日本気象協会とソフトバンク、気象・人流データとAIを活用した実証実験で食品廃棄を約13%削減

日本における食品ロスは年間約461万トンに達し、そのうち食品製造業や小売業が約3割を占めるなど、サプライチェーン全体における廃棄削減は極めて深刻な地球環境問題かつ経営課題となっている。

とりわけ、食品スーパーの惣菜や弁当などの日配品は、賞味期限が非常に短い一方で、天候や顧客の動向により需要が激しく変動するため、従来の個人の経験や勘に依存した発注や値引き運用では、過剰な廃棄や不要な欠品を完全に防ぐことは極めて困難であった。

こうした中、一般財団法人 日本気象協会とソフトバンク株式会社は、株式会社バローホールディングスおよび中部フーズ株式会社の協力のもと、農林水産省の「令和6年度 食品ロス削減緊急対策モデル支援事業」に採択され、気象データと人流統計データを融合させた実証実験を2026年1月23日から3月12日まで実施した。

同取り組みは、気象要因や人口動態、店舗の実績データなどを統合解析するソフトバンクのAI需要予測サービス「サキミル」を基盤に、需要に合わせた自動発注、最適な値引きタイミングを判定するダイナミックプライシング、そして現場への理解を促す店舗運営AIエージェントの3つを連動させるものだ。

これにより、食品ロスの削減と店舗オペレーションの圧倒的な効率化、売上総利益の向上を目指す。

具体的には、発注から販売にいたる一連の店舗運用プロセスにおいて、AIが自律的かつ高精度に判断を代行・提示することで、現場の負担を減らしながら機会損失と廃棄ロスの双方を極小化する。

まず、店舗の調達・製造計画の局面においては、降雨や降雪などの気象データや人流統計データ、実績データを反映し、商品ごとの生産予定数や最適な発注量を自動提示するAI予測モデルを導入した。

これにより、悪天候などによる急な需要変動を事前に織り込んだ自律的な自動発注が可能となり、作り過ぎによる廃棄や店舗間での発注精度のばらつきを排除するほか、店舗からの発注リードタイムを適切に延ばすことで、製造部門の原材料調達プロセスの生産性向上をも支援する。

次に、需要予測を行った後の実際の販売局面においては、店舗におけるリアルタイムの販売進捗や在庫状況、当日の来店客数予測に基づいて、各商品の適切な値引きタイミングと割引価格をAIが推奨する「ダイナミックプライシング」を適用した。

これにより、過剰な値引きを抑えて売上総利益率を担保しつつ、売れ残りによる廃棄を極限まで削減するアプローチを確立している。

さらに、これらのシステム推奨値に対して現場が「なぜその指示が出されたのか」を容易に理解し、安心して運用できるようにするため、生成AIを活用した店舗運営AIエージェントを構築した。

実績データや予測結果をもとに、推奨の背景や理由を店舗の従業員にわかりやすい自然言語で説明することで、現場の心理的な納得感を高め、業務の定着をサポートする。

なお、この実証実験は、スーパーマーケットバローの20店舗を対象に実施され、同地域・同規模の比較店舗と実証データを突き合わせる対照分析が行われた。

その実証結果によると、導入店舗における惣菜の食品廃棄量は、対照店舗と比較して12.6%という削減を達成した。

同時に、現場の担当者が毎日行っていた生産計画の策定や発注作業にかかる時間は、週あたり平均約127分から約81分へと、36.5%の削減に成功した。

さらに、食品ロスを低減させながら、欠品回数を3.2%減少させるなど、必要な商品を必要なタイミングで売り場に並べる需給の最適化を実証した。

これにより、実証店舗の売上高は+2.9%、売上総利益は+4.1%と、店舗の収益性そのものが向上するという費用対効果(ROI)が客観的に示された。

そして、この一連の効果は、実証期間が終了した現在においても、高いレベルで継続して維持されていることが確認されている。

中部フーズでは、現場でのシステムと人間との役割分担をさらに明確化させ、組織運営上の課題を早期にクリアした上で、運営するスーパーマーケットバローの惣菜部門の全店へ、このAI需要予測とダイナミックプライシングを包括した持続可能な店舗運営モデルを展開していく計画だ。

ソフトバンクおよび日本気象協会は、今回の実証で構築された「応用可能な食品ロス削減モデル」を他社や業界全体へと幅広く普及させるべく、技術面からこれを強力にサポートする。定期的にAIモデルをチューニング・見直すことで予測精度のさらなる高度化を図り、持続可能で無駄のない、スマートな流通サプライチェーンの実現に向けてデータ駆動イニシアチブを推進していく方針だ。