NEC、NTT、NTTコム、富士通、日立、世界初の広域ネットワークで安定した通信環境を提供する SDNの基盤技術を確立・検証を発表

NEC、NTT、NTTコミュニケーションズ、富士通、日立は、広域ネットワークインフラの総合的なSDN化を目指す世界初の研究開発プロジェクト「Open Innovation over Network Platform」を、総務省の「ネットワーク仮想化技術の研究開発」の委託研究として、2013年6月から5社共同で活動してきたが、今回、アプリケーションが必要とする品質や利用状況に応じて、広域ネットワーク上の資源を動的に確保するSDNの基盤技術を世界で初めて確立し、実際の広域な環境で検証を行ったことを発表した。

この技術により、複数の通信事業者やサービス・プラットフォーム事業者にまたがるマルチレイヤ・マルチドメインのネットワークの上に、様々なアプリケーションの品質要件を満たす広域な仮想ネットワークをオンデマンドに構築したり、ユーザの利用状況の変化(アプリケーションの変更、利用者増加など)に対しても、動的に資源を用意することで品質劣化を防止する安定したネットワーク環境の提供が可能になるという。

 

1.背景

昨今、ネットワークで利用されるデバイスやアプリケーションは多様化し、同時利用可能な帯域、制御の遅延、安全性・信頼性などの異なる品質要件のすべてを、ベストエフォート型の同一ネットワークで実現することは困難だ。このため、モバイルネットワークやインターネットなど広域ネットワーク上にある資源を、アプリケーションの要求品質や利用状況に応じて動的に配備・利用できる技術が求められている。

現在、企業やデータセンターでは、資源の動的配備を行うため、物理ネットワークを論理的に多重化する仮想ネットワークが利用されているが、複数の通信事業者やサービス・プラットフォーム事業者にまたがるマルチレイヤ・マルチドメインの広域ネットワークでは、仮想ネットワークが実現されていない。

今回開発した技術は、様々なアプリケーションの品質要件を満たす広域な仮想ネットワークのオンデマンドな構築や、利用状況に応じて品質劣化を防止する構成変更を可能とし、これからのスマート社会の実現に必須となる様々な社会インフラサービス実現の基盤となるものだという。

 

2.本プロジェクトの成果

1) 共通制御フレームワーク技術

共通制御フレームワーク技術
共通制御フレームワーク技術

本技術は、無線・光・パケットなどで構成されるマルチレイヤと運用主体の異なる区分(ドメイン)にまたがるマルチドメインで構成される複雑なネットワーク構成を構造化し、広域な仮想ネットワークの統合的かつ迅速な構築・運用を実現。
マルチレイヤ・マルチドメインのネットワークで構成される仮想ネットワークの制御構造をデータベース化し、本データベースにより仮想ネットワークの可視化や構築・制御の様々な処理内容を、物理ネットワークを構成する機器に対する処理に自動変換し実行。
これにより、広域な仮想ネットワーク環境において、転送データのリアルタイム解析によるセキュリティ強化、トラヒック分散によるスループット向上、冗長化による信頼性向上、などの付加価値機能をアプリケーションごとに実現できる。

2)マルチレイヤ・マルチドメイン統合制御技術

マルチレイヤ・マルチドメイン制御技術
マルチレイヤ・マルチドメイン制御技術

本技術は、1.の仮想ネットワークの制御構造データベースを用いて、物理・仮想ネットワークの各資源におけるレイヤごと・ドメインごとの対応関係を格納するリソースプールを構築。これを用いて、レイヤ間・ドメイン間にまたがるネットワーク資源の動的制御を可能とし、広域な仮想ネットワークの効率的利用や安定稼働を実現。
具体的には、マルチレイヤネットワークのリソース管理技術、多重障害発生時の障害波及予測・復旧技術、SDNにおけるOAM機能などの仮想ネットワーク全体のネットワーク品質確認技術となる。
これらの技術により、従来レイヤやドメインごとに行う必要のあったネットワーク制御を、場所や構成など物理的な制約によらず、広域ネットワークの資源を組み合わせて全体で行えるようになる。これにより、広域な仮想ネットワーク利用時の効率性、可用性、利便性が向上。
物理ネットワーク資源を直接持たないサービス・プラットフォーム事業者でも、通信内容に応じたリアルタイムな通信経路制御、柔軟なネットワーク切り替えによるトラヒック分散、障害発生時に迂回可能な回線冗長化など、ソフトウェア制御で付加価値の高い独自機能を提供できるようになる。

3)仮想化対応SDNノード技術

3)仮想化対応 SDN ノード技術

本技術は、マルチレイヤ・マルチドメイン統合制御によって、通信事業者のネットワークの構成や品質を柔軟に変更可能とする通信装置(ノード)を実現。拠点内ネットワークと拠点間ネットワークで構成される通信事業者ネットワークを対象とし、「トンネル自動設定処理」、と「パケットアウェア光パス処理」の2つの技術で構成される。
「トンネル自動設定処理」は、拠点内ネットワーク向け、および拠点間ネットワークと拠点内ネットワークの接続部分向けに、仮想ネットワークを構成するためのトンネルプロトコルをSDNソフトウェアスイッチ上で自動設定する技術。本技術は、これまで開発してきた高性能オープンソースSDNソフトウェアスイッチLagopusを拡張することで実現した。
「パケットアウェア光パス処理」は、拠点間ネットワーク向けに、ネットワークの上位レイヤであるパケットトランスポートのリソース状況に基づいて、下位レイヤで様々な帯域を持つ光コアネットワークの光パスを複数提供する技術。また、本技術の制御は、パケットレイヤと同様に制御できるOpenFlowプロトコル拡張方式を提案・標準化した。
これらの技術により、従来ネットワークごとに必要だったノードを、光コアネットワークとパケットトランスポート、IPネットワークとトンネルプロトコルを各1台のノード(マルチレイヤノード)で実現できるため、ノード台数の削減と資源の効率利用を実現し、設備コスト(CAPEX)の削減が可能となった。
また、トンネルプロトコルの自動設定や、光パスの集中自動制御を実現し、運用コスト(OPEX)の削減も可能となった。

 

3.本プロジェクトにおける各社の分担

NEC:共通制御フレームワーク技術(特長1)、マルチレイヤネットワークのリソース管理技術(無線領域)(特長2)
NTT:高性能SDNソフトウェアスイッチ技術、トンネル自動設定処理技術(特長3)
NTTコミュニケーションズ:仮想ネットワーク全体のネットワーク品質確認技術(特長2)
富士通:マルチレイヤネットワークのリソース管理技術(光領域)(特長2)、パケットアウェア光パス処理技術(特長3)
日立:多重障害発生時の障害波及予測・復旧技術(特長2)

 

4.今後の予定と展望

今後各社は、本プロジェクトで研究開発した広域SDNに関する技術成果の実用化を目指すとのこと。また、今後発展が予想されているIoTによる様々なサービスを実現する基盤技術としての活用や、第5世代ネットワーク(5G)の実現に向けた要素技術としての活用を検討していく。
なお、本プロジェクトの成果は、2016年3月23日に秋葉原UDXにて開催される「O3シンポジウム2016」において紹介する予定とのこと。

【関連リンク】
日本電気株式会社
日本電信電話株式会社
NTTコミュニケーションズ株式会社
富士通株式会社
株式会社日立製作所
O3プロジェクトウェブサイト

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