E-BOM/M-BOM連携ができない製造現場
羽田:インダストリー4.0というと、日本ではIoTの部分が注目されますが、「設計と生産の連携」も大切です。
小泉:最近、一般論としてPLM(製品ライフサイクル管理)が売れているという話をよく聞くのですが、なぜいま急に PLMに注目されるようになってきたのでしょうか。
羽田:PLM、あるいはE-BOM/M-BOM連携というようなことは、実は20年前から言われています。ただ実際にはほとんど実現できていません。簡単に言ってしまうと、「E-BOMの世界は論理的な世界、M-BOMの世界は物理的な世界」という違いがあり、それが連携・統合を難しくしています。
我々はERPについては30年に渡り取り組んできましたが、設計については分からないことが多くありました。約2年前に設計と製造をつなぐ製品、「mcframe EM-Bridge」をリリースできたのは、図研と資本業務提携を行い、「ダイバーシンク」という会社を設立し、図研(現 図研プリサイト)の製品をmcframeブランドでOEMし、ロードマップを両社で共有しています。

小泉:しかし、仕組みがあったとしても依然としてE-BOMとM-BOMを連携するのは難しい、と言われていますよね。
羽田:実際に設計する人にとって、「工場の現場にはこういう設備がある」といった情報が共有されていないことが1つの要因として挙げられます。逆に言うとそういうことをきちんと設計の人と共有できれば、先ほどのような問題は無くなります。逆に「現場側でさらにこういう改善をした」という情報が設計に伝わるように、フィードバックすることが大事です。
今まで日本の工場では主に人間系で現場側と設計側はやり取りをしていました。しかし、海外拠点などではそうした方法は通用しません。その点についても現場側と設計側の間をデジタルでつなぐ仕組みが必要になるのです。
小泉:サプライチェーンを構築する過程で、自分の所の最終製品が次の会社に流れます。 その流れで例えばフィードバックを捌くスピードが求められている、あるいは遠隔のやり取りをするのでデジタル管理が必要になった、ということでしょうか。
B-EN-G 山下武志(以下、山下):元々インダストリー4.0ではITとOT (Operational Technology:運用技術)をつなぐ、という話と、エンジニアリングチェーンも行う、という二軸の話があります。そして後者を実現するためにはPLMとERPをつなぐ必要があるよね、というところからフィードバックの仕組みを作る話が出てきたのです。
日本の場合、顧客の要求をそのまま入れて、仕様違いみたいな亜流品を多く作らせるという特長があります。しかし、それを行うためのコストがどのくらい発生しているのか、といった情報が把握できていません。結局「儲かっていないけれど、大口の会社さんからのオーダーだから一生懸命それのためにやるしかない」ということになってしまいます。
サプライチェーン側で製造工程を効率化したところで、そもそも儲かってないものを一生懸命作るというところから脱却しない限りは何も変わりません。
入交:2005年か2006年くらいにE-BOM/M-BOMの変換が流行りましたが、その際は設計の人・工場の人が、それぞれの立場で取り組んでいたのが実情でした。
それがリーマンショックなどを経た後に、ものづくりの現場ではお互いがカバーし合おうという流れが出てきました。そこにインダストリー4.0の要はエンジニアリングの串刺しで通していく、というメッセージが強烈に効いてきているのだと思います。それが実現できているのか、というのはまた別の話になるのですが。
小泉: E-BOMとM-BOMを統合管理して、生産工程をシャープにしなければ無駄は無くならない、という話ですね。
IoTで変わる原価管理
羽田:これからは、IoTとPLMを組み合わせることで、新しいことができるのではないかと思っています。
例えばPLMとERPの原価管理を組み合わせることで、製品のライフサイクルを通した収支管理が可能になります。

今まで人間が一日に一回結果を入力して確認していたものが、IoTを活用することでリアルタイムに正確な情報が取れるようになります。ERP(原価管理含む)やIoTをきちんと導入している企業とそうでない企業の間で、変化への対応力や圧倒的な競争力の差が出てくると思っています。
小泉:そうした活用例が徐々に伝わって、その他の企業にも広がっていくのではありませんか。
羽田:そうですね。ここまでいくと経営者も「やらないとね」という話になる。逆に現場のIoTだけでは効率化に留まってしまい、全体最適にはつながりません。
小泉:会社内のデジタルトランフォーメーションの話をする際に、生産性を管理する中でIoTを使いましょう、という流れになりますが、取得したデータが経営に活かされず、全然事業の話につながらないことが多いです。しかしライフマネジメントサイクルや原価の計算につながれば、経営の形が変わってきますね。
山下:PLM、IoT、ERPなどを個々で進めるのではなく、それを全部つなげることで初めてデジタルが製造業に寄与出来る世界を作れるのではないか、という考え方を持っています。ただ現時点においては、完全に実現できているわけではないので、まだまだ試行錯誤をしている段階です。
原価管理については、2019年9月に『儲かるモノづくりのためのPLMと原価企画』(北山一真・尾関将・伊与田克宏著、東洋経済新報社)という書籍が刊行されている。共著者のひとりである伊与田氏はビジネスエンジニアリング・新商品開発・商品企画2部の部長である。
本書は「PLM」と「原価企画」をキーワードに、設計・開発段階でのコストマネジメントにおける課題解決の切り口を提言する。設計の課題解決したい人向けの章、原価や会計の課題解決したい人向けの章、原価/会計システムの導入やテクノロジーを活用し製造や会計の課題を解決したい人向けの章など、著者のひとり、北山一真氏いわく「複数視点の掛け算」を重要視した構成になっているのが特徴だ。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。

