「Internet of Your Things」を掲げるマイクロソフトのIoTプラットフォーム  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(2/3)

日本マイクロソフト株式会社 マーケティング&オペレーションズ クラウド&エンタープライズビジネス本部 クラウド&サーバー製品マーケティング部 エグゼクティブプロダクトマネージャー 大谷健氏へのインタビュー続編。

IoTの伸びしろは7兆円、マイクロソフトが考えるIoTとは  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(1/3)
「Internet of Your Things」を掲げるマイクロソフトのIoTプラットフォーム  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(2/3)
マイクロソフトの先進的なIoT事例  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(3/3)

 

マイクロソフトのプラットフォームサービス

IoYT  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(1/3)

プラットフォームサービスは、一言で表すと「お惣菜」ですね。先ほどインフラのCPUストレージネットワークは人参・ジャガイモ・玉葱という、素材としてのコモディティのお話をしましたけども、もう少し調理をして少しずつ食べられるような状態にして出していくものが、お惣菜Platform as a Service(PaaS)だと考えていただければわかりやすいかと思います。

APIエコノミーというかっこいい言葉をIBMさんはつかっていますが、要するに、1からパーツを一つずつ作るのはやめましょう、すでに我々が提供する機能群をAPIでつなぎ合わせて開発スピードを上げましょうという思想です。いわゆるPlatform as a Service(PaaS)とも言われている部分です。PaaS領域では、IDCのMQでもリーダーポジションを獲得することができています。

マイクロソフトはここに約6年前からこのプラットフォームサービスでクラウドビジネスをスタートしていますが、最近になってビッグデータ、そしてIoTを始めていただくためのパーツが急激に整い、お客様に提供させていただいています。これから作るのではなくて、もう既にこれらのパーツがMicrosoft Azureというクラウド上でIoTないしはビッグデータの分析をするために、既に整っているという状況なのです。

IoTの領域において、安くて使いやすいクラウドを単に選択すれば良いかというとそうでもなくて、そのクラウドは安全なのですか?という点はとても重要だと思います。この点に関してマイクロソフトはISO27001というベースになるセキュリティの標準コンプライアンスの準備をして、各世界にある様々なセキュリティや、法に対するコンプライアンスを遵守しておりますので、企業様も安心して使っていただけるクラウド、唯一のエンタープライズグレードのパブリッククラウドと言っても過言ではありません。

あと、サイバークライムに対しての対策に関しても選択時に見て置くポイントですね。マイクロソフトは実はペンタゴンに次いで二番目にサイバーアタックを受けていると言われています。あまり嬉しくない名誉ですが事実です。しかしマイクロソフトは様々なオンラインサービスを安全に提供するとともに、お客様の情報を安心・安全にクラウド上でお預かりいます。このノウハウは、まさにMicrosoft Azureのクラウドのインフラを運用するノウハウとしても活かされていますし、今このサイバークライムも含めたセキュリティの運用ノウハウのを共有する目的で日本を含め世界中にサイバークライムセンターも設置させていただいています。

「IoYT」を掲げるマイクロソフトのプラットフォーム  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(2/3)

 

マイクロソフトのIoT

マイクロソフトが考えるIoTというのは4つの構成で表現できます。1.)モノ と、2.)モノから出てくるデータを安全につなぐコネクティビティ と、3.)そのデータを保存するデータプラットフォーム、そして 4.)それを活用・分析するためのアナリティクス、この4つでIoTを捉えています。

ここからがITの世界から出ていく話なので、ITの方とお話するといつもつまずいてしまいがちなポイントでもありますが、逆に経営者が今一番期待しているところがIoTでもあります。経営者の視点でIoTはどういうモノかと考えると、下記図の一番右側ですね。

「IoYT」を掲げるマイクロソフトのプラットフォーム  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(2/3)

経営者が考えているのは当然KPIを含め考えていくわけですが、もちろん生産性の向上、工場内のコストの削減も含まれます。しかしこういったところは当たり前のようにM2Mの世界でもずっとやってきたことなのです。IoTに期待していくのは「更に売上を拡大できないか?」というところと、今までやってきたことにプラスアルファ、もしくは違うビジネスモデル、つまりビジネス改革、トランスフォーメーションやイノベーションという部分が実現できるのかという点です。今までやっていなかったことを、IoTで実現したいということに経営者は期待を寄せています。

