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NECがミリ波周波数帯に分散MIMOを適用、実際のオフィス環境下で3倍の同時接続数・伝送容量を実現

サブ6周波数帯とミリ波周波数帯を用いる5Gでは、4Gと比較して10倍以上の大容量・高スループット、低遅延、多数接続などのネットワーク性能とそれを活かしたサービスが期待されており、2021年より国内で導入が始まっている。

サブ6周波数帯ではミリ波周波数帯と比べ使用できる周波数帯域が狭いため、大容量化のためにMassive-MIMO(※1)を導入し同時接続端末数の拡大が図られている。同様に、ミリ波周波数帯についても、広帯域伝送にMassive-MIMOを適用することで更なる大容量化と同時多数接続が可能であり、屋内やスタジアム観客席等の高い端末密度の中、各端末が高い伝送容量を必要とする用途に有効と考えられている。

NECがミリ波周波数帯に分散MIMOを適用、実際のオフィス環境下で3倍の同時接続数・伝送容量を実現
ミリ波帯広帯域伝送に空間多重を組合せることで更なる容量拡大
しかし、ミリ波周波数帯では波長が短く反射や遮蔽による減衰が大きい等の電波の特性のため、遮蔽物等による影響を受けやすいとともに、空間多重が行い難く、Massive-MIMOを適用する際の課題となっている。

日本電気株式会社(以下、NEC)は、これまでサブ6周波数帯でMassive-MIMOを製品化し、ミリ波周波数帯で分散配置したアンテナ素子間のデジタル協調技術を開発し屋内モバイル通信の課題である伝搬路の遮蔽や回折などを解決する検証を行ってきた。

このほど、実際のオフィス環境において、ミリ波周波数帯の28GHzを用いた分散MIMO(※2)による同時多数端末接続と伝送容量向上を実証し、分散MIMOを用いない場合に比べて遮蔽物に対する劣化も少なく約3倍の同時接続数・伝送容量を達成した。

具体的には、NEC玉川事業場のオフィス実環境において複数端末同時接続実験を行った。実証装置は、1台の基地局が8か所に分散設置したアンテナモジュール、アンテナを制御するデジタルコントロールユニット、アプリケーションレイヤーへの変換・接続を行うベースバンド処理装置などで構成されている。

また、各アンテナから放射する電波の位相・振幅の重み係数を決定するうえで重要となるアップリンクとダウンリンクの相補性・相関性をたかめるために、東京工業大学 岡田健一教授と共同で開発したCMOS双方向トランシーバICを用い、環境や経時的変化に対する位相・振幅校正状態と空間分解能の安定性を図っている。

実験はおよそ18m×8mのエリアにおける各々の机上に、最大6台の端末を空間多重技術により1台の基地局に同時接続し、うち1台の端末を各机位置に移動させて端末の変調精度を測定した。端末移動に際し、各々6台の端末から発射されるアップリンク信号を分散配置した8台の基地局アンテナでそれぞれ受信しデジタル信号処理することで伝搬路を推定し6台の端末に直交独立するダウンリンク信号を発射した。

それぞれの端末に向けたダウンリンク信号同士の干渉を抑圧することで、オフィス全域全端末で導通可能な変調精度が得られることを確認した。

下図は、同時接続端末数と全体スループットの総和・端末位置に関する平均値(計算値)を示している。同じ帯域幅の極小セル基地局(フェムト基地局)相当(※3)に比べ、全体スループット、最大同時接続数で約3倍(極小セル基地局の場合は2台で飽和に対し)の容量を得た。

NECがミリ波周波数帯に分散MIMOを適用、実際のオフィス環境下で3倍の同時接続数・伝送容量を実現
同時接続端末数と全体スループット、総和・平均値

※1 Massive-MIMO:MIMO(Multipul Input Multipul Output)を高度化した一技術であり、多数の独立したトランシーバの自由度を活かし、空間多重と無線伝搬路の品質安定性を同時に向上する技術。5Gにおいては4Gの直交周波数多重・時分割多重に加え、空間多重による更なる周波数利用効率向上を目指して開発・導入された。

※2 分散MIMO(Distributed-MIMO):アレーアンテナの各アンテナ素子を搬送波波長に比べて大きく離隔配置することで、予め独立な伝搬パスを確保して空間の自由度を最大限に活かす技術。Massive-MIMOの一実施形態。Massive-MIMOには各アンテナ素子配置方法に関して、既にサブ6周波数帯で実用化されている素子間隔をほぼ1/2波長程度と近接一体化配置したCollocated-MIMOと、同報告により離隔配置したDistributed-MIMOがある。前者は方向操舵可能な平面波ビーム生成が可能であるが空間多重度においては反射や回折等による独立なパス数に依存し、後者は方向操舵可能な平面波ビームは生成できないが予め独立なパスを有し空間多重度を最大化可能な特徴がある。

※3 極小セル基地局(フェムト基地局):屋内などでの使用を想定した超小セル小型基地局。同実験においては2台の無相関の極小セル基地局が設置された状態を想定し、2つのアンテナから発射するパイロット信号を同一周波数・同一タイミング、ユーザデータを無相関とした。両アンテナからの電波が受信可能なエリアにおいてパイロット信号の混信が発生し、エリア内に同時に存在する端末数に比例したシステムスループットが得られない。