生産管理システムとは?導入プロセスやメリットをわかりやすく解説

モノを製造する過程では、「想定以上の発注が来て資材が足りない」「人が余っている工程がある」「問題が発生した際の原因究明に時間がかかる」など、様々な問題が発生します。

生産管理システムは、こうした問題をできるだけ少なくするのに役に立ちます。

しかし、生産システムを導入したいと思ってはいるものの、何ができるのか、どのように導入すればよいのかと悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、生産管理システムの説明から関連システムとの違い、導入ステップやメリットに加え、生産管理システムの種類や今後のトレンドなどについてわかりやすく紹介します。

生産管理とは

生産管理システムとは?導入プロセスやメリットをわかりやすく解説、具体的なサービスも紹介
生産管理のイメージ

まずは、そもそも生産管理とは何なのかについて簡単に説明します。

製品を作って販売するには、需要に応じて適切な量とタイミングで必要な資材を調達して、納期通りに完成するように製造し、品質基準を満たした状態で出荷する必要があります。

感覚で資材を発注して、届いた順になんとなく生産することはできないでしょう。

そこで必要になるのが、「どんなものを」「いつ」「どのくらい作るか」といった生産管理です。

生産管理をするには、受注量に応じた生産スケジュールを作成し、その生産スケジュールに合わせた工程設計やリソースの配分、作業員のシフト計画を立案する必要があります。

また、原材料や部品を多すぎず少なすぎない量を発注し、在庫を適切に管理することも重要です。

生産を開始した後は、各工程の進捗状況を管理します。例えば、生産ラインの稼働率やボトルネックの特定、トラブルが発生した際の迅速な対応も求められます。

さらに、完成した製品の品質を確保するために、検査や試験を実施し、不良発生率の分析や原因究明を行い、準拠すべき規格への対応を徹底する必要があります。

その他にも、生産単価や原価の計算、生産設備の管理、生産効率の向上やコスト削減、作業場の安全確保など、生産管理をするために取り組むべき項目は多岐にわたります。

生産管理システムとは

生産管理システムとは?導入プロセスやメリットをわかりやすく解説、具体的なサービスも紹介
生産管理システムのイメージ

こうした生産管理を、人がひとりひとり把握して計画をたてるのではなく、デジタル化して管理するのが生産管理システムです。

受注量や生産設備のデータ、在庫情報や価格の情報などを収集して生産管理システムに蓄積して、生産管理を行う手助けをしてもらうものです。

なぜ生産管理システムが必要なのか

モノを作るために必要な資材や人材、拠点がごくごく小さな規模であれば、人が管理することもできるかもしれません。

しかし、現代の製造業の全体の流れとしては、製品の仕様や生産プロセスは複雑化しているにも関わらず、柔軟な生産体制が求められる傾向にあります。

例えば、複数の工場や拠点が世界中にあり、部品や原材料の調達、生産、出荷が世界規模で行なっている場合、在庫管理や生産スケジュールの調整を人だけで管理するのは難しいでしょう。

ターゲットとなる消費者が世界中にいる場合も、常に変動する地域ごとの需要や市場のトレンド、経済状況を把握するために、システムを活用したデータ解析が必要となります。

また、人材不足も深刻で、ベテラン知識やノウハウをシステムに落とし込みたいというニーズや、手作業で行なっていた業務を自動化して効率化させたいというニーズがあります。

データの収集方法

データの収集方法は、これまで記入していた紙の情報をデータかする方法や、現場の作業員の方が、入力生産状況や工程ごとの進捗、品質データ、設備の稼働状況などを端末に入力するというケース、センサーや設備からの自動的にデータを収集するケースなどがあります。

また、後ほど紹介する生産管理システムとは別のシステムを活用している会社であれば、連携してデータを収集するケースもあります。

生産管理システムの主な機能

そして、収集したデータをもとに、目的に応じた分析を生産管理システムが行ってくれます。

分析した結果は、グラフやチャートで視覚的に表示したり、週次や月次でレポートを自動で生成したり、次の生産スケジュールや需給予測を可視化してくれたりと、人が理解できる形でアウトプットしてくれます。