M2Mであれば工場の中、店舗の中、医療現場の中に閉じたデータの可視化や効率化をやっていて、それはモノとモノが単につながることでした。私がお伝えするプラスアルファというのは、そのデータが外に出て何がしかの価値を生み出す、それが売上に貢献する、もしくはビジネス改革を行なうというところまで、到達して初めてIoTなのです。これを今経営者はIoT、現場に対して最も期待していることであると捉えています。

しかし、モノと経営者の間にすごくギャップがあります。セキュリティ大丈夫なのか、たくさんのモノがつながった時にキャパシティ、容量は足りるのかという疑問も併せて出るのです。

先ほどもお話したように、現場の人は「クラウドのことは分かりません」、経営者も「その辺はよく分からない」とおっしゃいます。「いくら投資すればいいのだろう」と、「いくら返ってくるのだろう」という話になったときに我々マイクロソフトが提案するのは、「そんなに投資しなくてもセキュリティのこともできるし、キャパシティの心配もしなくていいのが信頼できて拡張できるクラウドじゃないでしょうか」と。

つまりこのデバイス、コネクティビティ、データアナリティクス、これらをある意味「一気通貫して提供できるクラウドサービスがあったら素敵じゃないでしょうか」、「それを操るのがこれからのIT部門の役目じゃないでしょうか」ということを、マイクロソフトとしてご提案させていただいております。

マイクロソフトはIoTを「Internet of Your Things」、「IoYT」という言葉を一つのビジョンとして表現しています。何でもかんでも新しいIoTのデバイスとクラウド環境を買ってくださいというのではなくて、既にお客様が持っている資産をクラウドにつないでクラウドのコンピューティングの力を使ってIoTの成果、つまりビジネスインパクトを早く出す、まさにここをお手伝いしたいというのが、マイクロソフトのビジョンです。

「IoYT」を掲げるマイクロソフトのプラットフォーム  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(2/3)

上記図の左側がモノ、センサーやデバイス系から、実際にユーザーが使う端末、インターフェイスの部分まで一気通貫してテクノロジ、パーツをご用意させていただいています。しかもこれがクラウド上で全てのパーツが用意されているというところがまず、一つの我々が提供させていただいているIoTをクラウドで実現する価値になります。

もう一つは何度も申し上げるのですけれども、我々が目指しているのはM2Mではありません。M2ヒューマンと言いましょうか、Machine to Human。これまでマイクロソフトは多くの人と人をコンピューターでつないできました。IoTの本当の価値というのはモノと人がつながるところだと思ってますので、人が生産性を上げるためのインサイトを提供する人中心のIoTというのを実現していきたいと思っています。

もちろん、人が介在しない場合もあります。モノの分析から自動化させて、何らかのアクションを起こしていくというIoTです。IoTは自動化・省力化というメリットもありますが、人にもたくさんのモノを伝えていかなければならないので、そういったことも含めて、人と協調していくというところが我々が考えるIoTになります。

  

Azure IoT Suite

「IoYT」を掲げるマイクロソフトのプラットフォーム  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(2/3)

このビジョンを更に推し進める形で、昨年9月末に提供開始したのがAzure IoT Suiteというサービスです。我々は先ほどもご説明した、すぐにお使いいただけるお惣菜パーツをたくさん用意していますが、やはりお惣菜を使える人というのはある程度調理が出来る人なんですよね。

つまり、ITに長けた人。ITに長けた人は既に2年前からお惣菜パーツを使って色んなことをカスタムでお試しいただいていましたけれども、我々がやりたいのはもっとその垣根を低くしていきたいというところです。今回これをIoT Suiteというあらかじめ構成済みの形でソリューションパック化し、3つのシナリオを想定して提供させていただいてます。

それが遠隔監視、資産管理、予兆保全です。これはお客様が「IoTやりたい、私はモノがデータにつながってデータ持っています」という状態であれば、データさえ渡していただければ遠隔監視、予兆保全 というものが、すぐにスタートすることができます。

IoTをはじめるのにROIや、詳細の計画立案ばかりに、時間がかかってしまうのは避けたいと思っていますし、実際そこで詰まっているお客様もたくさんいるので、「いやいや、もうやる前にまずスタートして、プロトタイプでやってみましょうよ」とお伝えするようにしています。

