Verizon・AWS・Qualcomm・Kaspersky、それぞれの視点から見る5Gの先にある未来 ーMWCバルセロナ2021レポート

2021年6月28日から7月1日、通信業界のイベント「MWC(Mobile World Congress)Barcelona 2021」が開催された。今年は現地バルセロナでのオフライン会場と、オンラインでのハイブリッド開催であった。

本稿では、1日目に行われた基調講演「FUTURE IS DIGITAL」について紹介する。この講演では、Verizon、AWS、Qualcomm、Kasperskyからそれぞれゲストを迎え、今後5Gが浸透していく中での各企業の取り組みについて紹介された。

ロボティクスとドローンに活用される5G

まずはVerizonのCEO&ChairmanのHans Vestberg氏とCSOのRima Qureshi氏より、5GとMEC(Multi-access Edge Computing)の可能性について触れられた。

Verizonは昨年、米国連邦通信委員会(FCC)によって行われた、5Gネットワ​​ークを構築する際に役立つミッドバンド(3.5GHz帯)のライセンスオークションにて、最も多くのライセンスを取得した。これについてHans Vestberg氏は、「Verizonはミッドバンドの保有を2倍以上にし、MECの構築も加速させる。」と話した。

そしてRima Qureshi氏は、Verizonが取り組んでいる5Gのユースケースとして「ロボティクス」と「ドローン」を挙げた。バルセロナの会場には実際に現在開発している2台のロボットを登場させた。

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CSO Rima Qureshi氏と、4本の足がついた5Gに因んで名付けられた「Gigi」(右)と、MECに因んで名付けられた「Mechael」(左)が登壇した。

そして現在のロボット活用の課題について、「複数のロボットが稼働する中、ある問題が起きたときに相互に通信ができないことだ。」とRima Qureshi氏は述べた。そこでVerizonでは、ロボット同士の接続や周囲の環境把握のための取り組みを行っていると説明した。

まず、5GとMECを活用してセンサー、カメラ、在庫リスト、作業手順など、様々な情報をデジタル空間上に表現し、ロボット同士の接続、周囲の環境把握を行う。また、そうした制御をロボットからエッジにシフトすることで、ロボット自体は軽く、安く、エネルギー効率の良いものに注力することができるという。

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ロボットの前にダンボールを投げると(左図)、ロボットは検知し止まっている(右図)。

ドローンに関しても、現在ではデータをダウンロードするために頻繁に着陸しなければならない点を課題に挙げた。そこで5GとMECを活用してインターネットに接続することで、新たな活用ができるというのだ。

例えば自然災害が起きた際、オペレーターが災害地まで行き、ドローンは人の目には見えない場所の情報収集をするツールとして活用するのが一般的だ。しかしVerizonのネットワークを活用すれば、オペレーターを必要とせずに数百マイル離れた場所から操作することができるという。

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ドローンを遠隔地から操縦している様子。

今後は、遠隔医療やロジスティクス、クリーンエネルギーなどの分野で5Gを活用していくとした。

AWS×通信事業でスケールする世界

続いてAWS CEOのAdam Selipsky氏より、AWSと通信業界の関係性について、AWSとのパートナーシップを発表したスイスの通信事業者SwisscomのCEO、Urs Schaeppi氏を交えて語られた。

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AWS CEO Adam Selipsky氏(左)と、Swisscom CEO Urs Schaeppi氏(右)

まずAdam Selipsky氏は、「クラウドモデルを通信事業者に提供することにより、通信事業者はモデルを真っ向から変えることができる。」と述べた。つまり通信事業者が新たなサービスを展開する上で、AWSは良いパートナーになるということだ。

今回はその代表として、パートナーシップを発表したSwisscomの事例が挙げられた。

Swisscomは、2022年後半にオープン予定のAWS欧州 (チューリッヒ) リージョンを活用し、エンタープライズリソースプランニング、運用サポートシステム(OSS)、ビジネスサポートシステム(BSS)、分析、コンタクトセンター、などのコアアプリケーションをAWSに移行するとしている。

そしてAdam Selipsky氏は、同様の取り組みを、Telefonica、Verizon、Vodafone、KDDI、SK Telecom、Bell Cana​​daなど、世界中の通信事業者と進めており、5GにAWSが組み込まれていくのだと述べた。

また、ドイツの通信事業者であるTelefonica Germanyとの取り組みでは、AWSのフルマネージドサービス「AWS Outposts」を活用し、クラウドに5Gコアネットワークを構築している。

さらにAdam Selipsky氏は、AWSの強みとして、Amdocs、Ericsson、Nokia、Samsungなどのインターネットサービスプロバイダー(ISP)との提携を挙げ、今後も通信事業者が必要とするISPとの連携を推進していくとした。

