マイクロソフトの先進的なIoT事例  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(3/3)

日本マイクロソフト株式会社 マーケティング&オペレーションズ クラウド&エンタープライズビジネス本部 クラウド&サーバー製品マーケティング部 エグゼクティブプロダクトマネージャー 大谷健氏へのインタビュー最終回は、マイクロソフトにおけるIoTの事例について伺った。

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マイクロソフトのIoT事例

マイクロソフトのIoT事例  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(3/3)

事例を2つご紹介します。まずは世界の事例ですが、ティッセンクルップというヨーロッパのトップエレベーター会社です。この企業は世界でエレベーターの販売、保守をやられています。広大なアメリカや、新興国中国にエレベーターを納入していましたが、悩みとしては納入した後の保守サービスというのが高品質で運営が難しいというところにありました。

特に新興国ですと、まだ熟練の保守員が育っていないですし、更にいろいろな都市部の距離が離れているので保守コストというのが結果として非常に高くなっていたので、なんとかそれをグローバルで均一化して保守サービスの品質を上げたいという要望がありました。さらにエレベーターを購入したお客様に付加価値を与えて、差別化したいというニーズもありましたので、IoTにフォーカスを当てマイクロソフトと共にエレベーターのIoT化を進めました。

IoT化し、マシンラーニング(機械学習)でビックデータを活用すると、予兆保全でどのパーツがどういう動きをすると壊れるという予測ができるようになりました。例えば、この国のこの場所のエレベーターのこのパーツが壊れそうですというアラートを上げる仕組みが実現したのです。この仕組みを活用することで、それほどスキルが高くない保守員でもその壊れる可能性のあるパーツの交換方法のみを育成してその地に送れば、未然にエレベーターのダウンタイムが発生する前にパーツを入れ替えて保守が完了するのです。

今までの定期メンテナンスではなくて、オンデマンドで対応していくということが実現できました。このソリューションはお客様に受け入れられ、更にこれを全世界に展開していきました。とはいえ、本格導入までにかかった期間はたった2年です。

このソリューションを構築するのに2年で実現できたのは、やはり持たざるITの概念でクラウドを活用いただいたからと考えています。サービス自体はMaxと呼ばれていますが、実はAzure IoTサービスを使っていただいています。 ティッセンクルップは取り扱う世界18万台のエレベーターに対して、「2017年までにこのサービスを展開していきます」ということも既に宣言されていらっしゃいるのです。

これは保守サービスのIoT化の例ですが、ビジネス改革という点で申し上げますと、今までは保守費用を人月で計算して、モノに対してパーツが壊れたらそれを追加請求してみたいなことを行っていたのが保守サービスビジネスでしたが、今回保守サービスをIoT化したことによって、彼らはエレベーターの稼働率で、SLAを契約の課金対象に変えられるようになりました。

エレベーターの稼働率をもとに保守契約する。つまり、エレベーターが99.9パーセントの稼働率を維持できればいくらくださいという契約になったので、故障させないことに越したことがないわけです。そこで、効率的にIoTを使って、エレベーターの稼働率を上げておく遠隔監視さえできれば、保守員が行っても行かなくてもいただける保守費用というのは変わりません。よりIoTによる予兆保全の精度を上げていくメリットも出てきて、それに投資することによってまだ保守員が育っていなかったとしても、落ちないエレベーター保守、落ちてもすぐにダウンタイムが発生する前に予知してパーツを替えるということに切り替えたので、もう既にその部分だけでものすごいコストセービングが実現されておりビジネス変革できているという試みをやられている先進的な事例です。なかなかここまで踏み込む日本の企業さんは少ないのではないかと思います。

 
-今のお話をうかがっていると保守員がスケジュールが組みやすくなりますよね。突発的に行くことばかりではなくなるので、多分段取り良く「今日はここのビル行ってね」みたいなことができるから、トータルで見るとその方がコストも多分下がりますよね。

はい、効率化が格段に実現できると思います。もう一つの事例は、インダストリー4.0の文脈で我々が先進的に取り組んでいるKUKA様です。KUKA様は産業ロボットを作ってらっしゃるドイツのメーカーになります。

