コマツのスマートコンストラクションがわずか8か月で実現できたわけーコマツ 四家氏、シスコ 八子氏 対談

前回、土木建築が変わる、コマツの「スマートコンストラクション」 -コマツ 四家氏という記事を公開したが、その講演の後、Industrial Internet研究会の司会をつとめた、シスココンサルティングサービス 八子氏との対談が行われた。

スマートコンストラクションが実現するまで

八子: スマートコンストラクションの記事などを拝見していて、IoTではないのかな?とも思っておりました。もともとどういう考えでこのスマートコンストラクションをはじめようとなさったのですか?

八子氏
シスココンサルティングサービス 八子氏

四家: 私は、IoTもICTも手段ととらえて、この土木工事現場の労働力不足をどうやって解決するか?ということを考えたとき、あらゆるものを持ってきたのですが、その結果IoTとなったというだけなのです。

八子: 意識せずやってきた結果がIoTとなったということですね。土木工事の無人化はもともと目指していたのですか?

四家: 熟練オペレータのやり方は100人100様だといわれている中、無人化に向けて、熟練オペレータの技能情報をためようとしていたのですが、実際に一人のオペレータが経験数数は、年間それほでもなく人生を通しても数百程度じゃないかと思うのですよ。一方、年間で行われる工事自体は、50,000以上の現場があるのです。だから、データを全部とり、解析すれば無人化は無理ではないと感じました。

また、自動車の無人運転などは、社会的な問題が大きく取り上げられてますがが、建設工事における無人化は法律的にも問題がないことも調べてわかったのです。

それで、この無人化というテーマをどういうマイルストーンで実現するか?ということだけだなと考えたのです。

四家氏
コマツ 四家氏

八子: 今回のご講演を拝見していると、一つ一つの問題を解決していく中で、次の課題を解決する、そうしている中でスマートコンストラクションを完成されたように見えます。こうやって多くの問題を8か月という短期間で解決したということについてですが、どうやって人材を集めたのですか?

四家: 私のいた部署が、トップ直轄部隊になっていたというのがまず大きいです。さらに、基礎研究はやめてオープンイノベーションによるとがった技術を集めるという部隊があったのですが、この部隊も我々の部隊にジョインすることで、スピードがあがったという背景があります。

ところが、空撮での測量に使うドローンが日本の電波法が適用外ということで、ドローンを改造して対応させたりもしました。こういうベンチャーのような動きが、実現に向かったのだと思います。

建機の車体のほうは社内の技術部隊が、クラウドの方は外部のパートナーも活用しました。

 

自動化をすすめると、ヒトの仕事を取ってしまうか?という課題

八子: 自動化すると「ヒトの仕事がとられて、いらなくなるんじゃないか?」というような反対はなかったのですか?

四家: はじめはそういう課題も懸念していたのですが、「スキルのある人は、人間でないとできないことをやるというシフトが起きればいいのだ」という話をしたのと、もともと労働力不足という問題もあったので、抵抗はなかったです。

八子: 実現をする上での苦労はどういうところにあったのですか?

四家: 結果乗り越えてしまうと苦労と思わないですが、「お客様がWOW!と言わないと不合格」という社長の言葉もあり、そこが大変でした。お客様にとって、想定外・想像以上のものがないといけないので、それが一番難しかったです。実際、コマツは自前主義で、建機をつくっていて、社内外を巻き込んでこのソリューションをつくるという上では苦労がありました。

八子: スピード感がまるで違うということですが、社内での逡巡はありましたか?

四家: コマツがもっている時計とスマートコンストラクションが持っている時計のスピード感覚が全然違うので、どちらかというと楽しく受け入れられているという風に感じてます。

八子: このサービスを使うことで、建設現場がわくわくして、社員もモチベーションがあがってるのではないですか?

四家: 社内で傍観している人も、お客様が驚く姿をみて、触発されていくという流れができてきていると思います。

 

データを徹底的に活用し、モノとモノをつないでいく

八子: このソリューションは、圧倒的なデータ、データ、データですよね?ここまでデータをみせいく必要性は感じますか?

四家: データに説得力があるというお客様もいるのですが、実際はすべてがカンでやっているような人も多い状態なので、データをみせても比較のしようがなく、響かないお客様もいらっしゃった。しかし、こうやってやっていくなかで徐々に浸透していって、データの説得力も増してきたのだと思います。

八子: ポジティブなお客様が協力的になったということですか?

