旭化成株式会社は、多様な樹脂製品を扱う機能材料事業をグローバルに展開しており、各拠点は独自に構築した基幹システムを運用していた。
また、2021年に本格稼働を開始したデジタル経営基盤等により、グローバル製品別連結損益の可視化やフォーキャストデータの集約など、グローバル横断のマネジメント業務は標準化されたものの、依然、現場のオペレーションを中心に各国独自の業務プロセスが残存するなど、業務面・コスト面において非効率な状況であった。
さらに、2027年にSAP ERPのメインストリーム保守終了が迫っており、グローバル業務標準化や効率化の観点で基幹システムの刷新が急務だった。
こうした中、株式会社NTTデータは、旭化成がグローバル展開する機能材料事業の基幹システムを「SAP S/4HANA」を中心としたシステム群へ刷新し、2025年1月よりシンガポール拠点での本格稼働を開始した。
NTTデータは、グローバルでのコンサルティング・SAPシステム導入支援のノウハウを有するグループ会社の株式会社クニエとともに、2021年から旭化成の機能材料事業におけるグローバルテンプレートの構築を行なっており、2024年10月に導入・ハイパーケアサポート期間を終え、2025年1月よりシンガポール拠点で本番稼働・保守運用を開始した形だ。
なお、2023年10月に稼働開始したタイ拠点ではすでに「SAP S/4HANA」を導入しており、今回の刷新で機能材料事業のASEAN地域において全面稼働となる。
今回のプロジェクトでは、「業務」「レポーティング」「コード」の標準化を行うことで、タイ・シンガポール拠点における業務の平均90%標準化を実現している。
業務やレポーティングの標準化においては、「SAP S/4HANA」の主要モジュール(SD,MM,PP,FI,CO,QM)におけるNTTデータのSAPベストプラクティスを基に、旭化成独自のグローバル標準化要件・レポーティング要件を加え、「SAP S/4HANA」「SAP BW/4HANA」テンプレートとして構築した。
コードの標準化においては、NTTデータが導入済みの経営管理基盤で設計したグローバルコードを参考に、同プロジェクトにおけるコード標準化ポリシーを定め、展開を図っている。
また、アドオン開発を従来の約半分に抑えるとともに、タイ拠点は9カ月、シンガポール拠点12カ月の短期間で導入したとのことだ。
さらに、同基盤においては、すでに運用を開始していた経営管理基盤・サプライチェーン管理基盤(いずれもAnaplan)、顧客管理基盤(Salesforce)と、「SAP S/4HANA」「SAP BW/4HANA」を連携することで、実行系と計画系業務プロセスを融合した運用の実現を目指した。
具体的には、Anaplanで管理するセールスフォーキャストデータを「SAP S/4HANA」に取り込むことで、MRP(資材所要量計画)の実行を可能とした。
加えて、Salesforceで管理する顧客・用途別の契約情報をSAPに取り込むことで、価格マスタの更新の自動化と受注計上プロセスの効率化を可能にした。
さらに、在庫情報や販売実績情報などの実績系のデータは「SAP S/4HANA」からAnaplanへ連携するなど、計画系と実行系プロセスの融合を図った。

今後は、旭化成の国外9拠点がそれぞれ独自に構築・運用していた基幹システムを本基盤に順次展開する予定で、欧米拠点を中心にさらなるグローバル拠点への展開を検討しているという。
現在、同プロジェクトと並行して進めているサプライチェーン改革プロジェクトでは、Anaplanを活用した需要の変動を捉えた所要量計算と、生産業務へのフィードバックを目指しているとのことだ。
すでに全拠点のPSI情報(生産・販売・在庫情報)の連動・サプライチェーン全体の在庫の可視化と、理論安全在庫の適用による在庫最適化を進めており、一部の事業においてはPSI情報が一元的に可視化されている。
将来的には同テンプレートを拡張し、「SAP S/4HANA」「SAP BW/4HANA」と連動させる計画だ。
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