Kuka’s next generation robots use IoT to create smart factories

ビデオのからくりを簡単に説明すると、KUKA様のロボットがコントローラーにつながっていてOPC UAという製造業の標準プロトコルを使っています。この標準プロトコルの団体がOPCという団体で、マイクロソフトもここにはかなり寄与させていただいています。このコントローラーを使ってAMQPというプロトコルを使ってクラウドに上げて、その後は我々が持っているIoT Suiteのパーツを使って、保守メンテナンスをやっています。

ビデオでは、塩ビ管のマシン作業をやっている時にエラーが出たので、先ほどのこのスタッフの方にMicrosoft Bandに通知を送って、何か問題があるから行ってくださいというアラートが飛んで人員が駆けつけました。顔認識でこの人はある程度スキルがある熟練オペレーターと分かりましたので、このウェアラブル端末のロボットコーチングをつけて、必要に応じて必要な情報だけを提供することによって補完しながら保守作業に入っていただいて、壊れたものを治していくというような作業を行っています。まさに人とモノが協調して、ラインが実際にダウンする前の修理サービスをトータルで実現しているよい例だと思います。

マイクロソフトのIoT事例  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(3/3)

さらにこういった情報が経営層やサプライチェーンに対してリアルタイムで送信されるので、その対応も後から慌ててやるのではなく「リアルタイムでこういうことが起きている、じゃあこういうことをしましょう」ということがプロアクティブに対処できるようになります。これは工場にデータが閉じているとできないことです。

工場の外にデータが出て初めてできるということも、先ほどのビデオでご紹介させていただきました。日本の閉じた世界と、外に出た世界というところで大きく違うところではないかなと個人的には思っています。

 

マイクロソフトのパートナー制度

現在、IoTをより推進していくためにMicrosoft Azureにたくさんのデバイスがつながることを、事前に認証していく取り組みに力を入れていこうと思っています。

日本は今多くの企業が申請中ですが、これはもう本当に3桁位の認証数を一気にいきたいようなところで今プランをしております。安全に安心してつながるデバイスが日本でもどんどん増えていく環境を作って、加速していくためにも、先般発表させていただいた「IoTビジネス共創ラボ」としても賛同企業を1年に100社に増やすという目標を宣言しておりますが、おそらく100社はすぐに達成できると考えています。

 

今後の方向性

製造業についていうと、もし純粋に生産性の向上だけを追うのであれば、今までのM2Mのままでもいいのではないかと感じています。私も現状では「何で外にデータなんて出さなくちゃいけないの?」とお客様に聞かれた際、その答えが難しいです。

ただ経営者が求めているのは、売上を最大化することですので、工場やその工場の関連する周辺の人に対してもデータを可視化ことによって、今まで気付かなかった気付きを与えることができるということなのです。

では今日の世界の製造業が積極的に取り組んでいる一方で「セキュリティ危ないから、データをクラウドへ出さない」という日本の製造業が陥りがちな考えは果たしてそれでいいのでしょうか。データを外に出すことによって、個別最適化から少し全体最適化の世界に進んでいくと思うのです。でもこれは自社内やサプライチェーンなどある程度守られた世界の人のデータの共有なので、閉じた世界ではいつか限界が来るでしょう。

そこを考えると明確なビジネス改革を起こすためには、モノ作りのデータ自体が外部との連携、今までお付き合いしなかった人との連携であったり、オープン化することによってオープンイノベーションが生まれるのではないかと思うのです。そういう奇抜なアイディアを持つスタートアップと組むことも、さらに新しいIoTソリューションというのが生まれるきっかけになるのではないかとということも期待しています。

そういう意味では先ほどご紹介した「IoTビジネス共創ラボ」そのものがスタートアップと製造業や小売業のマッチングなどをも目的としています。それをやらないと更にその先にあるビジネス改革というものに結びつかないのではないかなと、我々は考えております。

あとよくある議論なのでここでご紹介しておくと、製造業、物流、小売、金融など、「すべてエッジが安全なのである」という議論はあったと思います。それはそれで生産性の向上までは実現可能だと思います。ただ我々はやはりそれでは将来的な本当のビジネスインパクトは出ないと考えています。製造業をはじめとして、いろいろな業界にあるエッジのデータがうまくクラウドと有機的につながり、クラウドをビッグブレインとして各エッジにスモールブレイン、小脳と大脳の関係みたいな形で協調していくことでビジネス改革にまで結びつけられるのではないかと考えています。