最初から一度にお客様が巨額のIT投資を出来ないのは十分に理解しています。では月額10万だったらどうでしょうかと、まずは最小限でスタートしてお試ししていただくために、この Azure IoT Suite をご用意させていただいています。

Azure IoT Suiteを使って、まずはお客様のモノから得られるデータを我々のMicrosoft Azureのつないでいただいて、遠隔監視をするのか予兆保守をするのか、資産管理をするのかというのを選んでいただけるようになってます。お試しいただいたその結果、「PDCAでこの部分足りない」、「じゃあこの機能を追加していこう」という議論がやっと始まると思いますので、そこの部分までの時間をまず投資と時間を短くする、というところがAzure IoT Suiteを採用いただく最大のメリットになります。

あと、よく「マイクロソフトだから、IoTでつなぐことができるデバイスもWindowsだけでしょ」とおっしゃられる方が多いんですよね。もちろんWindowsで接続は可能です。Windows自体もWindows10が最近出ましたが、IoTに特化したOSとして開発されておりますし、無料でIoTコアというバージョンを提供したりしていますので、そこはエンドtoエンドで最高のIoTエクスペリエンスを提供できるという自負はあります。

しかし250億、500億、それ以上のモノがインターネットにつながる時に、全部Windowsで実現されるとは考えていません。マルチデバイス、マルチOS対応できるように様々なデバイス向けのSDKを用意・拡充させていただいて、Microsoft Azureにつながるような準備も、このIoT Suiteでは提供させていただいています。経済的にも技術的にも垣根を低くしたというのがこのIoT Suiteです。

 

マイクロソフトがねらう、「ビッグデータの民主化」

弊社にとってIoTの取り組みというのはモノをインターネットにつなぐというデータの収集部分でしかないと思っています。我々の狙いは「ビッグデータの民主化」です。

ビッグデータをどういうふうにお客様に価値を生み出していくか、ROIを出していくかというところが最終形としてマイクロソフトがお手伝いしたいことなのです。
「そのビッグデータの民主化をどう実現するのか」という質問に対する答えは、Azure IoT Suiteとを補完するための「Cortana Intelligence Suite」という、マイクロソフトのビッグデータソリューションだと考えています。

「IoYT」を掲げるマイクロソフトのプラットフォーム  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(2/3)

Cortana Intelligence Suiteのビジョンはインフォメーションマネジメントというデータを収集してくる部分(図左側)です。先程お話したセンサーやデバイス、こういったIoTも含む様々なデータのソースがあります。

他にも既存のERPやいろいろなアプリケーションから、データが出てきます。これを安全に収集して加工するという作業をするのが、このインフォメーションマネジメントです。

IoTですとAzureイベントハブとか、今ここに書いておりませんがAzure IoTハブという、IoTのデータを収集するために特化型のサービスがあります。まずはデータを取得します。取得したデータは保全しないといけませんので、次の「ビッグデータストア」というところに保存します。

大きく分けて構造型データとそうでないモノと分かれた時に、構造型データというのは使う用途が決まっているから構造型にしておく価値がありますが、IoT時代は使うか使わないか分からないデータも結構ありますので、使う前に生データで一旦保存したいという要望が出てきます。

それを叶えるために、図の一番上にあるのが、Data Lake、Azure Data Lake Storeというデータの泉のような感じで、とにかく生データもしくは半加工したデータをとにかく保存する場所をご用意しています。「いや私は使うよ」と分かっているから加工化した構造化したデータを置きたいという場合には下のAzure SQL Data Warehouseへ、そのどちらかを選んでいただくというようなイメージです。

ビッグデータが増えれば増えるほど、際限なくペタバイト、エクサバイトの世界までデータが保存できるのがデAzure Data Lake Storeですし、ペタバイト級の構造型データを保存できるのがAzure SQL Data Warehouseなので、ビッグデータでこれから加速度的にIoTデータが増えていったとしてもカバーできる容量を弊社のクラウドは提供でき、お客様のニーズに併せてスケールアウトがいつでも可能です。データがもし国内から出てほしくないということであれば、国内2か所の地域にデータを複製して、国内に閉じた形でのサービスも提供できるというのが、我々の特徴ですね。

データは保存するだけでは、価値を生み出さないのでマシンラーニング(機械学習)やアナリティクスというデータの活用サービスを提供しています。これまで統計の専門家でないとできなかったようなところをデータさえあれば統計の専門家のように分析いただけるのも我々の1つの強みです。これがAzure Machine Learningというものですね。

