはドライブレコーダの仕様が大きな障害となっている。現状はメーカーによって仕様が異なり、SDカードに入っている動画のフォーマットは独自形式で、編集するためにはそれぞれ特別のツールが必要である。

急ブレーキや急ハンドルが発生した際の場所などは表形式データで記録されるが、これについてもフォーマットは標準化されていない。

NTT西日本香川支店では、福祉関係の事業者やNTTドコモ、STNet、NTT西日本のグループ会社などにドライブレコーダでの「ヒヤリハット」データの収集を働きかけたいという意向であるが、データが標準化されていない現状では、要因分析前のデータクレンジングに膨大なコストがかかるため、すぐには踏み出せない状況だという。

AED設置施設のデータを活用

次に紹介するのは、心肺停止発生現場に気づいた人が、迅速に助けを要請できるアプリだ。

日本では1日あたり約200人が心停止によって突然死している。特に病院外で心停止が発生した場合には、迅速な救命処置ができず、約9割が死亡しており、その数は年間70,000人以上にもなる。

心停止では1分ごとに約7%〜10%ずつ救命率が低下していくと言われており、できるだけ早く心肺蘇生とAEDによる除細動の処置を行う必要がある。しかし、日本における救急車到着平均時間は約8.6分と長く、救急現場でAEDが使用できたケースは約5%しかない。

そこでCoaidoは、119番通報をしながら周囲にSOSを発信できる緊急情報共有アプリ「Coaido119」を開発した。

オープンデータを活用し、緊急事態時に活用できるアプリ事例
Coaido119 HPより

このアプリには、自治体のAED設置施設に関するオープンデータを利用している。

事前登録した医療有資格者や救命講習受講者、AED設置者等に情報が届き、救急車到着までの約10分間の救命ボランティアを要請できるというものだ。心停止発生現場での迅速なAED使用が可能となるため、救命率の向上が期待できる。

9月にはAED設置施設をオープンデータとして公開している160自治体に広域展開した。

洪水予測から保険の提案まで

最後はアメリカの事例だ。住民自らが洪水リスクの把握とマネジメントができるアプリ、「Beyond Floods」を、Syndesteというフロリダ州の保険技術会社が開発した。

Beyond Floodsは、米国勢調査局、米海洋大気庁、自治体をはじめとする複数の政府機関がオープンデータとして公開している洪水リスクに関わる多様なデータを利用して、SyndesteがCARTOのプラットフォーム上に構築したものだ。

CARTOは、位置に基づく様々なロケーション・インテリジェンス・アプリケーションを開発するためのプラットフォームである。

Beyond Floodsは、3兆にも及ぶ標高データポイント、高精度なLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)51データなど25種類のデータと、過去の300万件以上の洪水被害に関するデータを分析し、個々の不動産物件に対して洪水予測スコアを割り当てる。これまでに評価した物件数は1億4,000万件に達する。

オープンデータを活用し、緊急事態時に活用できるアプリ事例
Beyond Floods HPより

Beyond Floodsの洪水予測スコアは、洪水危険度の高い地域を特定する精度において、米連邦緊急事態管理(Federal Emergency Management Agency、FEMA)の氾濫原マップより2倍も正確である。

政府は洪水情報を住民が利用できるよう長年努めてきたが、多くの情報は複雑で、混乱を招くことも少なくなかった。Beyond Floodsは一連のオープンデー タを利用して、直感的で簡潔な洪水予測スコアにまとめ、住民が容易に理解できるようにした。

さらにBeyond Floodsは、オープンデータなど公に入手可能なデータに基づいて、正確な洪水保険料の推定値も提供している。Beyond Floodsは、米国の2,300以上の郡で利用することができ、米国人口の95%以上をカバーしているという。

今回は緊急時におけるアプリを紹介したが、「オープンデータ活用事例集」では他にも観光向けアプリやバリアフリー情報共有アプリなどの事例が紹介されている。

海外の事例では、患者と臨床実験をマッチングアプリや、犯罪発生率や周囲の学校の質などで地域の価値を判定するアプリ、食品バーコードで栄養価を調べるアプリなど、ユニークな発想でオープンデータの活用を行なっている事例を紹介している。

このような事例をもとに、これからも増え続けていくであろう様々なオープンデータを活用して、新たな価値創造をするための参考にしていただきたい。

(引用元:総務省 オープンデータ活用事例集)

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