工場利用も見据えた性能向上

Qualcommのセッションでは、President&CEO-ElectであるCristiano Amon氏が、Qualcommの新たなサービスや取り組みについて紹介した。

まずCristiano Amon氏は冒頭で、「アクセンチュアの予測では、5GによるGDPの成長は、2025年までに数兆ドル規模で、中国では350万人分の雇用を生み出されると推定されている。」と、5Gの可能性を示した。

そうした中Qualcommは、今年2月に10Gビット/秒の5Gモデム「Snapdragon X65 5G modem-RF」発表した。

そして講演の中で、「Snapdragon X65 5G modem-RF」のダウンリンクとアップリンクの速度をデモで表し、ビデオ会議やファイル共有などに有効だとした。

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下りは最大10Gbpsを記録しており(左)、5GのSub6を活用したアップリンクのデモでは、790Mbpsを示している(右)。

また今回、スモールセル向け5G RANプラットフォームである、「Qualcomm 5G RAN Platform for Small Cells (FSM200xx)」 を新たに発表した。

この新たなプラットフォームでは、最大8Gbpsのデータ速度を提供し、ミリ波と200MHzのキャリア帯域幅のサポートする。

また、最大4Gbpsのデータ速度を提供するFDDおよびTDD全体で、200MHzのサブ6GHzスペクトルのスペクトル集約をサポートするようにも設計されている。

さらに、n259(41 GHz帯)、n258(26 GHz帯)などのミリ波や、FDD帯域を含む商用グローバルミリ波、サブ6 GHz帯域もサポートしており、RFに機能強化をもたらす。

加えて、3GPPのリリース16のサポートにより、機器やマシンの制御に不可欠な拡張超高信頼性低遅延通信である、Enhanced Ultra-Reliable Low-Latency Communication(eURLLC)などの機能が強化されており、工場への移行を促進するように設計されているという。

そして、今回の講演で新たに「Snapdragon 888」の後継モバイルプロセッサである「Snapdragon 888 Plus 5G」を発表した。

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発表された「Snapdragon 888 Plus 5G」

「Snapdragon 888 Plus 5G」の最大動作クロックは3.0GHzで、AIパフォーマンスは20%以上の改善が行われている。これについてCristiano Amon氏は、「AIが強化されたことにより、ゲーム、ストリーミング、フォトグラフィーなどの性能があがる」とした。

サイバーセキュリティは「イミュニティ(免疫)」へと移行する

最後にITセキュリティベンダーKasperskyのCEO Eugene Kaspersky氏より、サイバーセキュリティについての話がなされた。

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Kaspersky CEO Eugene Kaspersky氏

Eugene Kaspersky氏は、今後テクノロジーがより浸透していく流れの中で懸念される問題は、「サイバー犯罪」「スピアフィッシング」「インフラストラクチャに対する攻撃」の3つだとした。

現在悪意のあるファイルなどのマルウェアは1日3,000,000を超えており、これは1万〜10万人のサイバー犯罪者が作成していることを意味していると述べた。

これらのサイバー犯罪のほとんどは高度でないが、徐々に複雑さを増したマルウェアへと発展しているのだという。また、銀行や企業を標的とするプロのサイバー犯罪集団が何百と存在し、新しいタイプのマルウェアを生み出しているとした。

そしてプロのサイバー犯罪集団の多くが、オフィスネットワークへの攻撃から、産業システムやインフラストラクチャへの攻撃へと徐々に移行していることについてEugene Kaspersky氏は、「オフィスネットワークであれば被害の規模がある程度予測できるが、産業システムやインフラストラクチャへの攻撃がなされた場合の被害規模や額は予測できない可能性があり、地域や国、経済そのものへ影響を与える。」と警鐘を鳴らした。

そうした中での防御の方法は、サイバーセキュリティではあまり効力がなく、今後は「イミュニティ(免疫)」へと移行していく必要があるという。

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セキュリティとイミュニティを表した図。

つまり出来上がったシステムにあとからセキュリティをかけるのではなく、設計の段階でシステムにセキュリティを組み込んで開発するという発想だ。

そのために大元のシステムとは分離させたカーネルシステムを組み込み、インターネットにアクセスできないセキュリティレイヤーを介して通信を行う。これにより、システムの一部が侵害されたとしても、システムの他の部分には影響しない構造を作るという。

今回の基調講演では、通信業界、クラウドサービス、半導体事業、セキュリティサービスというそれぞれの視点から、5Gの先にある世界を見据えた取り組みについて聞くことができた。今後も4社の動向に注目していきたい。