生産性を上げるリノベーションを考えるべき
山本:この資料は、ザイマックス不動産総合研究所毎年発表する「オフィスピラミッド」からの抜粋です。

「オフィスピラミッド」は例えば東京23区内にどういう規模のビルが何棟くらいあるのか、といったレポートが公開されているものです。これを見ると、23区内だけで築20年以上35年以下のビルが最も多い棟ことがわかりますね。
35年前といえばバブルの時代。その時に多くのビルが首都圏内に立ちました。丸の内も昔はあれほど大きなビルばかりではありませんでした。小さいビルを全て買収して、全部壊して、大きなビルをバンと建てる、ということが行われた結果、現在の丸の内が出来上がったわけです。
しかし、それらバブル時代に建てられたビルは様々な理由で設備の入れ替え等が手つかずのまま置かれているビルが多数存在するのです。
こういった塩漬けにせざるを得ないビルについては、全部壊してゼロから新築で建て直せば、今の技術でいいビルが出来るでしょう。しかし、全てのビルが建替えられるわけではありません。こういった状況があるために、リノベーション事業に各不動産会社が今どんどん参入してきているわけです。
―では、こういうビルがリノベーションする際に、IoTなどのテクノロジーを導入する、ということなのでしょうか。
山本:はい。ただしIoT化が全てを解決するわけではありません。しかし築50年経っているビルでも上手くリノベーションすれば、新築よりお金をかけずにもっと価値を上げることが出来ます。
その時に重要なのが「オフィスビルにおける仕事の生産性を上げるためには何が必要か」という視点であると私は思います。
例えばITリテラシーの低いご年配で権限を持った方たちがビルのリノベーションについての権限を持ってしまうと、「IT化よりも綺麗な絨毯やちょっといい椅子が欲しい」といった、目に見える部分に必要以上にお金をかけてしまう場合がある。しかし、仕事の生産性を上げるためには、利便性・快適性・安全性といった業務に集中できる環境を、“時代に則した手段”を用いて、いかに構築できるかが重要になります。
そして生産性という視点でIoTのビルソリューションを考えた時に出てきたのが「仕事場の環境をどう作っていくのか」ということでした。今、仕事に集中出来る環境なのかどうか、温度のムラは生じていないのか、といったことに注目すべきではないか、ということです。
不動産会社から見れば老朽化したビルの付加価値を上げつつコストは押さえて、と相反することをやらなければいけない。そんな都合の良いことが出来るのだろうか、と思うでしょうが、それを実現する技術がこのIoT化、そして内田洋行が取り組んでいる統合化の技術です。
人に対する働きかけが大事
山本:オフィスといっても人が集まる所があれば、ミーティングする場所もあるし、ちょっとした休憩場所もある。全部使い方が違います。
しかし、空調や照明は、すべて同じ温度、同じ明るさでコントロールされてしまっている。しかし熱源である人は動くし、レイアウトも変更される半面、設備は変更対応できない。それで本当にいいのでしょうか。
省エネを考えた時に、人がいない所に照明を点ける必要は無いわけです。そのような照明のコントロールは人感センサーがあれば簡単に出来てしまいますが、それすらも出来ていない所がたくさんあるわけです。
働く人の多様性に焦点を当てる、というような話がある一方で、オフィスの造りや設備が対応していません。これに対してオフィスをゾーン毎にコントロールする、という事に内田洋行は取り組んでいます。
―オフィスの環境コントロールで一番大事なことは何でしょうか。
山本:人に対する働きかけです。

ロボットの工場で生産能力を上げるためには、例えばアームを動かす回数を調整するといった事でチューニング出来てしまいますが、人間はそういうわけにはいかない。オフィスにおいては人が生産性を左右します。だからこそオフィスでは人に対する働きかけが大事なのです。
そうした人に対する働きかけについては、例えば当社のようなオフィス家具メーカーは椅子の座り心地などの探求、といった形で人間工学的なアプローチはずっと続けてきました。
