デバイス開発者にとって必要なIoTプラットフォームとは ーBraveridge、ノルディック・セミコンダクター インタビュー

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昨今、様々な業界において、IoT構築へ向けたトライアルが行われているが、予想以上の開発期間と開発コストが発生してしまい、本格的な規模での商用化には多くの課題があるとされている。

そうした中、ノルディック・セミコンダクターは、セルラーIoT向け製品「nRF9160」を活用し、パートナー企業であるBraveridgeの「BraveGATE IoTソリューション」と組み合わせることで、IoTシステムの開発から本格的な商用導入までの期間を短縮しているという。

本稿では、BraveGATEの概要や導入メリット、BraveGATEとノルディック製品を組み合わせることで実現できる「IoTの可能性」について、Braveridge 代表取締役社長 小橋 泰成氏(トップ画左)と、ノルディック・セミコンダクター 代表取締役 山崎 光男氏(トップ画右)にお話を伺った。(聞き手:IoTNEWS 小泉耕二)

ハードウェアメーカーだからこそ見えてきた課題

IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): Braveridgeはもともとハードウェアメーカーだったということですが、IoTプラットフォームを作るきっかけはなんだったのでしょうか。

Braveridge 小橋 泰成氏(以下、小橋): 私は10年ほど前からパートナー企業とIoT開発を行っていました。その中で、クラウドやサーバーが関わるIoTデバイス開発では、開発期間が長引くことでその分コストがかさんでしまう、という課題がありました。PoCは行っても本格運用には至らず、量産に行き着けても2~3年の開発が掛かり、「企画の老朽化」がおきるケースが多くありました。

その原因の1つは、一般的なIoTデバイスを開発する際に、「デバイス開発ベンダー」と「サーバー開発ベンダー」「クラウドアプリ開発ベンダー」という、最低でも3社が関わる必要性があることです。

それぞれのベンダーが得意としている領域が異なるため協業が必要でした。しかし実際に新しいデバイス開発を行おうとすると、コミュニケーションが煩雑になり、工程数が増えたり、プロジェクトが複雑化・長期化することがある、という課題に直面してきました。

中でもLTE通信を活用したIoTシステムでは、開発において、デバイス開発とアプリ開発の間にあたるIoTサーバー(LTE通信を司るクラウドサーバー)の開発が長引くことが多いため、開発期間全体が長引いてしまいます。

また、スクラッチでIoTサーバーを作る場合、デバイス側(デバイスと無線ネットワークサーバー)とIoTサーバー、アプリケーション間の3社間で通信をする必要があるのですが、信頼性や安定性を求めようとすると、開発が非常に困難になります。

デバイス開発者にとって必要なIoTプラットフォームとは ーBraveridge、ノルディック・セミコンダクターインタビュー
デバイス開発とアプリ開発の間に必要とされていたIoTサーバーの開発が困難で、開発期間に大幅な時間がかかってしまう。

具体的には、デバイスとIoTサーバーの間で通信する際、不規則なセッションエラーに悩まされたり、不規則にモジュールが再起動したり、地域ごとの基地局の違いによって不規則なエラーが発生する、といった様々な「不規則エラー問題」が発生します。

加えて、通常のLTE通信モジュールは内部がOSとドライバで制御されている為、その発生原因をモニタリングすることができず、原因を特定することができません。

そこで弊社では、クラウドサービスをいちから構築し、ノルディック製のセルラーSiPモジュール「nRF9160」を活用することで、LTE通信に伴うあらゆる不規則エラーや不具合の原因を特定することに成功しました。IoTサーバーの最適化と、nRF9160側の対策を全てライブラリとして組込み込んだのです。

この仕組み全体を「BraveGATE」と呼んでおります。

また、BraveGATEで最も特徴的なのは、デバイス開発とアプリ開発の間にあった、クラウド上の「サーバー機能」を廃し、デバイス側をサーバーにしたことです。これにより、クラウド上には原理的にはサーバー機能がありません。

「アプリケーション側がクライアント」で、「デバイス側がサーバー」という構成になるのです。

一般的なIoTプラットフォームとBraveGATE IoT Systemの違い
一般的なIoTプラットフォームとBraveGATE IoT Systemの違い

こうすることでアプリケーション開発者は、クライアントであるアプリケーションから、デバイス端末(サーバー)にリクエストを送り、そこからデータ返信を貰うだけで通信が完了します。そのため、アプリケーションとBraveGATEとの接続作業は、数日で完了することができます。

この結果、アプリケーション開発に集中することができ、デバイス開発者とのやりとりも中継しているクラウドサーバーを介さず、直接対話しながらの開発を行うことが可能となります。

デバイス開発も、LTE通信が可能なマイコンやメモリーを搭載したモジュールである、ノルディックの「nRF9160」を活用することで、短期間での開発を実現しています。

