MWC2023レポートの第二弾は、マイクロソフトだ。今回の展示を見ていて、通信業界におけるマイクロソフトの存在感の変化が感じ取れた。
ブースも、大きく「Microsoft for telecommunications」と書かれているように、通信業界のためのマイクロソフトの紹介になっていた。
対話型AIソリューションを全面に展開
入口近辺には、昨年買収したNuanceの会話型AIを活用したソリューションが展開されていた。
日本国内においても通信事業者をはじめとする大企業ほど、顧客対応が不満の起点となっているケースが多いこともあり、個人的にはこういった対話型AI活用に注目したソリューションを提供しているところに共感する。
具体的にいうと、サポートデスクなどのコールセンターは、電話番号がすぐにわからない、つながらないことも多く、つながった際の杓子定規な対応で不満が怒りに変わるコンタクトポイント、といったことは珍しくない。
また店舗やコールセンターはコスト削減の対象となっていることが多いこともあり、結果的に対応が不十分になってしまっていることもある。
顧客を多く抱える大企業ほどその体制構築が難しいという事実もあるため、AIによる顧客サービス向上は急務だ。またできるだけ早く取り入れることがAIの成長にも寄与することもあるため、早期に導入を検討すべきソリューションであることは間違いない。
AIによる顧客対話システムはベンダーフリーであるため、既存の顧客管理システムとの結合も可能だ。
また金融機関はじめ、さまざまな企業での実績があり、自然言語の理解能力が高く、声紋認証や発話による感情分析もできるという。残る課題は各国の言語による差異となりそうだ。
通信ネットワークのソフトウエア化
通信ネットワークのソフトウェア化、クラウド化に伴い、Azureを導入する通信事業者が増加しているという。
数年前にSDN(Software Defined Networking: ソフトウエアを使ってネットワークを制御する方法)が、トレンドになっていた際は、「設備の効率化」や「フレキシビリティ」が課題の中心だった。
しかし、現在では、5Gの価値を活かすためにも「アプリケーション連携」が必須となっていることもあり、クラウド化が加速している。
つまり5Gや6Gといった、通信世代の変化や用途の変化に対応するための様々な設備のリプレースに対応することと、将来に向けたアプリケーションネットワーク化のためにもクラウド化が合理的になってきているということだ。
また、同時に運用管理面の効率化・合理化ができるソリューションとして通信事業者向けにAzureを提案しているのだ。
またAzureには、「プライベート5G」向けのものもあり、こちらは富士通と共にエッジコンピューティングサービスの接続検証をしているという。
Microsoftは通信領域にアプリケーションレイヤーでもアプローチを始めている。
その1つが通信とTeamsの連携だ。既に「Teams 電話」として機能は提供されており、別途オプションを付けることで電話番号が付与され、一般電話と繋ぐことができるものだ。
足元ではコミュニケーション手段が乱立していて、人が相手や目的に応じて手段を使い分けている状況になっている。「あなたの会社はTeams OKですか?」と聞くことも珍しくない。こういう過渡期を変えていくためにも、“通信手段のオープン化”が必要であり、クラウドやAIが最適な手段で繋いでくれるようになっていくのだろう。
MicrosoftブースではMWC2023で目新しいリリースがあったわけではないが、通信領域の主要プレイヤーとして欠かせない存在になってきていることがわかる展示内容だった。
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未来事業創研 Founder
立教大学理学部数学科にて確率論・統計学及びインターネットの研究に取り組み、1997年NTT移動通信網(現NTTドコモ)入社。非音声通信の普及を目的としたアプリケーション及び商品開発後、モバイルビジネスコンサルティングに従事。
2009年株式会社電通に中途入社。携帯電話業界の動向を探る独自調査を定期的に実施し、業界並びに生活者インサイト開発業務に従事。クライアントの戦略プランニング策定をはじめ、新ビジネス開発、コンサルティング業務等に携わる。著書に「スマホマーケティング」(日本経済新聞出版社)がある。