先日、世界遺産の嚴島神社を擁する宮島のデジタライゼーションをテーマとし、観光など島内の様々な課題に対して、デジタルを活用して解決案を創出するハッカソンイベントが行われた。
2日間で課題の深掘りのためのフィールドワークや解決するためのアイデア出し・プロトタイプ作成までを実施し、最終的にはチームでプレゼンテーションを行った。
今回のハッカソンイベントを行った理由や期待について、宮島がある広島県 廿日市市 建設部 都市計画課 歴史まちなみ担当課長 明神 忍 氏と、ハッカソンを主催している、NTT西日本 中国事業本部 ビジネス営業部長の有若和昭 氏にお話を伺った。
(聞き手、IoTNEWS代表 小泉耕二)
IoTNEWS 小泉:今回の取り組みについて教えてください。
NTT西日本 有若氏(以下 有若):今回は、「地域課題をICTやIoTで解決するアイデアを考える」という取り組みになります。現在、ひろしまサンドボックスという県のあらゆるリソースを使った実証実験を行っているのですが、渋滞の緩和、情報発信といったテーマの宮島エリアにおけるストレスフリー観光プロジェクトを既に開始しています。それに加えて、宮島の住民の生の声からいろんな人の知恵と工夫で課題解決できるのではないかと思って始めました。
今回、広島県以外の方の参加も多いということで、一人の観光客として感じられる宮島から、新しいアイデアが出るのではないかと楽しみにしております。

廿日市市 明神氏(以下 明神):宮島の課題は、実はなかなか解決がつかないものが多いのです。例えば、道路の幅が狭いことで、渋滞が起きるといったことです。
しかし、現状デジタルを使った解決というテーマについては、まだ着手することができていません。そこで、今回のハッカソンの企画が始まりました。
小泉:宮島にお住いの方からすると当たり前となってしまっているようなことも、外部の方から見ると一風かわった取り組みにつながるということですね。
明神:はい。実際我々では踏み込むことができないようなことや、法規制があるために簡単に解決がつかなそうな課題についても、「こういうことができるのではないでしょうか?」というアイデアが出てきたりしている状況です。
あらためて街を歩いてみると、いろんな課題がみえてきます。鹿の課題やゴミの課題など、初めて見た人だから感じる課題感があるということもわかりました。

小泉:私も始めて来たのですが、色々感じました。
明神:実は、今日この会場に来る際、通ってこられたのは商店街なのですが、その一本裏の通りに車が通れる道があります。しかし、この道路はかなり狭いのです。
一番狭い道路幅で、約4mなので、観光客が歩いている中クルマがすれ違うことが難しいという状況もあります。
といって、今から道路を広げるとなると、歴史的な街並みを崩すことにもなってしまいます。
小泉:ヨーロッパなどでも、風光明媚な街では石畳で、細い道が多いです。スマートなど、小型の車が多く、生活者には重宝しているようです。
明神:はい。乗用車はそれでいいのですが、お店に荷物を運ぶトラックや、ホテルの送迎バスなど大型車も通行が必要なります。こういったことも解決していかなければならないと思っております。
NTT西日本が今回提供してくれたEVに昨日乗ったのですが、こういうものも今後利用していく必要があるなと感じました。
いろんなものを活用して、今以上に観光客の方が裏通り、そのさらに裏通りに足を運んで欲しいと思っております。

小泉:ところで、こうやってハッカソンをやられているわけですが、新たな発見はありそうですか?
明神:はい。今後、廿日市市としても活用できるものがあるのかなと期待しております。
自分たち感じている課題を「IoTを使うとこうなる」という解決策がたくさん出てくれると嬉しいです。
昨日一緒に課題を説明させていただいていたのですが、参加者は積極的に質問をしたり、討議をしたり活発な意見が交わされていて頼もしいと感じました。
観光客が増えると、交通も増え危なくなる、配送のクルマも増える、と問題が増えていく可能性がある中、こういった機会が得られたのはよかったと思います。
小泉:(NTT西日本の)有若さんにお伺いしたいのですが、NTT西日本としては、今回どういうバックアップを考えているのですか?
有若:具体的なハッカソンへの支援としては、クラウドサービスを提供しています。いろんな技術を使ってもらって良いと思ってます。
ドローンやゴルフカートのようなEVなどもおいて、いろんなアイデアを出してもらおうと思っております。これは、道幅が狭いという課題があるので、うまく活用してもらえればと思っております。
出てきたアイデアに関しても、可能であれば、パートナー企業とともに、実現していきたいと思っております。

実は、宮島はお店の人が最終的にはフェリーで本州に帰らなければならないので、夜が早い街なのです。一方で、夜楽しみたいという観光客の方もたくさんいると思います。そういった観光客のニーズに対しても島民の皆様と一緒に考えていく必要があると思っています。
そうなると、IoTの技術だけでなく、島民の方のメリットにもなるような施策を生み出し、導入していくことが重要だと考えております。
小泉:現在、宮島のフェリー乗り場にカメラがついていて、人の出入りがわかったり、街にも人流がわかるような取り組みがNTT西日本を中心に進められていると伺っております。
明神:はい。現在でもそう行った取り組みは進んでおります。

小泉:例えば、人が滞留しやすい場所の中での小さな子供の分布などがわかる、老人の分布がわかる、となると、どの場所にどういう施設を建てるべきかなどがわかると思います。例えば、トイレを作るにしても、お金が無尽蔵にあるわけではない中で、うまく人流を解析して活用していくという価値があると思います。

明神:そうですね。他にも、今後、もっと宮島の良さを知って欲しいし、滞在時間も増やして欲しいと考えております。
宮島は、嚴島神社(いつくしま)が有名で、多くの観光客は嚴島神社まで歩いて、写真を撮って本州に戻る、という動きをしている観光客が多いのですが、少し歩けば、お寺があったり、島の反対側にサイクリングができたり、とできることが多いので、そういったことも発信していきたいなと思っております。
小泉:そういうのは、電動自転車のシェアリングサービスなどがあればいいかもしれませんね。
明神:そうですね。島の反対側は南側なので、日の出も綺麗にみれます。ぜひ行ってみてください。
今回のハッカソンをきっかけに、どんどん、宮島に来ていただいて活発な議論を行い、リピーターや滞在時間を増やしていく取り組みを一緒に作っていければと思います。
小泉:今後NTT西日本としては、どういうことを支援したいと思われていますか?
有若:宮島という世界遺産の場所は魅力的だし、観光客が増えているのに、島民は減っているという状況があります。こういった状況は他の地域でもあることですので、ここで得られる知見は他の場所でも使えることだと思っております。
今後、シンボルになるような課題や場所を抽出して、技術と組み合わせて課題を解決するようなサービスを展開していきたいと思います。

小泉:本日はありがとうございました。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。