さらに実例をご紹介すると、我々のパートナー企業でもあるFogHornさんですね。最近ではエッジやフォグと言っていると思いますが、このFogHornさんは、エッジソリューションをお持ちです。Linuxのゲートウェイを工場、小売などいろいろなモノのある現場に設置していますが、機械学習を終えたモデルを活用してある程度のエッジで分析できる頭脳として機能しています。

マイクロソフトのIoT事例  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(3/3)

時間が経つにつれて、そのモデルが陳腐化したときにブラッシュアップしなくちゃいけないので、あらかじめデータをバックエンドのクラウドに上げています。最新のデータがどんどんクラウドに上がって最新のブレインにブラッシュアップして、できあがったブレインをまた移植して戻すという小脳と大脳の関係をもう既に構築していただいています。

これはMicrosoft Azure Marketplaceから、ボタン一つクリックするだけでデプロイできるところまで仕上がっているソリューションを活用いただいているからです。このソリューションがいいのですというよりは、こういったエッジとクラウドが共存しあうことで、お客様がやりたい生産性の向上、売上の拡大、そしてビジネス改革というところに一歩でも近づけるのではないかなと思っております。

 
-もう一つ、M2Mというか工場周りのことをやっているとどうしても、工場の人達がIoTに向かいたいといっても、実際工場を構成しているラインは別の会社が作っているものですから、そのセンサーがちゃんと付かなかったり、生産性改善しようと思ってもトータルでできる前にあまり一番現場の末端の情報が取りづらいケースがよくあると思います。そういうは何か支援されるのでしょうか。

我々が今申し上げている、工場の中に置いてあるたくさんのモノがインターネットにつながるという世界ができれば、そのデータを使って工場最適化ソリューションという、全く新しいパートナーさんが出てきてサービスを提供し始めてもいいわけですよね。

ある意味、各パーツ屋さんが閉じた形でIoTをいくらやったとしても、そこはその1パーツでしかないので工場の最適化自体はできないと思います。

それはたくさんのパーツが繋がっていく世界というのはマイクロソフトが作っていく、その支援としてこの認定プログラムもあります。製造業の世界ですと例えば三菱電機さんとオムロンさん、横河電機さんと、プログラマブルロジックコントローター(PLC)や生産制御システム(DCS)この二つの種類で、例えばPLCの世界だと三菱電機さんやオムロンさんで市場の大半をカバーされているので、我々も協調して、さらにパートナーシップを組んで対応してく予定です。

やはり工場の世界でもう既に繋がっているというのが前提で、コントローラーにもうデータは溜まっています。こういった製造業であればキーとなるパートナーさんと組むことによって、ほとんどの工場内のデータはこのゲートウェイを集約してクラウドにつながるという世界がすぐに実現できると考えています。

IoYT    日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー

 
-Azure上でということですよね。

はい、Microsoft Azureを上手く使うのですけれども、オムロンさんがエンドユーザーではなくて工場に彼らが納品しているPLCをうまく核にしたIoTサービスというのを展開されるといったような可能性もあると考えています。

 
-大いにあるでしょうね。

はい、我々は今までオムロンさんを我々のエンドカスタマ(お客様)と捉えて接していましたが、IoTの分野においては、オムロンさん我々にとっては強力なIoTパートナーになると捉えております。マイクロソフトのビジネスの中では、今かなりエンドユーザーとパートナーの垣根が、無くなってきているのも確かです。

そうなってくると違いは、クラウドパワー持っているか持ってないかの違いになってくると思います。現場の深部まで入りこめているかも重要で、例えば我々はPLCオムロンさんの機械にはSQL Serverが入っているので、もうデータが取れています。これをクラウドにつなげるということは今なら本当に簡単にできるのです。

そうなってくると「製造業は、もう入っているオムロンや三菱のPLCを使ってクラウドにつなげばいいよね」となります。「もうプロトコルも全部、OPC UAだよね。クラウドにいくときは、AMQPだったりMQTTだったり標準的なモノを使えばいいよね」というところで、クラウドファーストでIoTは進化していくのではないかと考えています。

 
-本日はありがとうございました。

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