国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)は、同一空域で複数事業者のドローンが安全に飛行するための運航管理システムの開発や、福島県南相馬市・浪江町にある「福島ロボットテストフィールド」における運航管理システムの実証試験などを実施するプロジェクトを進めており、将来的には国際標準への提案を見据え、あらゆるドローン事業者が安心・安全にドローンを運航できる社会を目指している。
運航管理システムでは、ドローン事業者が運用する「運航管理機能」が、「運航管理統合機能」および「情報提供機能」に接続することで、ドローンの飛行計画やリアルタイムの飛行状況、飛行禁止空域など空域の安全に関する情報などを、他のドローン事業者と共有することができる。
具体的には、運航管理機能は、運航管理統合機能が提供する複数のドローン事業者間で飛行計画(どの経路やエリアで飛行させるかの計画情報)や飛行状況(ドローンの位置、高度、速度などのリアルタイム情報)、空域情報(飛行禁止空域や地表障害物などの情報)などの情報を共有するサービスを利用することで、同一空域で複数のドローン事業者がドローンを飛行させる場合でも相互の情報を共有できる。
また、情報提供機能が提供する地図情報、気象情報を利用して、ドローンを飛行させるのに必要な情報を入手することができる。
先般、福島ロボットテストフィールドの総合管制室に、複数のドローン事業者が情報共有するための運航管理統合機能を提供するサーバーを設置し、2019年8月30日に稼働した。また、運航管理システムのAPI(※1)の利用規約の整備などを行った。これにより、NEDOプロジェクトに参画していない一般のドローン事業者でも、APIを介して同サーバーに接続可能とした、運航管理システムとの相互接続試験の環境を構築した。
そして今般、NEDOと日本電気株式会社(以下、NEC)、株式会社NTTデータ、株式会社日立製作所(以下、日立)、株式会社ゼンリン、一般財団法人日本気象協会、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構は、福島県南相馬市、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構の協力のもと、福島ロボットテストフィールドで2020年代のドローンが普及し社会実装した将来を想定して1時間1平方kmに100フライト以上のドローンの飛行試験を実施した。
具体的には、福島ロボットテストフィールドの総合管制室に設置したNEDOプロジェクトに参加する17実施者のドローンと、NEDOプロジェクトに参加していない一般のドローン事業者12社が情報共有するための運航管理統合機能のサーバーや、先般公開した運航管理システムのAPIおよびAPI接続支援サービスを利用して、ドローン運航管理システムの相互接続試験を10月23日から24日に実施した。
同試験では、一般のドローン事業者が参加できるようにネットワークを介して運航管理統合機能と情報提供機能へ接続した。そのため、ネットワークの安全性を向上させるため、ファイアウォールとIDS(侵入検知システム)を設置し、接続する事業者には認証キーを配布し、認証された事業者のみに接続を許可した。
また、一般の事業者向けにAPIへの接続を支援するサービスを提供した。飛行計画の申請、承認/否認の結果確認をWebサービスとして提供し、インターネットブラウザで飛行するエリアと時間を申告することを可能とした。さらにドローンが飛行中に自分の位置や速度を運航管理システムへ報告するために機体に搭載する運航管理デバイスを提供した。
さらに、複数ドローンによる気象観測、複数ドローンを隊列飛行させた物流など、複数のドローンを同時に運用するケースを想定した飛行計画や飛行状態の管理を可能にした。そして、これらのドローンを安全に運用するための空域利用方法や運航ルールについて、運航管理シミュレーションによる検証・評価を実施した。
一般のドローン事業者が同試験に参加したことで、運航管理システムの実用性や相互接続に関するセキュリティー対策の有効性が実証できた。
今回の同試験に参加したNEDOプロジェクト参画のドローン事業者による個別技術に関する成果は以下の通り。
- スカパーJSAT株式会社
- 株式会社NTTドコモ
- 日立/情報通信研究機構
- 株式会社SUBARU/日本無線株式会社/日本アビオニクス株式会社/三菱電機株式会社/株式会社自律制御システム研究所
- 宇宙航空研究開発機構
災害現場や地上通信環境が未整備な地域での目視外運航を想定した飛行試験を行い、通信衛星を経由して衛星ドローンの位置、飛行状態の把握、コントロールをリアルタイムで直接運航管理機能から実施できることを実証した。
上空の携帯電話(LTE)回線を用いた運航管理機能を提供し、21飛行試験実施チームのうち7チームに対し運航管理統合機能のAPIの接続を支援した。ドローンに搭載する運航管理デバイスは約60グラムで、大型の産業用ドローンのみならず汎用的なドローンにも搭載が可能なものを実現した。
複数ドローンの目視外長距離飛行を実現可能としたマルチホップ通信(※2)を有する位置情報共有装置と多用途運航管理機能の開発を行い、運航管理統合機能、情報提供機能と連携することにより、ドローンハイウェイの利用を想定した「郵送」のユースケースにおいて、セキュアなドローンの運航管理が可能なことを実証した。
NEDOプロジェクトの別テーマで研究開発中の衝突回避技術を搭載したシステムが、運航管理システムと相互に接続できることを確認した。これにより無人航空機の運航管理システムと衝突回避技術の統合に目途が付いた。
多数のドローンの飛行とその運航管理を模擬するシミュレーターを開発し、運航管理システムの設計・評価を行っている。今回の試験では、このシミュレーターの一部を運航管理システムに接続し、実際に飛行するドローンを相手に衝突を避ける方法と手順を検証した。
今後NEDO、NEC、NTTデータ、日立、ゼンリン、日本気象協会は、2020年2月まで運航管理システムを運用し、一般のドローン事業者も含めた運航管理システムの機能検証を継続して実施する予定である。
なお、同試験は2017年11月22日にNEDOと福島県が締結したロボット・ドローンの実証等に関する協力協定、および2019年4月10日にNEDOと南相馬市が締結した福島ロボットテストフィールド等を活用したロボット関連人材育成等に関する協力協定に基づいて実施された。
※1 アプリケーション・プログラミング・インターフェースの略。プログラムやソフトウェアの機能を共有する仕組み。APIをインターネット上で公開することで、国内外の事業者にサービスを提供することができる。
※2 データの中継機能を持った無線デバイスを使用し、直接通信が不可能な距離にある端末間で通信を行う技術。同実証では、遠方を飛行するドローンの無線機からの信号を、中継ドローンに搭載された無線機を中継することで遠距離通信を実現した。
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