さらにBraveGATEでは、デバイス開発者がデータ通信を行う際に、特別な通信プロファイルを作らなくてもいいように工夫し、nRF9160にライブラリとして組み込んでいます。

例えば「5メガピクセル」と「2バイト」といった、容量の違うデータを送る際でも、カメラと温度計や湿度計といった、種類の違うデータを送る際でも、全て同じプロファイルで送ることができるのです。センサー毎のカスタム対応が不要という事です。

こうした仕組みを構築することで、通常2~3年程かかっていた開発期間が、PoCまでに2〜3ヶ月、量産化も大体半年で完了できるようになりました。

デバイス開発者にとって必要なIoTプラットフォームとは ―Braveridge、ノルディック・セミコンダクターインタビュー
「BraveGATE」とノルディックのモジュールを導入した際の概要図。

小泉: デバイス側にサーバー機能を持つという考え方は面白いですね。セキュリティのために閉域網通信を行いたいというニーズに関しても、SIMを活用していることで解消していますね。

消費電力を抑える様々な工夫

小泉: 実際にBraveGATEを活用した事例について教えてください。

小橋: 「ため池管理システム」という事例があります。

ソーラーパネルや大容量固体電池を一体化させた上位とはLTE通信をするゲートウエイの役割を果たし、下位とはBLE通信をするルーターで、BLEのローカルネットワークを組み、BLE 接続したカメラとセンサーを活用して、ため池を監視するシステムです。

通常このようなサービスを構築しようとすると、まずカメラやセンサーといったデバイスが、サーバーに対して定期的にデータを送るのが一般的です。

しかしBraveGATEでは、クラウド上のアプリケーションがクライアント、デバイス自身がサーバーなので、一般とは逆の構成になります。つまり、アプリケーションサーバー側から要求が来るまで、デバイスは待機している状態にすることが可能です。

デバイス開発者にとって必要なIoTプラットフォームとは ―Braveridge、ノルディック・セミコンダクターインタビュー
「ため池管理システム」のシステム構成図

アプリケーション側から「1時間ごとにデータを送ってほしい」とデバイス側に要求を送ると、それが実行されます。また、途中で「現在の写真を送る」という割り込みの要求をアプリケーションから送りこみ、即時に応答することもできます。

危険水位になり、ため池の状態をより詳しく知りたければ、「数秒毎にデータを送る」という要求に途中で変更することも可能です。

また、ファームウェアのアップデートが必要な際も、アプリケーション側から要求を送ることで、デバイス側が必要なファームウェアをインストールします。

こうすることで、必要な時に必要なデータを取得し、かつ消費電力を抑えた仕組みを構築することができます。

小泉: デバイス側に対して要求がない場合は、待機することで消費電力を抑えているのですね。しかしデバイス側にサーバーを持つなど、高度になればなるほど電力消費は激しくなるように感じるのですが、どのように工夫されているのでしょうか。

小橋: もう一つの特長として、BraveGATEとデバイスの間では、MQTTを使わずに、バイナリデータを利用したプロトコルを使って通信をしています。

IoTサーバーの中で通常使われているMQTTの代わりに、当社が開発したB2CP(Braveridge Binary Control Protocol)という独自のプロトコルを使っています。

デバイス開発者にとって必要なIoTプラットフォームとは ―Braveridge、ノルディック・セミコンダクターインタビュー
左:一般的なIoTプラットフォームでの構成図。 右:「BraveGATE」を導入した際の構成図。
そのため、MQTTを利用する際に必要な「キープアライブ送信」や「クライアント証明/更新」が不要になり、消費電力やデータ通信量を抑えることができています。

また、ノルディックのnRF9160は非常に消費電力が少ないという点も、低消費電力が実現できているポイントです。

小泉: 様々なアプローチから消費電力を軽減されているのですね。

無線や通信の知識不要でIoT導入を可能にする

小泉: 続いてBraveGATEと組み合わせることができるノルディックの製品について詳しく教えてください。今回モジュールで提供されているということですが、製品意図としては通信やメモリー管理などを総合的に行うためなのでしょうか。

ノルディック 山崎 光男氏(以下、山崎): そうですね、ノルディックでは基本コンセプトとして、総合的に行えるように全てSoC(System on Chip)の形で提供しています。

デバイス開発者にとって必要なIoTプラットフォームとは ―Braveridge、ノルディック・セミコンダクターインタビュー
セルラー接続やIoTアプリケーションに必要な様々な機能を統合している「nRF 91」。

ところで、Bluetoothが普及した要因は、低消費電力で、かつBluetoothに関する深い知識がなくても、アプリケーションに特化した細分化されたものを作ることができる、という点だと思います。

