日立、YAMAGATA、KTCがARによるボルト締結管理システムを実用化

1本のボルトのゆるみが事故を招くことがある。そのゆるみの原因の1つが、ボルトの締め付け管理不足と言われている。

ボルトには、規定トルクというものがある。規定トルクとは、ボルトを締め付ける際に必要な力のことを指す。

この規定トルクに従わず、ボルトを強く締めすぎると締め付けられた物やボルトそのものが破損し、結果的にボルトが緩む恐れがある。一方で、ボルトを弱く締めてしまっても、周囲の振動や気温の影響によってボルトが緩む恐れがある。

では、規定トルクに従って、ボルトを締め付ければ良いではないかと考えるが、熟練の作業者であっても、トルクの締め付け不足による緩みを防ぎたいという気持ちが無意識に働き、規定トルクを超えて強めにボルトを締め付ける傾向がある。

そこで、日立製作所(以下、日立)では、以前から、鉄道が走行中、ボルトが緩むことがないように、ボルトの締め付け管理システム「デジタルトルクレンチシステム」を利用してきた。デジタルトルクレンチというのは、レンチ本体に小型の液晶画面が付いている工具で、作業者がボルトを締め付ける際にレンチに掛けている力をセンサーで読み取り、その力を数値化、液晶画面に表示する。

このデジタルトルクレンチを用いた「デジタルトルクレンチシステム」は、作業者がタブレットPC上に表示されたボルトを選択後、連動するデジタルトルクレンチによって締結作業をすることにより、自動的に締結結果の照合と合否判定を行い、その結果を記録するというものだ。

しかしこの方法では、改善すべき点が2点あった。

  1. 作業者がタブレットPC上で作業対象のボルトを選択・指定する手間がかかる
  2. タブレットPC上で指定されたボルトと実際に締結したボルトが一致しているかどうかの確認まではシステムでカバーされていない

このような改善すべき点を是正する取り組みとして、2019年1月11日、日立はYAMAGATA株式会社、京都機械工具株式会社(以下、KTC)と共同でARによるボルト締結管理システムの開発を発表した。

[参考記事] IoTNEWS「日立、YAMAGATA・KTCと共同で鉄道車両向けAR技術活用のボルト締結作業管理システムを開発」

日立、YAMAGATA、KTCがARによるボルト締結管理システムの実用化を成功
2019年1月11日発表、ボルト締結管理システム説明図

ボルト締結管理システムとはどのようなものか。

作業者がヘッドマウント型スマート端末を装着すると、そのディスプレイには、締結すべきボルト上にボルトの3Dモデル(AR)が表示される。そして、事前に入力した3Dモデルに付随する設計データを元に作業者を誘導する。AR技術を活用することで、改善すべき2点の課題が解決され、ヘッドマウント型スマート端末のディスプレイを通した視界上で効率的に作業を実施することが可能となった。

また、ヘッドマウント型スマート端末は、カメラが付いている。これにより作業者の締結作業を常時監視し、デジタルトルクレンチシステムとの連携により、ボルトの締結が不十分だった場合は、再度作業を行うよう表示することもできるようになっている。

この2019年1月11日に発表されたARによるボルト締結管理システムは日立の鉄道車両製造において現場実証が重ねられ、実用化が目指されてきた。

そして、2020年3月16日、日立はYAMAGATA、KTCとともに、ARによる鉄道車両向けボルト締結作業管理システムの実用化を発表した。

日立、YAMAGATA、KTCがARによるボルト締結管理システムの実用化を成功
2020年3月16日発表、AR技術を利用したシステムにおけるボルト締結作業の様子

AR技術を駆使したシステムの運用には、三次元設計データやコンピュータグラフィックスなどが必要とされているが、同システムはボルトの位置座標と締結力からなる簡単な表形式データを活用することで利用できる。

さらに、熟練者の作業を記録したデータをAR作業指示データとして再利用することができ、製造のみならず、メンテナンス、修繕の現場へも容易に対応することができる。

今後、日立は鉄道車両の製造およびメンテナンス作業などにおいて、今回実用化したシステムの適用を段階的に進め、作業効率と品質のさらなる向上をめざすとともに、熟練作業員不足の課題解消など適用範囲を拡大していく。

Previous

三菱電機、ガス・水道メーターとつながるセンサーネットワーク向け電池駆動無線端末「BLEnDer ICE」を開発

NEC、スマートファクトリー実現に向けて工場の生産計画立案に量子コンピュータの適用技術を導入

Next