食品業界の変化に対応するデジタル活用 ―Conference X in 広島レポート3

各産業・業界においてDXに先駆的に取り組む企業が登壇し、DXの実践事例を議論する「Conference X in 広島」(株式会社INDUSTRIAL-X主催)がオンラインで開催された。

本稿では、食品業界に起きた変化や、変化に対する対応やデジタル活用について、オタフクソース株式会社、デリカウイング株式会社、株式会社八天堂、三島食品株式会社がディスカッションした内容を紹介する。モデレーターはINDUSTRIAL-X代表取締役社長の八子知礼氏だ。

登壇者
オタフクソース株式会社 代表取締役社長 佐々木孝富氏
デリカウイング株式会社 代表取締役社長 河野充志氏
株式会社八天堂 代表取締役 森光孝雅氏
三島食品株式会社 代表取締役社長 末貞操氏
INDUSTRIAL-X 代表取締役社長 八子知礼氏(モデレーター)

食品業界の市況と対応策

八子氏はまず、新型コロナウィルスの影響を受けたと思われる約1年半での変化や、現在の市況、店舗在庫や仕入れ先との関係性について4社に問いかけた。

リアルで会えないことの障壁

オタフクソース佐々木氏は、「調味料の取引は様々な業態の食品関係者と取引ができている。」とした上で、販売先のひとつでもあるお好み焼き店を始めとする外食産業は厳しい状況だと語った。

また、スーパーをはじめとする企業との商談がウェブ商談に変わったため、メニューの施策や改良がなかなか行えないという影響も出ているという。

生活者に対しても、従来行っていた料理教室や店頭試食が出来ないことで、リアルでのメニュー提案が行えないことが困りごとだとした。

取引先との商談における工夫

ふりかけやレトルトを中心に展開している三島食品は、業務用の販売が売り上げの半分以上を占めていたが、ここ2〜3年で家庭用が上回ってきている。

三島食品末貞氏は、「昨年に関しても業務用の売り上げが伸び悩んだが、家庭用商品でカバーした。」と、以前から伸びていた家庭用商品が補填したのだとした。

一方営業では仕入れ先に訪問が行えないため、自社で制作したプロモーションビデオを商談前に商談先に見てもらったり、試食を事前に配達し、食べてもらいながらウェブ会議を行う、といった工夫をしていると語った。

また、受注入力などの事務作業も一気にテレワークが進み、取引先とのやり取りも8割ほどまでオンラインに移行したことで、省人化が進んだのだという。

トレンドを捉え、短期間で事業をシフトする

一方八天堂は、消費期限が短かいチルド商品を主軸に、駅ナカ中心の展開を行ってきた。

八天堂森光氏は、「昨年の3月〜5月は店舗が閉まってしまい売り上げが立たず、危機的な状況だった。」と振り返った。

そこで、以前から準備をしていた卸やECといった事業にシフトするべく、東京に営業所を設置。東京を中心とした関東圏の営業が活発化し、卸やECの売り上げが伸びたのだという。

また、他企業とアライアンスを組んでPB展開を行ったりと、今まで種まきしていた別事業が一気に開花したと語った。

幅広い品目を活かし、新しい価値を創出する

デリカウイングも八天堂同様に、消費期限が1〜4日と短サイクルのデイリー商品を中心に開発・製造を行っている。主要取引先はコンビニのセブンイレブンだ。

デリカウイング河野氏は、「コンビニは逆風の1年だった。」とし、昨年2月頃から売れるものの傾向が変わったことについて説明した。

テレワークやスライドワークの影響で、デリカウイングの主力商品であったおにぎりやサンドイッチといった朝需要商品が売れず、午前中の売り上げが一気に下がったという。

そこで「巣篭もり」や「プチ贅沢」というキーワードに着目し、スイーツやおつまみ、それに伴うワインを中心としたお酒の販売を進め、売り上げの補完を行った。

また、今後もこうした影響が長引くことを鑑み、広島大学と研究を進めていた冷凍食品の販売を前倒し、急遽テスト販売をセブンイレブンと共に展開したことで、売り上げにプラスさせることができたのだという。