またビッグデータというとやっぱりHadoopがこれまで活用されてきたと思いますが、このビッグデータを運用するための基盤Hadoopを既に構築して使えるためにマニュアル車をオートマチック車にして運用しているようなイメージなのです名前はHDInsightと呼んでおり、 Hadoop as a serviceだと覚えていただければ嬉しいです。
Azure Stream Analyticsという、ストリーミングデータを分析するという、これは一般用語で言うとコンプレックスイベントプロセシング(CEP)と言われているところです。このあたりも一連の分析サービスとして提供しております。

さらにお客様にアウトプットを出し、ビックデータを可視化する1つのツールとして「Power BI」があります。こちらは、データ分析の結果をリアルタイムにダッシュボードで見える化できる無償のツールです。

最後に、Cortana Intelligence Suiteの最も特徴的なIntelligenceサービスをご紹介します。

まずは、Cognitive Servicesでは、顔認識や画像認識、スピーチ、テキスト認識こういった人工知能の基礎になるディープラーニングをAPIサービスで提供しています。そして、Bot Frameworkは、自然言語を理解できるクラウドサービスです。そして、3つ目は、音声で人間と対話できるCortanaというパーソナルデジタルアシスタントもありますので、こういったモノから今後クラウドに分析をリクエストすることができるようになります。

こういった各種の機能を兼ね備えたのがCortana Intelligence Suiteです。さきほども申し上げた通り、IoTはあくまでデータを収集して最初の一歩を踏み出し、取得されたデータを可視化分析し、経営判断にお使いいただく。そのポジティブスパイラルの繰り返しから、全社的なIoTの取り組みとしてお客様が達成されたいことを深く支援していければと考えています。

 

マイクロソフトの機械学習

「IoYT」を掲げるマイクロソフトのプラットフォーム  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(2/3)

マイクロソフトの機械学習は1991年にMicrosoft Researchという会社を立ち上げたところからはじまります。それから25年近く、我々が提供してきたこれまでのマイクロソフトの各種サービス、Hotmailなどで活用されてきました。例えば迷惑メールの判別であったり、BingマップやBingサーチというその検索エンジンであったり、地図であれば目的地への最短距離の提示だったり、これらも全て機械学習のテクノロジを使っております。

最近ですと2010年ぐらいから、人の動きを認識するためのモーションセンサーのKinectや、Skypeの中にSkype Translatorなどで人の言葉を認識していく、言葉を多言語に通訳していくといった世界も、我々が提供する機械学習機能の1つといえます。

こういったさまざまな研究の成果や実サービスの提供から我々が得られたノウハウを、Microsoft Azure上では、Azure Machine Learningというサービスで、従量課金制でご利用いただけるような形にしています。

Azure Machine Learning以外にも、ディープラーニングの世界で、画像、顔、音声、そして言葉、意味解析というものがあります。IBMさんが「Watson」でかなり市場を賑やかされてていますが、我々マイクロソフトではより実用的なレベルでこれらのテクノロジが使われています。

最近では、Emotion APIというテクノロジを使うことで、例えば顔を判別させた際に本人か本人じゃないかという識別だけではなく、顔の表情を見てその人が嬉しいのか悲しいのかという、顔があらわしている感情まで識別できるところまで実現していますので、本当に人間の脳に近いところまで来ているのじゃないかなと個人的には感じます。

IoYT    日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー
IoTNEWS代表 小泉耕二

 
-そういった意味では、IoTNewsで捉えているIoTはわりとマイクロソフトさんに近いイメージです。センサーやモーターでアクチュエートするみたいな話に限定すると、産業としてはすごく小さい話になってしまいます。

いわゆるERPとかSFAみたいなモノともちゃんとつながるということですよね。マイクロソフトさんはサプライチェーンマネージメントの概念が出た頃に、自動車ディーラーでタブレットを操作したら、それが工場に伝わって色をパーソナルに塗り替えるというテレビのコマーシャルでやられていたじゃないですか。正にああいう世界ですよね。ああいうところまでいって、生産効率がどうなったとかあるいは売上どうなったみたいなことも、全体をこうダッシュボードとして見ていくという流れができるのだと考えています。

 

3記事目へ続く。

IoTの伸びしろは7兆円、マイクロソフトが考えるIoTとは  -日本マイクロソフト 大谷氏インタビュー(1/3)
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