日本の製造業が現在、世界の中でどのような立ち位置か、海外と比べて日本の製造業を取り巻く事業環境がどのように異なるのかを把握することが、将来の製造業の戦略を描くうえで非常に重要になると考える。
まず、日本経済の立ち位置を確認するため、主要国の付加価値額を比較する。一般的に、ある国が生み出した付加価値額を比較する場合、国内総生産(GDP)を用いる。そこで、はじめに実質GDPを用いて海外との付加価値額の比較を行う。
2017年の世界の実質GDPを見ると、米国が173,486億ドルで最も付加価値を稼いでおり、世界全体の21.8%を占める。
次いで、中国が101,589億ドルで2位、日本が61,577億ドルで3位、ドイツが38,839億ドルで4位と続き、世界全体のGDPに占める割合は、それぞれ12.8%、7.7%、4.9%であり、上位4か国で世界全体のGDPの約半数を占める(トップ画)。
そしてこの世界の実質GDP上位4か国を中心に、国際比較を行う。
GDPの成長率について確認すると、日本の2018年の実質GDP成長率は前年比0.8%増と、景気は緩やかに回復している。米国は前年比2.9%増と、2017年の2.2%増から大幅に上昇し、景気の回復が続いている。
ドイツは前年比1.5%増であり、2016年、2017年と比べると鈍化している。中国は前年比6.6%増で、2017年の6.9%増から下降している。
4か国においてGDPに占める製造業の割合を見ると、中国が40%と4か国の中では最も高く、製造業への依存度が高いことが分かる。続いてドイツが24%、日本が22%となっている。
一方、米国は11%と、他国と比べて製造業が占める割合は低く、不動産、サービス業などその他部分が占める割合が高い。
次に、労働生産性を「労働人口1人当たりのGDP」として世界と比較してみる。
その推移を見てみると、米国は4か国の中で最も高い位置で推移しており、次いで、ドイツ、日本、中国と続いている。
対前年比を見てみると、日本、米国、ドイツは2011年以降おおむね1~2%で推移している。中国は、2010年には10.3%であったが、2012 年以降はおおむね7~8%程度で推移している。
グローバル化の進展に伴い、自国の強みを活かし、弱みを克服することの必要性や、他国の市場の情勢等を客観的に把握しておくことの重要性がますます増している。
(参考:ものづくり白書2019)
INSIGHT
米国、中国、日本、ドイツのGDPとその製造業の占める割合から製造業の状況を見極めることが出来る。
中国は、世界の工場と呼ばれ工業化によってGDPを大きく伸ばしてきた。しかし、景気が緩やかに成長傾向にあるなかGDPの成長率は鈍化している。
一般的に、先進国では外需より内需の比率が高くなる傾向がある。工業化で成長してきた中国は製造業による外需から不動産業やサービス業など内需型へ転換期を迎えていると推測される。
米中貿易戦争は、成長力を維持したい中国政権の思惑を追い風として内需拡大をさらに加速させていくと予想される。
そして、中国の製造業を支えているのは高性能センサーや精密機器などハイテク部品などを供給している日本企業である。
中国における製造業からサービス業への転換は、日本の製造業にも少なからず影響を及ぼすことが考えられる。
(IoTNEWS スマートファクトリー領域アドバイザー 鍋野)
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