そして河野氏は、「今年に入ってからも緊急事態宣言の影響で、以前であれば行楽に向けて伸びる土日の売り上げが落ちてしまう。」と、新型コロナウィルスの影響を語った。

そこで既存の商品に飽きが来ている消費者向けに、目新しい弁当やスイーツを開発して展開を行っているのだという。

どこかのカテゴリーが落ちても別カテゴリーで補完することができるような、幅広い展開が功を奏したとした。

食品業界にとってのデジタルの意味

4社の話を受け八子氏は、「ビジネスからコンシューマー、店舗から家庭用、生鮮から冷凍と、食品ビジネスの大きなトレンドの変化を感じられる。そして大きな変化に対応するためには、デジタルを活用しなければならなかったのではないか。」と、食品業界にとってのデジタルの意味や、工夫している点について聞いていった。

「デジタルだからこそ」の価値を生み出す

八天堂森光氏は、「手包み・手作り・お手渡しをモットーに掲げてきた。」と、今までは人が関わることでの価値を提供してきたと語った。

しかしそれでは属人的で、ミスの発生や均一化が難しいことなどのデメリットをあげた。そして3年ほど前から機械化を取り入れたり、システムソリューション部設置などのデジタルシフトを行ってきたのだという。

また、運営する飲食店への配膳ロボットの導入など、単に効率化するためだけではなく、エンターテイメントの領域でもデジタルを活用していきたいとした。

デジタルとアナログ、両軸の活用

三島食品は、以前より工場の生産情報システムを独自開発し導入するなど、1997年より「見える化」の取り組みを行っている。

末貞氏は、「見える化をすることにより、人に対する動機付けを行う。」とし、デジタルとアナログを両方活用しながら進めていくと語った。

そして最近の取り組みとしては、赤しその水耕栽培や青のりの養殖事業などで、遠隔管理ができるようデジタル化を進めているという。

多くの人が関わっているからこそ必要なデジタル化

デリカウイングの主なデジタル活用は、製造におけるMRPシステムの構築だ。

デリカウイングでは、完全受注生産かつ労働集約型で製造を行っているため、数年前より取引端末を通じて構築したMRPシステムにより、受注予測や各部門への必要なデータ転送を行っている。

一方、勤怠管理や人事給与のデータは、各部署ごとへの転記など、人手がかかる作業が膨大で、「基幹システムを根本から見直さなければならない。」と河野氏は言う。

その理由として、年間600〜700名の入職があるパートタイマーの半数以上が言葉の通じない外国人留学生であることや、そのデータ連携がベテランのスキルによって成り立っていることから、システムの刷新が必須だと感じているという。

商品開発でのデジタル活用

オタフクソース佐々木氏は、「お好み焼きやたこ焼きのイメージが強い中、どの方向に商品をブラッシュアップしていくべきか、デジタルを商品開発のためのマーケティングに活かしていきたい。」と語った。

また、2,000近い商品の需要予測と在庫計画のデジタル化を促進させ、フードロスの削減や不良在庫を減らすことに寄与したいとした。

「広島」と「食」を起点に広がる想い

そして最後に八子氏は、今後仕掛けていきたい変革とメッセージを4社に聞いた。

デリカウイング河野氏は、「フードロスの問題もあり、冷凍食品の販売を強化していきたい。」とし、広島・中国地方ならではの食品を開発し、全国展開していきたいと述べた。

八天堂森光氏は、広島空港前をはじめとして展開する食のテーマパークに、VRやARなども取り込み、広島観光のひとつとして感動を届けたいと述べた。

オタフクソース佐々木氏は、日本の食文化として広島の食を世界に広げていきたいとした。

三島食品末貞氏は、「良い商品を作ることが前提としてあり、DXやデジタルは顧客に喜んでもらうための手段。」とし、魅力ある食材を活用した今までにない市場を作っていきたいと語った。