そこで、LTEでも同じように、無線や通信といった知識がなくても手軽にIoTが導入できるよう、全てをシステムに組み込んでいます。特に一番のハードルである認証関係の手続きを、当社が製品レベルで行っているという点が大きなポイントです。

小泉: 技術的なハードルがあった際にはサポートもノルディックで行っているのでしょうか。

山崎: 行っています。認証の時と同じように、通常、チップとモジュールの中身のサポートはチップベンダー、モジュールベンダー別々で行いますが、当社はワンストップで行っています。

当社はチップベンダーですので、シリコンベースの商品を売ることが仕事ですが、ユーザー目線で見ると、重要な要素はソフトウェアです。

そこで、当社では、SDKや様々なライブラリを提供しており、課題が出てきた際には、オープンコミュニティで質問できたり、サポートウェブサイトを活用していただけることを重要視しています。

小泉:ノルディックからみた、BraveGATEを前提としたIoTシステムを作るメリットはどういうところでしょうか。

山崎: デバイス側はともかく、IoTにおけるセルラー通信は、サーバーやネットワーク側との融合が重要になってきますが、現状デバイスメーカーでは、これを包括的に提供するのが難しいのが現状です。

そうした中、BraveGATEでは実使用環境下における「不規則エラー問題」にも対応し、全て一括して提供しているので、BraveGATEに融合できるライブラリを使えば、無線や通信を深く意識せずに組み込むことができるのです。

小泉: LTE通信を前提としたデバイス開発をされているメーカーにとっては、メリットが高そうですね。

エッジコンピューティングを効率的に使う

山崎: また、デバイスメーカーからすると、デバイス自体は小さくて軽い必要がありますが、一般的なIoTはインターネットプロトコル(TCP/IP)を前提として組まれています。

そうした大きなプロセッサーで動かすようなプロトコルを、低消費電力を実現したいようなデバイス開発に使うと、処理が非常に重くなってしまいます。そこでBraveGATEの発想が重要になります。

サーバーにデータを貯めるのではなく、「ある程度必要なエッジコンピューティングをデバイス側で行い、必要に応じてクラウド上のアプリケーション側に吸い上げる」という構成は、IoTの可能性を広げる新しいコンセプトだと感じています。

小泉: 通常セルラー通信を活用しようとすると、給電できるデバイスでないといけない、というイメージがあります。ですからデバイスを外置きにする場合など、低消費電力が必要な場合は、数年前であればLoRaWANなどを利用せざるを得ませんでした。

しかしNB-IoTやLTE-Mといった、低消費電力をベースにしたセルラー通信で動くチップがあれば、通信は安定していますし、可能性は広がりますね。

小橋: ノルディック製品のユーザー目線で言うと、このような製品をずっと待っていました。

理由としては、LTE系のチップでありながら、アプリケーションプロセッサーとユーザープログラム領域を確保し内蔵している点です。通常チップやモジュールは、外部に別マイコンをつけて制御しなければならず、これがバグが多発する原因でもあります。

山崎: おっしゃる通り、nRF91はワンチップで、外側のプロセッサーが必要ありません。バッテリー、センサー、SIM、アンテナをつけるだけで使えます。

デバイス開発者にとって必要なIoTプラットフォームとは ―Braveridge、ノルディック・セミコンダクターインタビュー
nRF91を活用する際の構成図。

小橋: さらにプロセッサーの性能も高く、音声のコーディングや圧縮など、高度なことも行えるほどパワフルです。

ショートレンジとロングレンジの開発を統合して行う

山崎: また、IoTを構築する際、デバイスがセルラーインターフェースを持っていますが、ノードが増えてくると、通信量が大きな負荷になります。そこで、ものによってはゲートウェイを入れることで、周辺のエッジデバイスをショートレンジでつないで構成することも可能です。

デバイス開発者にとって必要なIoTプラットフォームとは ―Braveridge、ノルディック・セミコンダクターインタビュー
共通のSDKにより、ロングレンジとショートレンジの開発を統合的に行うことができる。

また、エッジデバイスの通信は、BluetoothやZigbeeなどを活用しています。これは2.4GHzマルチプロトコルSoCであるnRF52やnRF53シリーズでも、nRF91と共通のSDKを使っているので実装することができます。

つまり、ショートレンジ側は別のツールを使い、nRF91側は別のツールを使うということではなく、同じツールでショートレンジ側とロングレンジ側の開発が行えます。

nRF91に関するセルラーのゲートウェイも同じツールで開発できますので、開発環境が統合されていて展開がしやすくなっています。

また、Bluetoothだけでなく、メッシュネットワークを使う際にはZigbeeを使う、というように、混在させることもできます。それら全てが同じ開発環境で開発することができ、さらにBraveGATEを使うことで、難解な不規則エラーに悩まされることなく、非常に早く開発することができます。

小泉: 本日はありがとうございました。