5Gのユースケースを求めて ーMWC2018レポート4[Premium]

バルセロナで行なわれているMWC2018のレポート第4弾は、5Gのユースケースを求めて3日会場をさまよった結果をレポートする。

IoTNEWSにおいて、オピニオンや知見を共有する記事は、通常Premium会員限定ですが、この記事については3月4日(日)まで、一般公開します。

昨年末に3GPPという通信の仕様を決める機関で、ついに5Gの仕様が決まった。CESでもベライゾンが2019年には5Gサービスをスタートすると言ったことは記憶に新しい。日本でも、2020年には5Gが商用化すると言われている。

エリクソンなどは、2015年くらいから5Gの基地局を展示していて、4Gから5Gヘスムーズに移行するための機器やソフトウエア群も既にリリースしている。

つまり、通信会社側は、ひとまず5Gのサービスをスタートできる状態になったと言えるのだ。

一方で、エッジ側はどうだろう。クアルコムのレポートでも書いた通り、スマートフォンに関しては5G通信が可能な端末をつくることはできそうだ。

年間15億台は出荷されると言われるスマートフォンでの利用が進めば、チップの価格も下がり、VRのヘッドセットなど特定目的様のチップセットも今後出てくる可能性がある。

業界は、1-2年くらい前から5Gの有効なユースケースを模索しており、展示ブースを見ていると様々なユースケースをうたっているのだが、内容をよく聞くと5Gの特性を活かす必要が「ない」ものがほとんどだと言える。

これでは、通信キャリアが5Gに対する多額の投資をしても、通信が利用されないため、設備投資に対する回収プランが立たず、対応したくなくなってしまう。

単なる技術的なアドバンテージを誇示するために対応するにはあまりにも多額の投資と言えるからだ。

5Gの特性と今時の通信に求められること

5Gの特性はというと、「高速」「大容量」「低遅延」が代表的な特徴と言われているが、他にも社会の変化に合った特徴がある。

例えば、IoT社会において多くのデバイスを管理する必要が出たときに、現在の基地局ではその数をさばききれないため、単位面積あたりの対応可能なデバイス数を増やす必要がある。

また、ミッションクリティカルなデータ通信と、ベストエフォートでも対応可能なデータ通信を分けて管理することで、要件に応じた通信料を支払うといったビジネス面を考慮した通信も実現する必要がある。

一方で、IoTで必要とされているような、少量のデータしか通信しない想定のサービスの場合、せっかくの通信インフラに対する設備投資も通信キャリアにとって儲からないこととなる。

通信キャリアが儲からないことには、5Gの投資は進まない

そのため、エリクソンやファーウェイ、ノキアといった通信設備を作る企業は、キャリアにとってネットワークが「土管化」しないためのソリューションを提供しだしているのだ。

例えば、クラウドサービスだ。

土管という立ち位置を取ると、通信キャリアのネットワーク上にやってきたデータは、そのままインターネットに飛び出し、AWSやMS Azure、Google Cloudなどに流れ込む。

しかし、同じようなクラウドサービスを通信キャリアが提供できれば、通信キャリアは(e)SIMの単位でデータ管理を行うことができ、また、グローバル対応をする場合でも、均質なサービスを提供しやすくなるのだ。セキュリティへの対応も取りやすい。

こういった観点で見ると、単なる土管ではなく、サービス提供企業にとって、クラウド事業者としての一つの選択肢となることも可能になる。

また、エッジ側の通信も、イーサーネットであったり、Wifiであったりするところを、5Gを使い、今回エリクソンが発表した、Distributed Cloudと呼ばれる、エッジ向けのサーバなども利用すると、文字通りEnd to Endでの高速・低遅延の通信サービスの提供が可能になるだろう。

また、XaaS(Anything as a Service)といった考え方が最近多いが、その中でも通信キャリアの果たす役割は大きい。CESで発表された、トヨタのe-Paletteにおいて、コネクテッドカーの状態を取得するのはキャリアの通信網になる。

仮説にはなるが、すべての初期投資や運用資金を自動車メーカーが持つのではなく、コネクテッドカーの動きに合わせたサービスをキャリアと共同で展開することでレベニューシェアのモデルをつくることができるはずだ。

例えば、自動運転カーに乗った消費者が、街に置かれた非接触ICに対応した広告を見たら、スマートフォンをかざすことで消費者は通信キャリアから「通信ポイント」を貰い、一定期間の通信料金(または通信を含むサービスそのもの)が無料になるといったサービスをも作ることが可能になるだろう。