四家: 実際、3日で建機を使いこなす状態をみて、独立をして数十人の規模までやるのだというような建設会社もできてきている状況です。

八子: 土木建築の分野でのプラットフォーム企業になりつつあると思うのですが、他社の建機も含めてデータ化していくということについては、どう考えていますか?

四家: もとは、ほかの建機までつなげるということは考えていなかったのですが、実際自社の建機のデータをつないでみせると、他社の建機もつないでくれという流れになったのです。他社の建機で施工状況をモニタリングするステレオカメラの技術については、以前からステレオカメラを研究している人材がいて、そのメンバーと会ったとき革命が起きるかもしれないと思い、急速に開発が進んでいったのです。

 

スマートコンストラクションの今後

八子: 今後どんなものをつなげていきたいですか?

四家: 既存の建設機械をつなげるのは難しいです。しかし、今後は他社のものもICT建機になっていくはずなので、そこはオープンにつないでいく。ステレオカメラのやり方、ドローンのやり方だと広範囲な現場では対応できないので、今後はもっと広範囲なものをとれるようなものを考えています。

測量については、現在ワイヤー付きのドローンのようなものを使って、大容量のデータをとれ、電源も取得できるので、24時間飛ばしっぱなしにできるもので、現場をとりつづけることができるようになります。

あとは、ルンバのような一部無人化を進めていこうと思っています。

八子: これからは、建設現場を見にいくのが楽しみになりますね。

 

質疑応答

Q1: 完全自動化のネックは何ですか?

四家: 技術的には可能だと思うのですが、変動要因(不確実さ)が残るのです。今後予測の精度があがればいいのですが、そこは人間がやったほうが効率的だと考えています。工場でも一部自動化した際は効率化があがるのだが、そのあとは案外効率があがらないという事実がありますから。

Q2: 手段としてのITの力を信じてくれるお客様があまりいらっしゃらないのですが、なぜそこを信じられるのですか?

四家: 個人的には、道具として使っていこうという考え方だけれども、過去はコマツもICT事業部というような手段が目的化したことがありました。

Q3: 建設以外の用途に転用できるような可能性はないのでしょうか?たとえば、ドローンを飛ばしてゴルフコースを撮影して、本当のコースをゲームで体験できるというようなことはないですか?

四家: コマツは建設機器メーカーからはなれないと決めています。合理的な説明はないのですが。社会に貢献するサービスをやっていかないといけないという意味で、林業の建機もあるのですが、スマート林業などには取り組みたいと思ってます。

Q4: 各工程の中で社内で回避が難しかったところはどこか?

四家: ICT建機はすでに何年も研究してきたことです。GPSの数メーターでずれるようなデータを補正するような技術がすでにあり、それで3cmレベルで誤差は比較的楽に実現できるのです。油圧の中で0.1mm単位で油圧の動きをセンシングしているのを使っています。96年に油圧バブルをデジタル化したとき、評判がわるかったのですが、このとき、コマツはアナログに戻さず、デジタルで研究を使い続けました。ほかの企業がアナログに戻していったときにです。なので、出来上がった技術を複合的に組み合わせて今の形になったのです。

Q5: 自分たちは、単なるメーカーではなく、なにもの?と定義されていますか?

四家: 「建設機械メーカーである」と考えてます。ここから離れてはいけないと思う一方で、我々のサービスをつかっていただけるお客様が幸せになることを実現したいと考えています。本来、この手の話はドイツやアメリカでもっと早くでるものであるはずなのですが、去年の建機展で海外のメーカーはやめてしまったのです。日本の非効率な建設業を効率化して輸出産業にしたいというくらいの夢をもって取り組んでいます。

 

◆コマツ四家氏 講演は全二回

【前編: 土木建築が変わる、コマツの「スマートコンストラクション」 -コマツ 四家氏

【後編: コマツのスマートコンストラクションがわずか8か月で実現できたわけーコマツ 四家氏、シスコ 八子氏 対談
2回にわたって、四家氏のお話を記事にしたが、実際お話さていると四家氏自体にまず迫力がある。過去のR&Dの蓄積があったとしても、8か月でここまでの結果を残されているのは驚き以外ないともいえる。本質的な課題を解決するために、必要なことを探し、IoTに行きついたからこそ、スマートコンストラクションが実現できたのだろう。IoTは手段であって、目的ではない。自社にIoTを取り入れたい企業は、IoTで何ができるか?ではなく、本質的な課題の解決策の一つにIoTは使えるのか?という見方をすべきだ。

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