例えば、生産能力や受注状況といったデータをもとに、最適な生産スケジュールを作成する機能や、原材料や製品の在庫状況をリアルタイムで把握したり、工程ごとの作業状況を可視化したり、各工程での品質データを記録・分析したりといった機能を搭載しているシステムもあります。

生産管理システムの関連システム

上記で説明した製造の一連の流れには、生産管理システムだけでなく、ERP(統合型)やMES(製造実行システム)、SCM(サプライチェーン管理)やPLM(製品ライフサイクル管理)といったシステムを活用することもあります。

生産管理システムを理解するために、その他のシステムも簡単に説明します。

ERP(統合型)

ERPは、全社的なリソースである、人事(ヒト)、在庫管理(モノ)、財務状況(カネ)、顧客情報や調達情報など(情報)を、統合的に管理するシステムです。

MES(製造実行システム)

MESは、製造現場における効率化や品質向上を支援するシステムです。

具体的には、製造ラインの進捗管理、作業指示、品質管理に加え、設備の稼働や作業員の作業状況などをリアルタイムで把握し、製造工程を最適化する役割を果たします。

SCM(サプライチェーン管理)

SCMは、製品の原材料調達から製造、物流、販売といった、企業のサプライチェーン全体を最適化するシステムです。

具体的には、調達計画の立案、供給業者との連携、在庫管理、輸送・物流の効率化、需要予測を行い、全体のフローを最適化します。

生産管理システムと重なる部分もありますが、SCMはサプライチェーン全体の最適化を支援するシステムであるのに対し、生産管理システムは製造プロセスの効率化と品質向上を目的としています。

PLM(製品ライフサイクル管理)

PLMは、製品の設計、製造、販売に加え、廃棄やリサイクルまでを管理・最適化するためのシステムです。

例えば、設計段階でのデータ共有や、製品の品質情報を販売後のメンテナンスに活かすなど、製品が市場に出てからも活用されます。

これらのシステムは、規模が小さい中小企業であれば、生産管理システムを含めて単体で活用されるケースもありますが、規模が大きく業務が複雑な会社の場合は、生産管理システムを中心に上記のシステムを連携させているケースが多くあります。

企業の課題やニーズに合わせて必要なシステムを導入することが重要です。

生産管理システムの導入ステップ

生産管理システムを導入する際の一例を紹介します。

①現状の洗い出し

まずは、生産管理システムを導入する前に、現在の業務フローを詳細に把握することが重要です。

闇雲にシステムを導入しても、解決したい課題が見えていなければ、必要な情報が何か、どんな分析結果を見たいかが分からないからです。

そこで、現在の業務フローを踏まえた上で、「現在の生産プロセスで発生している問題点は何か」「進捗管理や品質管理をどう改善したいか」「在庫管理や資材調達に関する課題は何か」など、自社の課題やニーズを明確にしていきます。

②生産管理システムの選定

自社の課題やニーズが明確になったら、必要な機能や要件を定義していきます。生産管理システムには多くの種類があるため、自社のニーズに合ったシステムを選定して導入する必要があります。

システムの選定時には、必要な機能が搭載されているか、活用するスタッフが使いやすいインターフェースか、必要に応じてカスタマイズすることができるか、他のシステムとの連携が可能かなどを考慮するとよいでしょう。

また、課題やニーズに合わせて業界特化型か汎用型か、クラウド型かオンプレミス型かいったことや、導入支援やカスタマイズ支援、アフターサービスなどのサポート体制があるかなどもチェックしておきましょう。

③継続的な改善

システムを導入した後も、運用開始後に得られるデータやフィードバックを基に、システムや運用プロセスをさらに改善し、最適化を図る必要があります。

解決したい課題がどれだけ改善したのか、定期的にパフォーマンスをレビューし、システムの効果を数値的に把握します。

そして、さらに効率化できる部分がないか、現場のスタッフや管理者の不満や不明点はないかといった振り返りに加え、システムのバグやセキュリティの脆弱性などがないかを確認し、問題があれば解消する必要があります。