つまり、移動が再定義される中で、ビジネスモデルを定義する必要があるが、コネクテッドカーにとって必須となる通信に対するコストを、「利用者」「サービス事業者」「車メーカー」「通信キャリア」でそれぞれ負担し、「サービス事業者」「車メーカー」「通信キャリア」がレベニューシェアするという考え方だ。

一方、こうやって通信キャリアが儲かるビジネスモデルが作れるプラットフォームが提供されたとしても、有用な(通信が発生する)ユースケースがもっとないと、5Gの世界が広がっていくとは思えない。

5Gのユースケース

MWCの展示会場を見て回った時、一番有用と言われているユースケースは、「コネクテッドカー」であった。

コネクテッドカーでは、「低遅延」であることがとても重要だし、スライシングされたネットワーク領域での「信頼性の高い通信」も必要となる。鉄道などの他の移動手段も含めて、とても期待されている領域だ。

他のユースケースとしては、イーサーネットで動いているような工場において、ローカルに5Gネットワークを構築することであった。実際にクアルコムはシーメンスと共同で実証実験を繰り返しているという。

1msecくらいの遅延を許容している製造の現場であれば、5Gでも対応できるのではないかという考え方になる。

5Gでネットワークを構成することができれば、エッジの近くに強力なサーバを配置することで、産業機械のコントロールを集中管理することができる。

曰く、「工場のロボット自体が賢い必要がない」ということだ。

また、産業機械のコントローラー部分を集中管理することができれば、機械そのもののサイズダウンにもつながり、省スペース化が図れる。

生活者に目を転じれば、テレビで生放送を現地から行うというケースがあるが、現状ではそれほど画質が良いとは言えない場合がある。しかし5Gであればかなり綺麗な画像を提供することができるだろう。その結果、ソーシャルメディアのような草の根の映像が全国放送で流れる日もくるのかもしれない。

これは、北米を中心とする、テレビの大画面化が進んでいるエリアでは大きな変化と言える。

さらに、スポーツのライブ中継などで、リアルタイムに複数のカメラが捉えた選手の情報から映像を再構成したり、アスリートに取り付けられたカメラをつかったリアルな映像を映し出したりすることで、ライブ映像がよりワクワクするものとなるはずだ。

MWC2018 5Gのユースケースを求めて
左がソチオリンピックの映像で、右が平昌オリンピックの映像、情報量が増えているのがわかる

この写真は、平昌オリンピックにおいて、KT(コリアテレコム)が5Gを用いて行った映像だ。リアルタイムに取れるとよい情報が取得され、テレビ上に表示されていることがわかる。

 

他にも、日本ではあまり広がりを見せないが、eスポーツと呼ばれる、オンラインゲームの世界でもリアルタイム性は欠かせないため、5Gは有用であるとされている。

漠然とした不安感はどこからくるのか

こういった代表的なユースケースを見ていると、5Gの未来は明るいように感じる。しかし、実際に様々な関係者にインタビューをすると、「別に5Gである必要性はないことが多い」という。

こういう悲観的な気持ちになるおおきな原因は、「スマートフォンのように一つにまとまっていない」ことなのだ。

何か、わかりやすいデバイスが登場して、それが世界を席巻するとなると、マーケットができるイメージができるため自社の立ち位置を明確にしやすい。

しかし、デジタル化が一定進むところまで来てしまった社会において、IoTにせよ、5Gにせよ、なにか一つのプロダクトが救世主的に産業を作るという時代が終わり、エコシステム、つまり、それぞれがつながることで価値が創出されるような社会になってきたため、何らかのプロダクトやサービス単体ではスマートフォンのような巨大なマーケットを形成するのが難しい状態になってきているのだ。

例えば、前述した、移動を再定義しているe-Paletteも、車が自動運転になればよいという、単純なモノの進化では語れない。

一方で、我々は、リアルタイムにデータがやりとりされる環境に身を置いたことがないため、5Gがリリースされた後、思いもしなかったユースケースが生み出されることは間違いないだろう。

プロダクトアウトから視点を変えたエコシステムが形成される中で、5Gの有用性が理解され、これまでとは違う視点でのユースケースが登場し出した時、電気の発明以来の大きな社会変化が起きるのだ。

MWC2018レポート

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