「人」への働きかけを第一に考える内田洋行のスマートビルディング ―内田洋行・山本哲之氏インタビュー

先日「IoTNEWS」内で配信した「目的を持ってデータを取得、「人」と「デジタル」の融合を図る ー内田洋行ITフェア2019レポート」にて、内田洋行 ビル事業推進部 部長 山本哲之氏がオフィスビルのスマート化について語る模様をお伝えした。(記事はこちら)

その中で山本氏は、ビルのスマート化を進めるにおいて「働く場をどのように快適にするかという「人」に焦点を当ててソリューションを導入していく」と話していた。

今回はオフィスビルのスマート化を中心に、ソリューションが必要とされている背景や、「人」に焦点を当てたスマートビルソリューションの実例などについて内田洋行・山本氏に話を伺った。

中央監視装置の限界

―まず、御社の概況についてお聞かせ下さい。

内田洋行 山本哲之(以下、山本):内田洋行は売上の70%がICT商材です。私が所属するスマートビル事業推進部というのは、2014年に立ち上げた部署になります。

―なぜ内田洋行はスマートビル事業の部署を立ち上げたのでしょうか。

山本:そもそもの発端は震災直後に日本全体が省エネに向かい、BEMS(ビルディングエネルギーマネジメントシステム)が国の補助金を使って様々な所に導入促進されたことがきっかけです。

BEMSとは通常、中央監視機能に組み込まれているソフトウェア群で、「エネルギーの見える化機能」や「デマンドコントロール機能」などが搭載されています。

そこで内田洋行でもBEMS機能だけに特化して販売を開始しました。しかし、これが売れませんでした。なぜなら単機能の割に中途半端に価格が高かったからです。しかし世の中でBEMSが売れているベンダーとの違いは果たして価格だけなのか不思議に思いました。売れなくてもサービス自体に対する問い合わせは多かったからです。

―それでどうしたのですか。

山本:そこで提供開始から1年後、問い合わせはいただいたけど買っていただけなかったお客様に対して、スクリーニング訪問を掛けました。

そこで聞いたお客様の困りごととは「見える化したことは良いけれど、この後どうすればいいのかが分からない」ということでした。要するに安いBEMS製品は「見える化」して終わりなので、問題発見は出来たが、省エネといっても電気を使わないわけにはいかない。「見える化」したその後はどうすればいいのか、多くのお客様は困っていたわけです。

―そこで「見える化」だけではなく、それに基づくビルの制御に取り組まなければいけない、という話になったわけですね。

山本:いろいろ調べてみると、実は一般的なビルには、空調や照明などが正常に稼働しているのかを見る中央監視装置というものが付いていることが分かりました。

しかし、中央監視装置はプロフェッショナルの領域すぎてメーカーも限られ、メーカー独自の技術で構成されたアーキテクチャーがほとんどでした。加えてパソコンとプリンタはメーカーが異なっても容易に接続できますが、中央監視装置は異なるメーカーデバイスが容易に接続できない壁がありました。

まず中央監視装置で収集すべきデータは電力だけでなく、電力消費の原因となる設備機器の運転に関わる、温度、湿度、CO2濃度、照度といった環境データが必要になります。しかしデータ収集のデバイスである無線センサーも当時は日本メーカーでは品揃えが限られていました。

進む海外、遅れる日本

山本:そこで北米とヨーロッパを訪れ、IoTの源流を見てきました。すでにその時点で、様々なセンサーを用いて短距離無線でデータを送り込み、取ってきたデータを「見える化」することが、ヨーロッパ・北米では進んでいました。

―具体的にはどのようなセンサーだったのですか。

山本:実際に無線センサーで設備機器がコントロールされている企業を視察しました。

それらの企業では、空調・ブラインド・照明などを、無線センサーで収集したデータと連動させて自動で動かしていたのです。これが日本では見当たりませんでした。

―現在では日本でもセンシングだけでなく、制御の部分に重点を置くようになっていると思われますが。

山本:確かに「アクチュエーターにセンサーが取ってきたデータを連動させるということが必要」だということが、ここ何年かのIT系のコンサルティングファームから提言され始めています。

しかし、実際にセンサーデータの取得から制御までの流れに取り組もうとしても、技術の分断・ビジネスの分断があると私は考えています。

トイレの空き状況などを全てセンサーでクラウドまで上げるという、単品のソリューションの月額モデルは現在多いですが、「クラウドまで上げて分析」で終わっています。なぜなら、空調・照明といったOT(Operating Technology)は電気信号で動く。その電気信号をネットワーク信号に変換しなければ遠距離を飛ばせません。その、電気信号で動くところをネットワーク信号線に変えるというところが、日本企業は出来ていませんでした。

日本企業がネットワークを整備できなかった理由としては、いろいろ考えられますが、計装分野の企業の独自技術で統一された構成がスタンダードだったために、異業種のテクノロジーとの混在が容易でなかったことが挙げられると思います。

―海外は違うのでしょうか。

山本:ヨーロッパ・北米ではオープン・プロトコルというスタンダードなネットワーク信号で制御出来ていて、ネットワーク信号と電気信号を変換する装置が入っています。

そして海外で見てきたネットワーク基幹線は、BACnet/IPがスタンダードでした。

通常ビル建築においては計装業者が、中央監視装置を担当するため、計装業者の保有製品に依存せざるを得ないのです。しかし、海外で見たBACnet/IPを基幹線とした設備制御の機器構成は、従来のクローズドな構成から、ネットワークで様々なデバイスが接続されており、“オープンテクノロジー”こそがキーテクノロジーだと感じました。ネットワークでの接続が可能になれば、パソコン系でスタンダードなTCP/IPやWiFiと、設備系でスタンダードなBACnet/IPやLonworks、Modbusなどが接続できるのです。

そうした複数のネットワーク技術を用いた統合化を行っているのが内田洋行です。だから、内田洋行は自分たちのことを「繋ぎ屋」と呼んでいます。

快適性とテクノロジーの出会い

山本:ヨーロッパを視察した時に、ある重要な考え方を学びました。それはドイツで開催された展示会の「ISH2015」全体コンセプトとして打ち出された「Comfort meets technology」=快適性とテクノロジーの出会いです。

パンフレットのリード文「Future Building Concept」には、以下のような内容が書いていました。

1つはビルの運用管理者やシステムプロバイダーだけではなく、ネットワークの運用者がビルの運用管理をより先進的なものにしていく、ということ。

2つ目はビルサービスエンジニアリングだけではなく、ITナレッジも求められているということ。ビル管理は清掃業務が収益の主な柱でした。しかし、これからはITのナレッジが必要になってくる、ということも明確に書かれていました。

3つ目は組み込み分散型ソリューションが展開される、ということです。

―やはりドイツの方が日本より考え方が進んでいたということでしょうか。

山本:そうです。日本は当時省エネだ、と言っていた時に、ドイツではすでに快適性や利便性といった一歩踏み込んだ課題に取り組んでいたのです。内田洋行が現在取り組んでいるのは、まさにいま挙げたリード文のような内容のものです。

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