新潟県阿賀町は人口10,032人、中山間地域および特別豪雪地域に該当し、人口減少や少子高齢化の進行が著しい地域である。また、町中心部から遠い山間部に散在する集落が多いことから、高齢者の日用品などの買い物・医療へのアクセスについて、歩く以外の効率的な手段を提供することが課題となっている。
町の中心部から離れた地域での医療環境は、3カ所の町診療所の開設および県立病院と診療所が連携した訪問診療を行っているが、うち2カ所の診療所には薬局が併設されておらず、処方医薬品受取りのために5km以上離れた町中心部の薬局まで行く必要がある。また、広範囲に点在する集落への訪問診療では、医師などが持参していない医薬品は、20km以上離れた薬局まで受け取りに行く必要があるなど、高齢者には大きな負担となっている。
このほど、阿賀町、株式会社エアロネクスト、セイノーホールディングス株式会社(以下、セイノーHD)、KDDI株式会社、株式会社ACSL、株式会社NEXT DELIVERYは、2022年3月14日から2022年3月18日の間、阿賀町にて地域物流を効率化する新スマート物流「SkyHub」の構築に向けたドローン配送実証実験を実施する。
SkyHubは、エアロネクストとセイノーHDが共同で開発し展開する、既存物流とドローン物流をつなぐことで、いつでもどこでもモノが届く新スマート物流のしくみを指す。ドローン配送が組み込まれた、オープンプラットフォームかつ標準化したしくみで、ドローンデポ(※1)を拠点に、SkyHubアプリをベースにした配達代行、オンデマンド配送、医薬品配送、異なる物流会社の荷物を一括して配送する共同配送などのサービスを提供する。
同実証では、阿賀町2地域(鹿瀬地域、上川地域)において、鹿瀬診療所とかりん薬局と連携して、薬局から診療とオンライン服薬指導を終えた患者のいる診療所まで、処方医薬品を想定した荷物配送を行う。また、買い物弱者⽀援の物資輸送を想定し、地元スーパーからの日用品配送を行う。今回、薬局から処方薬(今回は模倣したもの)をドローン飛行で片道約7.5kmを約13分で届けることができた。なお、薬局から2カ所の診療所へのルートは、共に「無人地帯での補助者なし目視外飛行」だ。
同実証に使用する機体は、ACSLとエアロネクストが共同で開発した物流専用ドローンで、KDDIのドローンの遠隔自律飛行に必要なツールが搭載されたパッケージ「スマートドローンツールズ」に接続して運航される。
今後は、2022年度を目標に過疎地域の課題解決を目指す新スマート物流の構築に向け、各社荷物などを集約化するドローンデポとドローンの着陸地点となる複数のドローンスタンド(※2)を設置し、地上配送と将来のドローン配送を想定した買い物代行サービスから開始する予定としている。
なお、同実証は阿賀町が採択された総務省「令和3年度 過疎地域持続的発展支援交付金事業」を活用して実施している。
※1 ドローンデポ:既存物流とドローン物流との接続点に設置される荷物が集積し配送される拠点。ドローン配送のための倉庫でもあり、荷物をドローン配送できる仕組みを持つ。
※2 ドローンスタンド:ドローン物流の起点および終点に設置されるドローンの離発着のための設備あるいはスペース。
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