KDDI株式会社は2021年9月、SpaceXとの業務提携を発表している。これにより、同社の衛星通信サービス「Starlink」を、au基地局のバックホール回線に利用する契約を締結しており、個人向けに年内導入開始予定だ。
そして2022年10月19日に開催された「Starlink説明会」にて、法人・自治体向けのサービス「STARLINK BUSINESS」を、年内に提供開始することが発表された。
本稿では、「Starlink」の概要と、今回発表された「STARLINK BUSINESS」の内容について紹介する。
低遅延と高速伝送を実現する「Starlink」
「Starlink」は、SpaceXが開発した高速・低遅延の衛星ブロードバンドインターネットサービスだ。
SpaceXはFalcon9をはじめとするロケット開発事業で有名だが、累計180回を超えるFalcon9の打ち上げにより、3,400機を超える「Starlink」が打ち上げられている。
「Starlink」の通信衛星は、高度約550kmの低軌道上に配置されており、従来の静止軌道衛星に比べて地表からの距離が65分の1程度と大きく近づくため、低遅延と高速伝送を実現している。

地表からの距離が近いため出力する電波量も少なく、相対的に干渉する割合も少ないという点もメリットのひとつだ。
そして、「Starlink」の通信衛星と地上のインターネット網を接続するゲートウェイ(地上局)をKDDIが担うべく業務提携が行われ、KDDI山口衛星通信所に構築したのを皮切りに、全国に地上局が構築された。
「Starlink」の活用形態
「Starlink」を活用したauの通信サービス形態は、主に3つだ。

1つ目は9月に発表された個人向けのサービスだ。auの基地局に「Starlink」のアンテナを設置することで、「Starlink」の衛星とやりとりをし、auのスマートフォンでモバイル通信を行うことができるというものだ。
2つ目が今回発表された法人・自治体向けの「STARLINKBUSINESS」だ。個人向けサービス同様、スマートフォンでも使えるが、「Starlink」の端末(アンテナ)にWi-Fiや有線のLANなどをつなぎ、それらが地上局経由でインターネットにつながる仕組みだ。
3つ目はスマートフォンとの直接通信だ。米国では既に発表されているが、現状は低速な通信回線となっており、精度のケアも必要とのことだ。
速度と安定性、耐久性を向上させた「STARLINK BUSINESS」
「STARLINK BUSINESS」の利用可能エリアは全国で、個人向けのサービスと比べて高速・安定・高耐久性という特徴があるという。
受信最大速度は350Mbps、送信最大速度が40Mbpsと、個人向けサービスと比べて2倍以上の性能となっている。

安定性に関しては、「STARLINK BUSINESS」に優先的に帯域が割り当てられるため、安定した通信が可能となる。また、アンテナの視野角が個人向けでは100°程度だったのに対し、140°となっており、受信精度を高めている。

耐久性に関しては、防水・防塵IP56準拠で、融雪能力は1.7倍向上している。
その他にも、設置・導入支援や、構内LANや閉息網といった通信を「Starlink」と組み合わせて提案するといったことや、カスタマーサポートも同時に行っていく予定だ。
想定される利用シーンは、社会インフラの老朽化対応や企業・自治体のBCP対応、自然災害対応などが挙げられた。
海上利用に関しては、現状提供地域は米国やヨーロッパ周辺のみだが、日本でも12海里までの領海内に関しては制度の準備が整っており、今後展開を検討している段階だという。
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