生産管理システムのメリット

生産管理システムのメリットは、現在の課題やニーズによって異なりますが、代表的な導入メリットを紹介します。

生産性の向上

製造ラインの進捗を、これまで手作業で行なっていた場合は、生産管理システムを導入することで、進捗管理やデータ入力を自動化することができます。

これにより、製造ラインの進捗をリアルタイムで把握し、効率的な作業指示を出すことができるほか、進捗管理するための作業の無駄を減らすことができます。

その結果、生産性が向上し、納期計画に沿った生産を行うが可能になります。

在庫管理の最適化

在庫管理は手書きで記録することもできますが、誤記や情報の遅れ、重複作業が発生しやすいという課題があります。

そこで、生産管理システムを導入することで、リアルタイムで在庫状況を把握し、適切なタイミングで資材を調達できるようになります。

さらに、生産計画と在庫管理を連携させることで、不要な在庫コストを削減し、資材不足による生産遅延を回避することが期待できます。

品質の向上

生産管理システムでは、製品の品質管理や検査項目をシステム化することができます。品質データを収集し、品質に関するトレンドを分析することで、製品品質の向上や不良品率の低減を実現できます。また、問題が発生した場合には、すぐに原因を特定し、適切な対策を講じることが可能です。

システムを活用しない場合は、人が品質管理や問題の特定を行なっていましたが、システムを活用することで生産プロセスが標準化されるため、一定の品質を保つことができます。

コスト削減

生産管理システムの導入により、必要な分の資材を発注することで、資材や保管場所といった無駄を削減することができます。さらに、効率的な生産計画と進捗管理を通じて、過剰な労働力や時間外労働を削減することができ、人件費などのコスト削減が期待できます。こうして、資材調達の最適化や工程の無駄の排除により、総コストを抑えることができます。

リアルタイムでの進捗確認と迅速な意思決定

生産管理システムを活用し、各作業ステーションの進行状況や、使用している材料の残量、設備の稼働状況などがリアルタイムで把握できるようになると、管理者は製造プロセスのどこにボトルネックがあるのか、どの部分に問題が発生しているのか把握することができます。

この視覚的な可視化により、問題の発生場所を特定する時間が短縮され、問題の早期発見と早期対応が可能となり、生産遅延や品質問題を未然に防ぐことができます。

生産計画と需要予測の精度向上

生産管理システムは、過去のデータや需要予測に基づいて、最適な生産計画を立てることができます。これにより、製造の効率化とともに、需要に合わせた適切な生産量を確保できるようになります。適切な生産計画が立てられることで、企業は市場の変動に柔軟に対応できるようになります。

生産管理システムの紹介

次に、過去にIoTNEWSで紹介した生産管理システムを元に、3つのタイプに分けて紹介します。

業界特化型

一つ目は、食品製造業向けや自動車部品製造業向けなど、業界に特化している生産管理システムです。

このタイプのシステムは、業界特有の製造工程や要件、単位や規制に対応しているというメリットがあります。そのため、個別の開発を行わずに、スムーズに導入することができるでしょう。

例えば食品製造業であれば、賞味期限管理や生産個数のカウント単位等、食品製造特有の事項を考慮している機能やUIを通じたサービスが提供されています。

また、特定の業界ですでに多く活用されている他のシステムがあれば、そのシステムとスムーズに連携できる仕様にしているケースも多くあります。

カスタマイズ性の高い汎用型

二つ目は、カスタマイズ性に長けた汎用型の生産管理システムです。

こうしたシステムは、生産管理や販売管理といった一般的な機能を細かくカスタマイズできるほか、AIやIoT、スマートウォッチなどとの連携ができたり、ダッシュボードで見たい項目やUIを必要に応じてカスタマイズすることができるシステムもあります。

業界特化型のシステムでは実現が難しい場合、目的やニーズに合わせて必要な連携やカスタマイズをして導入できるのが利点です。

多品種少量生産向け

三つ目は、多品種少量生産に向けの生産管理システムです。

業界に特化しているわけではありませんが、例えば、金型製造や試作、産業機械、専用設備、特注品、治具工具などの個別受注生産をする工場向けに開発されているのが特徴です。