一方で最後まで置き去りにされてきたのが、空調や照明などオフィス内の一般的な設備です。
―なぜ置き去りにされてきたのでしょう。
山本:先ほども説明した通り、ビジネスの分断、テクノロジーの分断の存在です。ITベンチャーの人たちは一生懸命考えてきましたが、設備を売る側はそういう話をする機会に恵まれてこなかったわけです。いかに安く空調を入れるのか、いかに故障なく動かすのか、こういう世界でした。
しかし今は空調機器も照明も簡単に壊れません。ということは、壊れないかどうかを監視するというのは当たり前で、むしろ力点はそのゾーンが最適な温度とか明るさになっているかどうか、といった“最適化”にあるのです。
―そうした温度や湿度の調節は、最終的にはどのような効果をもたらすのでしょうか。
山本:その下で働いている人に対するアプローチです。
この点はユーザーである企業も気づき始めていて、内田洋行ではこの「人に対する」というのはだいぶ前から言い始めていましたが、最近不動産会社もこういうアプローチを始めていると感じています。
結局、オフィスの利益の源泉は「人」なのです。
営業会社であれば営業担当の動きが源泉になりますし、コンサル会社だったらコンサルの力量になりますし、要は人ですよね。人がそこで心地よく、さっきComfort meets technology と言ったように、会社にいながらも自宅にいてリラックス出来ているような感じで働ければ一番いいのではないかと思います。
オフィスにおけるITとOTの融合
山本:もちろん人間関係など、テクノロジーが解決出来ない問題はあります。しかし環境を作ることにテクノロジーからアプローチすることによって、利益の源泉である人に対してアプローチ出来れば顧客や利用者の期待に応えられるというのが、内田洋行が取り組むITとOTの融合です。
そしてITとOTの融合が必要なのか、ということについては、すべて人に対するアプローチだからだと考えています。
―人に対するアプローチとしてのIT・OTの融合とは、具体的にはどのような事を指すのでしょうか。
山本:例えば会議室予約システムがありますが、普通にグループウェアから会議室予約をして「山本は今日ここを何時から何時まで予約しています」という情報を端末で確認できる、というものです。
一方、ITとOTの融合では、例えば 「10時に会議室を予約すると、10分前の9時50分にあらかじめ空調を入れて部屋を冷たくしておきます」ということをやろうとすると、会議室予約の情報を読み取って、空調へ自動的に設定されるようにしなければいけない。さらにどのタイミングでオフにするのか、会議室予約がキャンセルされた場合はどうしなければいけないのか、といったことまで考えなければいけません。
あるいは会議室予約システムと電気錠と連動した課金制のシェアオフィスの例などもあります。例えば入り口のロックを、カードキーをかざして解錠した時点から1時間25分使った場合、1時間25分×その会議室の時間単価を計算したものが自動的に課金され、その課金情報がビル管理会社の持っているデータベースサーバーに送信される。アプリケーションの世界のデータと、空調や電気錠などを連動させたあげく、システム側の方にまたデータを送り返す、といったことをやっているわけです。
―なぜ内田洋行はこのような取り組みに着手することが出来たのでしょうか。
山本:決定的な点は、内田洋行はメーカーではない、ということです。
特定のメーカーが関与すると、すべてそのメーカーのソリューションで統一することが優先されがちです。しかし私たちはメーカーではありませんので、様々なメーカーのソリューションを組み合わせて提供します。精度を求められる案件にはこのソリューション、費用を抑える案件にはこのソリューションと、すべてチョイス出来ます。
内田洋行は施主やサブコンから見ても特定のメーカー色が無いので、ビジネスの ハブになれます。さらにネットワークのこともわかるので、従来からのオフィス家具内装什器に加え、オフィスのIoT化までも全て実装が可能な、非常に良い立ち位置に私たちはいると思っています。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。
