Googleの検索エンジンに見る、成功するプラットフォームの要件
小泉: プラットフォームはとりあえずつくればいいというものではないということですね。明確な意図があって、仲間を巻き込んで、その人たちがさらに仲間を呼び込めるような状態にしなければ意味がないと。
八子: その通りです。
小泉: 戦略的に考えるとそれは理解できるのですが、世の中に広がったプラットフォームの例を見ていると、必ずしもそうは見えません。
たとえば、Googleの検索エンジンです。あれは何も最初から、色々な人たちを呼び込もうとしたわけではないですよね。ただ、その基盤を使って広告を打ったりとか、SEO対策の会社が勝手にできたりしました。
ITが生み出す“横に広い資産”をみんなが使ってビジネスを進め、儲けていく。そのように仕込まれている部分もあるのでしょうけど、最終的にはみんなが勝手にやっているイメージが強いのです。成功しているプラットフォームというのは。
八子: ですから、ビジネスプラットフォームもある程度最初は仕込んでいくのですが、途中からは勝手に使われるようなしくみにする必要があるのです。
さらにその場合には、どの部分を自社の“強み”としてプラットフォーム上に実装していくかということを考えなければいけません。Googleの強みは、テキストの検索による広告のモデルだったわけです。
Googleの発展形には、「Google Home」があります。あのスマートスピーカーそのものは安価に売られていますよね。あれではペイしないでしょう。しかしGoogleは、音声の検索エンジンのエージェントを使ったリファレンスモデルをつくることが目的です。
Androidの1号機を出した時と同じように、それ自体は儲からなくていいけれども、自社の強みを実装したビジネスモデルで成り立っているということをリファレンスモデルとして提示したのです。
殆どのプラットフォームというのが、その“強み”が実装されていない。普通なら、自分の一番強い部分はクローズドにしたいですからね。

小泉: これからのプラットフォームに求められる要件も、Googleと同じ“強み”の部分ということになりますね。そして、さらに必要なことは、Googleが取れなかった領域のデータを取ることですよね。
なぜなら、Googleがどんなに頑張ったところで、工場のデータは取れません。インターネットにつながっていて、検索されたりするわけではありませんから。
八子: そうです。インダストリアルの場合には、現場のデータがあり、その中から自分たちが得意とするアプリケーションをつくったり分析を行う手法が確立されていること。なおかつ、その確立された分析手法やアプリケーションが、そのプラットフォームの中の“キラーアプリケーション”として提供されることが必要です。
そして、その“キラーアプリケーション”は、それ自体で儲けるためのではなく、無償で提供されていることが望ましい。
そうすると、「データは豊富にあります。成功しているモデルがあります。では、のりますか、のりませんか」という話をパートナー企業さんに問いかけることができます。特にB2Bの領域においては、そういう“お膳立て”がしっかりとなされたうえで仕掛けないと、パートナー企業さんはのってきません。
あと、GoogleやAmazon、Apple、Facebookなどと違うのは、インダストリアルな領域ではさまざまな設備が組み合わさって成立しているということです。ですから、インダストリアルな領域の場合は、複数の企業でニュートラルにプラットフォームの運営がなされているということがきわめて重要です。
小泉: データを吸い上げられるだけ、と思われてしまいますね。
八子: ええ。ですから、コマツの場合はLANDLOGを立ち上げました。他の大きなプラットフォームも、ニュートラリティを担保できないのであれば、どこかのベンダーがつくったプラットフォームということで終わってしまう可能性があります。

技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。