個別受注生産を行う現場の特徴としては、受注毎の個別の仕様に基づいて、単品または少量を製造し、特急品や修理などのイレギュラーや仕様変更が多いことが挙げられます。

そこで、納期や設計変更に応じて人や機械などを最適に調整し続け、自動でスケジューリングを行う機能を搭載していたり、自動スケジュール機能や原価管理機能など、機能を細かく分けることで必要な機能だけを導入することができるシステムもあります。

生産管理システムの進化と今後のトレンド

生産管理システムは今後も様々な進化を続けると思いますが、日々デジタルにまつわるニュースを扱っているIoTNEWSの視点から、今後のトレンドについて紹介します。

AIやIoTとの統合

上記で紹介したシステムにおいても、AIの活用やスマートウォッチと連携できるシステムがあると紹介しましたが、こうしたAIやIoTとの統合はさらに進むことが予想されます。

AIやIoTは、通信やクラウド、エッジでの処理など、様々な要素技術の発展に伴い、それぞれの利用が促進しています。

参考記事:
IDC、今後5年の国内ICT市場で起きる動向10項目を発表、AIの活用促進が中心
IDC、国内企業のIoT投資がサプライチェーンと在庫管理分野で増加

そのため、AIやIoTをすでに導入している企業が生産管理システムとの統合を進めたり、生産管理システムを開発しているベンダーがAIやIoTを活用したりというケースは、今後さらに増加することが予想されます。

例えば、IoTを活用して、各製造設備に設置したセンサからのデータを生産管理システムに収集することで、稼働状況や異常を検出し、生産ライン全体を監視することができます。これにより、機械の故障予知を踏まえたスケジュール管理や、エネルギーの無駄を削減しながらの生産が可能となるでしょう。

また、AIを活用した需要予測アルゴリズムを生産管理システムに搭載すれば、過去のデータを分析して、将来的な需要の変動を予測し、生産スケジュールをより最適化することができるでしょう。

デジタルツインの活用

製造業の中でも、高い精度と品質管理が必要となる業界では、サンプリングや分析などを行いながら、製造条件を最適化する必要があります。

こうした作業は煩雑かつ属人的になる傾向があり、製品の品質検査合格率のばらつきといった課題があります。

そこで、デジタルツインを活用し、仮想空間上で工場の運転状況を再現することで、最適な運転条件を導き出すという取り組みが始まっています。

デジタルツインを活用した生産管理システムを導入することで、現場での分析回数を減らしたり、品質を安定化させたり、作業員の作業効率を向上させたりといった効果に寄与すると考えられています。

参考記事:DICと日立、合成樹脂製造の自動化を図るデジタルツイン技術を実用化

カーボンニュートラルへ向けた機能拡張

製造業の企業は、コスト削減や生産性の向上などの企業努力に加え、環境への配慮も求められる時代になりました。

パリ協定では企業のサプライチェーン全体を通しての温室効果ガス削減目標が策定され、日本においても「2050年カーボンニュートラルの実現」が宣言されています。

また、環境省では今後、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量の表示を求めるとしており、大企業のみならず、中小企業においても対象となることが見込まれています。

そこで、生産管理システムで温室効果ガスやCO2排出量を算出できるようにアップデートしたり、生産管理システム内のデータやその他の情報を連携し、温室効果ガスやCo2排出量を算出して可視化するサービスの提供などが始まっています。

カーボンニュートラルの実現には、「サプライチェーン全体を通して」という点がポイントになるため、取り組みは加速度的に進む可能性があります。

参考記事:
NTTデータ関西、生産管理システムのデータからCO2排出量を算出し可視化する「BIZXIM CFP」を提供開始
JFEシステムズ、原価管理システム「J-CCOREs」が製品ごとのCO2排出量算出などアップデート

これらの進化やトレンドは、テクノロジーの進化や顧客ニーズの多様性、環境の変化など、変化の大きい時代へ対応していると捉えることができます。

変化の大きい時代においては、生産管理システムに求められるものや在り方も変化する可能性があり、この変化に合わせたサービスや機能が登場することが考えられます。

そのため、一度生産管理システムを導入した後も、こうした時代の変化や技術の進化を捉えることも重要になるでしょう。

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